変な顔と変な人
何を言われたか一瞬理解ができませんでした。
「何を言ってるんですか?私は嘘なんて…」
「まず君は病弱ではないな。」
私の目を見据え淡々と告げられますが何故バレたのか、そこばかり頭に回ります。
「そして君は10年前の女性についても嘘をついた。それと血塗れで笑っていたというのでも嘘をついた。」
そして殿下は私の腕を掴み声を低くさせました。
「君は人を殺したことがあるな?」
なぜだか分からないけれど嘘が全てバレています。
でもどこの質問で嘘をついたかくらいしかわかっていないようです。なら、まだ誤魔化せます。
「正直に言います、人は殺したことがあります。この話題は胸が悲しくなるので触れたくはなかったのですが、私が産まれる際にお母様が亡くなってしまいました。だから私が殺したのはお母様ですね」
「そうか」
「お母様は社交界でも中心の人でした。だから私がどう思われるか不安で病弱なふりをして社交界に出ないようにしていました。それと10年前の女性はお父様が私への慰めにお母様に似た女性を探していたんです。だからその時見たものかと。血塗れについては…怪我以外思いつくものがございません。」
嘘で塗り固めた私の話だけれどこれで誤魔化せるかと、そう思っていたらまた殿下が眉を顰めながら口を開きました。
「今の話もほとんど嘘だな?」
何故分かったのでしょう。さっきのは偶然ではなかったということですかね。
「教えてやるが俺には嘘は通じない。王家の直系の人間には様々な能力が宿る。俺の場合は嘘を見抜くことができるんだ。だからこれ以上嘘を重ねても無駄だぞ。」
確かに王家には特殊な力がありますが嘘を見抜く力も存在するなんて。それではこれ以上何を述べても誤魔化せませんね。
「では本当のことを言いましょう。私、不老不死なんです。」
「は?なにを…」
「嘘見抜けるんでしょう?私は本当のこと言ってるって分かりますよね」
それから全て説明することにしました。
「まず病弱というのはお父様が私が化け物だという噂が飛び交う中で私を傷つけないよう、そういう理由付けをして社交界に出なくて良いようにしてくださってます。」
「これは本当みたいだな…」
「はい、あと10年前の女性については正体は私です。」
「は!?10年前なんてまだ小さい幼子だろう!?」
「私生まれた時からこの見た目だったんです。お腹の中にいる時にお母様に想いを寄せる男に黒魔術をかけられ、成長したこの状態のまま生まれてこの状態のままです。」
これは本当だって分かっていても信じられないと思いますがごまかしは効かない以上話すしかありません。
「血塗れだったのは幼い頃は好奇心で自傷行為をして遊んでいたからかと…。殺した人は、お腹の中にいる時から私はこの成長した状態だったので私はお母様のお腹を裂いて出てきました。そのお母様だけかと。」
「そうか…信じよう。信憑性のない話だが今日聞いた話の中で君の声が真実を言っているように聞こえた。それに何より俺の目が真実だと言っているんだから真実なんだろう。」
話してはみたけれど殿下が本当信じるとは思いませんでした。流石に驚いていますと殿下がまた何か聞きたいことがあるようです。
「最後に確認で質問をいいか?」
「はい」
「…母親以外で殺した人はいないか?」
「いません。」
しばらく沈黙が続きます。何でしょうかこの沈黙は。不思議に感じているとまた睨むような目をされました。
「君、やっぱり人を殺したことあるんじゃないか?」
「え?」
私は本当に人を殺したことはお母様以外ないんですが。人を殺すのは趣味じゃありません。
では何故でしょう。
そこで一つ思い当たった事がありました。
「あのそれは自分って含まれますか?」
「どういうことだ?」
怪訝そうにしている殿下に説明をしようとしましたがどう言ったらいいか分からなかったので、直接見せようと傍にあったアクセサリーケースからナイフを取り出し心臓に突き立てました。血飛沫が舞う瞬間は私が人間だと感じられて好きな時間です。
このナイフには私が色々試した結果一番早かった毒が塗ってあるので即効性があります。
とりあえず一回倒れて死んだ後、すぐに起き上がり心臓に刺さったナイフを抜きました。最近は回復が早いですね。
「こんな感じで昔から自殺行為などを繰り返していたのでもしかしたら自殺も人を殺すに含まれるのではないかと。」
これ以外には心当たりはありません。
ナイフに付いてしまった血を拭いていると殿下が一言聞いてきました。
「もしかして今一回死んだ…?」
「はい」
今のを見て分からなかったのでしょうかと考えていましたら、動かなくなってた殿下が急に激しく手振りをしながら怒り始めてきました。
「何当然のように一回死んでんだよ!というか一回死ぬってなんだよ!ちょっと買い物行くか〜のノリでナイフぶっ刺しやがって!」
「不老不死なので。」
「説明になってねえよ!というか不老不死ならいつ死んでもいいわけじゃねぇからな。少なくともTPOを考えろ!お前が不老不死だとか知ったこっちゃねえが人前では死なないのがマナーだろうがよ!」
「つまり話をまとめると…?」
「俺はグロいのが苦手!」
確かに死ぬ前に一言何か言ってから死ぬのがマナーだったかもしれません。グロいのが苦手な方への配慮が足りていませんでしたね。
「それについては申し訳ございません、見せるほうが早いかと思いまして。ところで殿下、キャラ少し変わってません?」
「それはな俺がめちゃくちゃ粗暴な王子から少し粗暴な王子くらいに猫被ってるからだよ!人が必死に猫被ってんのにグロいもの見せて引っ剥がしやがって…人間なピンチのときは取り繕えなくなるもんなんだ、覚えとけ!」
「誠に申し訳ございません…」
とても勉強になりましたね。でも猫被ってることは言ってもいいんでしょうか?
まあ殿下が言いたいこと言い終えてスッキリしたようなので話を続けたいと思います。
「話を戻すのですが、私はお母様と自分以外殺していない。これなら私が嘘ついてないって分かりますよね。」
「確かに嘘はついてないみたいだか…その、自分の事でも殺すなよ。」
「何故ですか?私は不老不死なので。それに人より回復力が発達しているみたいで怪我もすぐ治ります。」
「そういう問題じゃなくて…例え死なないとしても自分を傷つけるのは良くねぇってことだよ!」
「…どういうことですか?」
私は誰にも迷惑をかけてないし怪我もすぐ治るのだから何ら問題がないのに何故変な顔をしているのでしょうか。
「まあ、とりあえず!分からなくてもいたずらに自分の体を傷つけるなよ。」
「多分わかりました。」
「多分かよ」
私はできるか分からない約束はしない主義です。
何故そのようなことを言われてるも理解できない為不用意に約束はしなくてもいいと思いました。
殿下はやはり変な顔をして頭を掻いています。
この人はな何だか不思議な人ですね。
「何故殿下はすぐに不老不死だなんて受け入れられたんですか?」
そう私が問うと殿下は振り向き苦笑いをしました。
「今日聞いた話のなかで一番真実に聞こえたっていうのも本当なんだが、そもそも俺が嘘が見抜ける訳で他にも王家には特殊の能力を持った人もいる。だから別に王家以外のところに不老不死の奴くらいいても可笑しくねえなって」
だからすぐに不老不死って理解してくれたんですね。
「でも、何で私を化け物だと思わなかったんですか?
恐ろしい噂も広がっていて、今日だって私は本当に不老不死の化け物で母親の腹を掻っ捌いて出てきた恐ろしい生き物って話を聞いたのに何で怯えないのですか?」
私を見る人は大抵怯えます、怯えて何かされるのではと避けていきます。唯一避けないのはお父様だけ。
それなのになんで私を怖がる様子がないのでしょうか。
「逆になぜ怖がる必要がある。特殊能力があるから怖いのか?でもそれは俺も俺の家族も同じだ。それに俺を害するつもりもないんだろう?なら何も問題はねえよ。」
また変な顔をして殿下が教えてくれます。
「…殿下は変な人ですね。」
「あ!?どこがだよ!」
「殿下は見たことのない変な顔をします。」
私は人と関わる機会が少ない為よく人を観察していました。その為、人の表情の機微を見分けるのには自信があります。
怯え、恐怖、怒り、喜び、悲しみ、あと微笑ましい気持ちなんてのもありました。でも殿下の顔は初めて見ますね。
「殿下は何を考えているんですか?」
「初めて会った奴が言うのもなんだけど少し心配してる。」
心配、これが心配の時の顔ですか。覚えておきましょう。
私が初めて見た表情を記憶に残そうとしていたらドアを叩く音が聞こえました。
「随分時間が経ったように思うんですが娘の部屋で何されてるんですか?」
お父様の声です。さっきは殿下に連れてかれたのでお父様は心配してくださったのですね。
すると殿下がドアを開けて猫を被りました。
「公爵、もう話は終わった。」
「そうですか、年齢に差があるとはいえ男女が2人きりとはよろしくない。控えて頂きたいですね。」
私は15歳殿下は16歳。1歳差でも年齢差あると言われるものなのでしょうか?
殿下が帰るようなので玄関までお見送りに行こうとしましたら、お父様が私を止めました。
「何もなかったかい?」
「はい、特には。」
「ならいいよ。見送りはしなくていい、君は部屋にいな。」
そう言われたので私は自室に居たまましようと椅子に腰を下ろすと、帰るため部屋から廊下に出た殿下が私に向けて何か喋っているのが聞こえました。
「またな!」
そうなんてこともなさそうな顔で言われました。
また、があるのしょうか。
あるのなら少し楽しみかもしれません。
ですがそれから一ヶ月私はお父様と使用人以外会うことはありませんでした。




