悪女と化け物はどちらがマシでしょうか
私に来客が来ることは多々あります。
私が化け物であるという噂は流れている為お父様が私を傷つけぬよう病弱と言って社交に出なくても良いようにしてくださってるのですが、絶世の美女であったお母様に似ているという噂まで広がっているようで私が化け物だとしても縁を持ちたいと押しかける令息はいらっしゃるのです。
王太子殿下がいらっしゃって、しかも私に話が来たって事は私に関係する話ですよね。
「王太子殿下についてはお父様が対応するのでは?」
今までもうちの屋敷に来る人たちは皆目的がなんだろうとお父様が対応してらしたですし。
「あの、それが王太子殿下が…。その、お嬢様に会うまで帰らないと…」
化け物だと噂が流れ、病弱だとお父様が言っている社交界に一度も顔を見せたこともない私に何故王太子殿下がそれほど執着されるのでしょうか。
分からぬままとりあえず侍女に身支度を頼み王太子殿下のいる客間に行くことにしました。
客間に近づくとお父様と誰かの声が聞こえます。
「令嬢に会わせろと言っているのだ、分からないか」
「娘はいません!」
「早朝に来たんだいないわけないだろう。会わせろと言っている。」
「娘は病弱だったんです!」
そんな会話が繰り返されてるところに私は扉を開けて王太子殿下に挨拶してみます。
「王国を照らす光であらせられる王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
その後カーテシーをしてみせますが人前でやるのは初めてなものでどうも緊張します。
「やはりいるではないか。少し令嬢と話させてもらうぞ。」
とお父様が止めるまもなく私を連れて客間を出てってしまった。
「何処だ?」
「はい?」
「君の部屋は何処だと聞いている。」
邪魔されずに話がしたいようなので私の部屋に殿下を連れて行くことにしました。
部屋に入って殿下も部屋に入れると殿下は気まずそうに口を開きました。
「君の部屋を聞いておいてなんだが密室に男女2人とは警戒心というものは君にはないのか?」
「いざとなればなんとかなりますから。」
殿下こそ化け物と呼ばれている私と2人きりでというのは怖くないのだろうか、と不思議に思います。
そして殿下は微妙そうな顔で咳払いをしてから話を始めました。
「君が社交界で流れてる噂を知っているか?」
「それは私が化け物だという?」
「知ってるなら話は早いな。10年前に公爵家の屋敷で今の君と同じ姿の女性を見たとかそういう話が多く出てな。亡き君の母上のユリア公爵夫人の亡霊なんじゃないかって話もあったんだが、公爵家で働いている使用人がお嬢様は赤ん坊なのに15歳くらいの見た目をしてたけど今も見た目がずっと変わらない、なんていうことを言ったらしくてそれが一気に噂になり化け物ではないかってことになったわけだ。」
ペラペラと喋る殿下の話を聞いて私は目から鱗でした。
私は今まで幼い頃行っていた、好奇心による自傷行為や自殺行為などを見られ、その話が外部に漏れて化け物だと思われてたと思っていましたがまさか見た目だったとは。
まあ今思えば15歳程の見た目の子が赤子の振る舞いをしていてよく血塗れになって遊んでいたとなれば普通に怖いかもしれません。あとずっと姿が変わらないっていうのも。
やはり自分のことというのは分かりづらいものですね。
そんなことを考えていましたら殿下が何やら険しそうな顔をして話を続けます。
「それでだな君が血だらけで笑ってたなどの話も増えてきて噂に尾ひれもついて、君が夜な夜な人を嬲り殺し血をすする恐ろしい悪女だというのが最早事実だと思われている。」
「血を…?」
まさかの血塗れの所も噂になってました。
というか血をすするような悪女だと思われていたんならそりゃあ使用人達も怯えて近づきませんよね。
「正直おとぎ話の化け物じゃないんだからあり得ないとは思っているがあまりにも噂になり過ぎてるのと、王国を支える公爵家の令嬢がそのような言われようだと公爵家と王家の名誉に関わる。そのため取り調べをさせてほしい。」
私がどう言われても気にしないけどお父様の名誉の為ならやらない訳にはいきません。私が意気込んでいると質問に答えるだけでいいと言われました。
「じゃあ1つ目の質問。君は病弱か?」
「はい」
私が化け物だとあえて言わないようにお父様の作った病弱なルリア・スコーラを守るようにします。
「10年前に公爵家の屋敷で見たと言われている君の姿そっくりの女性は?」
「恐らくその人はお母様の亡霊を見たのでは?この屋敷に来る人の大半はお母様を愛しお母様の気配を感じたい人ばかりなのでそれくらい可笑しくないかと」
これは半分本当。ここで見られた女性はもちろん私だけど公爵家の屋敷に微かなお母様の気配を求めて訪ねる人も少なくないからです。
「君が血塗れで笑っていたというのは?」
「恐らく怪我をした時だと思います。一度怪我をして大量の血が出たことがありますので。幸い傷跡は残りませんでしたけどね。」
「では君は人を殺したことは?」
「もちろん、あるございません。」
なんだか取り調べみたいですね。
質問が終わったのかしばらく殿下は沈黙を保っていた後、先程とは違った睨むような目つきで私を見つめ口を開きました。
「君、嘘ついたな」




