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行商人ヒルデと魔剣ヴェルサレス  作者: 鳥部 本太郎


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第二十二話 無駄話はやめたまえ


 通されたのは、広々とした客間のような部屋。壁には様々な剣が美しく飾られており、室内は整然と保たれている。


「わー……なんかすごいね! レイナさんってお金持ち?」


「そ、そんなんじゃないわよ! 私はただの剣コレクター。あと……情報屋として、剣の出所や流通情報を扱ってるの。買ったり売ったり、まあそれなりには繁盛してるけど……」


【ふむ……ここで“武器破壊魔法”を放てば、さぞかし愉快な光景が見られそうだが】


「ぜ、絶対やめてね!? ──ヴェルちゃん!!」


 ヒルデが振り返って必死に止める。


「ん? なんか言った?」


「う、ううん! 何でもないよ!」

レイナの問い掛けに、ヒルデは慌てて誤魔化す。



◇◇◇



  レイナは片手で髪を払いながら、奥に据えられた立派なテーブル席へとヒルデを案内した。


 磨き込まれた木目の天板は深い色合いで、灯篭(とうろう)を模したランプの明かりをキラリと反射させる。


 ヒルデは感動しながら椅子にちょこんと腰掛けた。そして背中のヴェルサレスをそっと外すと、隣の椅子に大事そうに置く。


「わぁ……すごいすごい! こんな立派なテーブル初めて見たよ! つるつる〜!」


 ヒルデが両手で天板を撫で回すように感嘆すると、レイナは思わず咳払いをした。


「……ふぅん。これの質の高さが理解できるとはね。そうよ、これはね……特注品なの」


「とくちゅう?」


「そう。樹齢三百年を超える木を使ってるのよ。乾燥させて磨き上げるのに一年かけたっていうから……まぁ、簡単に手に入る代物じゃないわね」


 普段は気だるげな表情を崩さないレイナだったが、その声色にはほんのわずか誇らしさが滲んでいた。


「へぇ〜! そんなにすごい木なの!? すごーい!」


「ま、まあ……剣ばかりじゃなくて、こういう調度品にもこだわるのが“コレクターの嗜(たしな)み”ってやつよ」


 ──五分後


「ほら、こうして丁寧に磨くと艶が出るでしょ。木目の奥まで光が染み込むように輝くの。……しかも、湿気を避けて布で乾拭きするのが一番なんだから」


 いつの間にか布を取り出し、テーブルを磨きながら語り続けるレイナ。


 ──さらに五分後


 とうとうレイナは引き出しから小瓶を取り出した。中には透明な液体が入っている。


「……仕上げにはね、この特製のニスを薄〜く塗るの。厚塗りは絶対ダメ。木が息苦しくなって逆に傷むのよ」


 さらりと刷毛を滑らせながら、真剣な眼差しで語る。


「こうやって塗っては乾かし、塗っては乾かし……時間をかけて何層にも重ねると、木目が深みを増して宝石みたいな艶になるの。剣と同じで、手をかけた分だけ応えて──


【早く本題に入らんかぁ! 】


「………………」


 魔剣ヴェルサレスの一声でハッと我に返ったレイナは、すっと向かいの椅子へ腰掛けて再び咳払い。


「そ、そうだったわ。さっさと話しなさいよ、もう!」


 言いながら、レイナの頬は赤く染まっていた。


「はは! レイナさんおもしろーい」


「うるさいわね! さっさと話さないと追い出すわよ!」


「はーい」


 ──やっと場の空気が収まった。



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