第十一話 女盗賊レイナ登場!
──ヒルデは、コッペから爆弾の作り方を教えてもらう事にした。
説明を書き起こそうと紙とペンを用意して構えている。
コッペの舌が饒舌に回り始める。
「えーと、まず『イグール密林』に行って、『バクレツヒキガエル』から『引火粘液』を採取するでしょ、次に『閃光虫』から『閃光の胞子』を採って、それを混ぜ合わせれば火薬が出来るわ。比率はそうね、7:3くらいかしら。それに着火剤として『エンカー火山帯』に生息する『岩石小僧』から『発火オイル』を入手して……あ、でもここは『溶岩石の魔人』が出現するから気を付けないといけないんだけど、『巨大化水風船』を持って行けば楽に攻略……」
「ねぇ、コッペさん……」
「ん?」
「密林ってどうやって書くの?」
「まだそこっ!?」
「だってー、コッペさんの説明が早過ぎて追いつけないよー」
「あ、そうよね、ごめんなさい。私ったらついつい……じゃあ紙を貸して。書いてあげるわ」
「わーい! ありがとう!」
ヒルデは書きかけの紙をコッペに手渡す。
紙には、『いぐるるみつるん』という謎の暗号の様な言葉と、なぜかカエルのイラストが描かれていた。
「あら、可愛いカエルさん。ふふふ……じゃあヒルデちゃん、ちょっと座って待ってて。温かいミルクを淹れてあげるからね」
「やったー! ありがとう!」
──コッペに貰った『爆弾の作り方』と『巨大化水風船』を大事に腰袋へと仕舞ったヒルデは、店を出て笑顔でコッペに手を振った。
優しく手を振り返し、コッペは店内に戻る。
その時、店内のどこかから声がした。
「ふふふっ……良い物みっけちゃったぁ!」
「え、だ、だれっ!?」
コッペは周囲を見渡す。
しかし、店の中には誰も居ない。
「あれって、魔剣よねぇ? あの剣も、私のコレクションに加えちゃおうかしら」
コッペは声の方向を頼りに頭上を見上げた。
なんと、商品棚の上で盗賊の様な格好の女の子が寝転んでいる。
歳は16〜18歳くらいだろうか。
「だ、誰なの? あなた」
「私? 私はレイナ。剣コレクターであり、女盗賊でもある、レイナよ」
そう言いながら、商品棚から飛び降りるレイナ。
「よっと!」
バキィ!
着地の衝撃でレイナの足が床板を突き破った。
そこへ商品棚が倒れ込み、ガッシャーン! と音を上げてレイナを下敷きにする。
「え? な、なにしてんの? あなた」
コッペは困惑している。
倒れた商品棚の下からモゾモゾと這い出すレイナ。
「気にしないで。今のは私の『呪剣ソウルイーター』ちゃんが、ちょっと悪さしただけ」
「え? 今の惨劇がその呪剣のせいなの? あなた呪われてるんじゃないの?」
「人聞きが悪いわね。それより、あの少女は何者なの? あの歳であんな魔剣を携えているなんて、只者じゃないわ」
「ヒルデちゃんのこと? ヒルデちゃんはただの行商人よ」
「行商人? ふーん、じゃあ、あの魔剣はまるで宝の持ち腐れね。あの魔剣を持つのは、私が相応しい。そう思わない?」
妖しく微笑むレイナの頭上に、店の照明が落下する。
パリーン!
レイナの頭に当たった照明は粉々に砕け散った。
「イグール密林、あなた確かそう言ったわよね?」
「え、そのまま話し続けるの? リアクション無し?」
無視するかのように、レイナはテーブル席のそばに置かれた丸椅子に腰掛ける。
「ふふふ、そこに行けばあの魔剣、手に入るかしら……」
バキィ! と丸椅子の脚が折れてレイナは後方にひっくり返った。
「……その前に、あなた絶対呪われてるから、そっちを何とかした方が良いと思うけど」
「ほっといてちょうだい。とにかく、用は済んだ。さよなら」
店から出ようとするレイナ。
コッペはその肩を後ろからガシッと掴む。
「なによ?」
コッペはニッコリと微笑みながら言う。
「修・理・代!」
「は?」
「お店滅茶苦茶にしといて、黙って帰るつもりかしら?」
コッペは微笑んでいるが、右手にはギリギリと物凄い力が込めらている。
「はいはい、わかったわよ!」
と言いながら、レイナは腰袋から雑に硬化を掴み取って店のカウンターに叩きつけた。
「わかれば良いの、ふふふ。さようなら、レイナさん」
レイナが去ったあと、コッペはカウンターに置かれた硬化を眺める。
金貨が5枚……
「いや、多過ぎるわね。あの子、意外と律儀なのかも……」




