初めての胸の高鳴りと歪んだ好意
これはどう弁明したらいいでしょう。
この前の取り調べの時のように殿下の嘘を見抜く能力でなんとかなるでしょうか。私まだ未遂ですし、正当防衛ですし。
私の脳内がぐるぐると回っていますと殿下が急いで私の元へ向かって肩を掴みました。
「ルリア嬢!怪我はねぇか…?」
不安そうな面持ちのまま殿下は私の肩や顔周りをペタペタと触れていました。
「私は怪我はないですが…聞かないのですか?この状況がどういうものなのかと…」
「襲われて抵抗してたんじゃねぇのか?」
「そうですが…」
血塗れでナイフを突き刺そうとしていた瞬間を見ていたのですから私がいきなり襲ったとは考えなかったのでしょうか。
殿下は男達を捕らえるよう騎士達に命令をして騎士達は男達を全員連行していきました。
騎士と男達がいなくなり殿下と私の二人きりになった時殿下がまた不安げに質問をしてきました。
「怪我してねぇんだよな…」
「はい。私は不老不死ですし怪我もすぐに治る性質です。」
「治っただけで怪我とかしたりしたのか!?」
私の話を聞いて殿下は急に声を荒げました。
「まあ何度か刺されたりはしましたが」
殿下の質問に私が答えると殿下は目を見開いて、恐る恐るといった状態で私に私に一言聞きます。
「胸のドレスの傷は…?」
「あの男達に何度か刺された時にドレスが破れちゃったみたいですね。」
私の言葉に大きく開かれた殿下の瞳から一筋の涙がこぼれてきました。
「こんなに血塗れになる程刺されたのか。すまなかった、俺がルリア嬢の手を離さなければ…俺がちゃんと演奏の時間を覚えてれば。すまなかった。」
そう謝罪と後悔の言葉を繰り返し口にする殿下。
殿下の瞳からはポロポロと涙を綺麗に流していました。
その姿を私は見惚れるように眺めてしまいます。
殿下は自分のせいで私が怪我したと考えているようなので罪悪感を感じているのでしょうか。
私が傷ついたことによる心配や悲しみも涙に含まれているでしょう。
目の前の殿下は私の為だけにその美しい顔から色んな感情を含めた涙を流しています。私のことが心配で怪我したことが悲しくて、私に罪悪感も抱いているようです。
お人好しで色んな人に色んな感情を向けているであろう美しい殿下が今だけは私の為への心を込めた綺麗な涙を流している、その事実を理解すると私の心臓が生まれて初めてバクバクと早く鼓動しだしました。
これが興奮というものですかね。
私は今までの人生、感情を感じることなく生きてきました。
そんな私が初めて興奮を感じて顔が緩みます。
私は殿下の顔にそっと手を触れ、もう片方の手で殿下の涙を拭っていますと、その行動にぽかんとしている殿下。私は笑みを作りながら問いかけました。
「殿下は私がこれから怪我をしたら私の為に泣いてくださいますか…?」
唐突の質問に困惑しつつも殿下は私の為の言葉を紡いでくれました。
「俺はルリア嬢が怪我をしたら心配だし悲しくなる、だから泣くに決まってるだろ…」
とめどなく流れてくる涙を流しながら口を開いた殿下の返答を聞いて満足した私は殿下を抱き締めます。
「なら、私は怪我をしないようにしないといけませんね。私の納得できる怪我をしてはいけない理由ができてしまいましたから。」
そうした後私は殿下を離し、涙を少し舐めてみました。しょっぱかったです。




