デレと照れ
ナナと一緒に私の国へ出発した。もう少し準備に日にちが欲しかったと怒られたが、なにせ移動に日にちがかかるのでしかたない。
猶予を持たせると、「やっぱりやめた」なんて言い出しかねない。
一緒に馬車に乗ることも断られそうだったが、1台しかないから、と押し切った。
なので、今、目の前に、ナナがいる。馬車の外を目を輝かせて見ている。例え、森の中だろうと、川沿いを通っても、嬉しそうにしている。
「なんですか?」
私の視線に気づき、こちらに視線を移した。
「楽しそうで、嬉しいよ」
ナナの様子を見ていると、顔がずっと緩みっぱなしだ。外ばかり見ているから、気づいていないようだけど。
「だって、初めての旅ですから」
「……」
御者に合図を送り、馬車を止めさせた。
「休憩しよう」
馬車の扉を開け、私が先に降り、手を差しだす。私の手を取り踏み台に足をかけるが、ふらついて倒れそうになり、体を支える。
ナナは馬車酔いをしていた。振り向いたときに、顔が少し青かった。
「……まさか…こんなに気持ち悪くなる…とは…」
「ずっと外を見てるからだよ」
ゆっくり深呼吸をする、ナナの背中をさする。
「吐けるなら、吐いといた方がいい。水もあるから」
「吐ける物があるなら吐いてます…」
弱々しい声。よしよしと背中の手を頭に伸ばした。ナナは気にしてないようだが、気持ち悪さでそれどころではないのかもしれない。
「少し、ましになりました」
「じゃ、行こうか。ゆっくり走らせるから」
「それは、次の町に着くのが遅くなるのでは」
「大丈夫さ。宿屋は逃げない」
乗り込む際も、少しふらついている。ここからの移動は慎重にしなければ。
ナナの座った真横に、私も座る。
「〜〜!」
「また外ばかり見て、酔いが酷くなったらいけないからね。外が見たいなら私側の窓から見たらいい。疲れたら、私にもたれて?」
狼狽してる。かわいいな。
「だいたい、未婚の男女が一緒の馬車に乗ることがいけないんです!仮にもフェルディオ様は王太子なんです…か、ら」
私はずっと見つめているのに、目を逸らされてる。そろそろ私の方を見てほしいのだけど。
「仮じゃないよ。ナナ。本物の王太子だよ」
「そうですね、本物です。だからフェ…」
「ルディと呼んでくれないの?」
目があちらこちらに動かして忙しない。
「……る、ルディ…」
頬を赤らめて、かわいい。うれしくて、胸が締めつけられる。思い切り抱きしめたいが、ここは我慢だ。
「旅の間だけ…よ…」
「うん。ほら興奮すると、また酔っちゃうよ」
留学のときは1人で少し寂しかったが、この帰国の旅はすごく楽しい。
「そう言えば…ルディは婚約者はいないの?」
突然何かと思えば…婚約の話?あの国ではバカ王子は婚約してたしな。私は王太子だから気になるのか。
「ん…。いないよ。父はこういうことは自分達に任せてくれているんだ」
私は、もう決めている。断られるかもしれないけど、断られても諦めない。絶対に。




