エピローグからプロローグへ
その後、ザッオールはリリアーナと不毛の土地へ旅だった。その旅には遊んだ令嬢と、令嬢を差し向けた貴族の家族と共に。
ひと仕事終え、貧困区で落ち着いて過ごしている。差別撤廃により、平民は中間層にも自由に行き来できるようになった。さすがに貴族街へは無理だけど。
貧困区も名前が変わるそうだ。
傷害や病気で働けない人に補助制度も導入される。
平民にも選択の儀式が受けれるように法が変わる。
みんなが平等に勉強ができる学校も建設中だ。
王も王妃もよりよい国にするためにに頑張っている。国民はそれに応えなくては。
教会の扉をノックする音が響く。返事をすると、ゆっくり扉が開き、誰かが覗く。
「ナナ…」
(…聞き覚えある声…………、デジャブ?)
フェルディオが立っていた。
今はもう、魔法は使っていない。あの騎士のナナの姿ではないし、今はシスターの格好している。
「どちら…様でしょう?」
にこにこしながら、ゆっくり近づいてくる。さわやかイケメンか、残念イケメンか…。
「誤魔化してもダメだよ。君の本当の姿をみたからね」
髪を指さしている。
「……へ?」
本当の姿…。
あ!怪我したときか!全部解けてたのか…。
騎士の時は暗めな髪色にしていた。本来は赤毛。
学園では目立たないように変えていた。印象に残らないために。色を維持するために魔法を継続して使用しなければならなかった。
怪我を負ったときに、その魔法の維持ができずに解けてしまっていたのだ。
繕った笑顔をしてみせる。……笑顔が引きつってるかもしれない。
「どうしました?フェルディオ様、こんなところまで」
フェルディオが剣を差しだした。この間まで使っていた剣だ。仕事が終わった後、親方に預けていた。手入れも含めてだが、当分休もうと思っていた。
その剣をフェルディオが持ってきた。
「もう一度、相手をしてくれ」
真剣な眼差しに、断る理由も無かった。
「わかった。先に外で待ってて、着替えてくる」
あの断罪から二月ほど、剣は握ってない。仕事を終え騎士も辞めたから、男爵の爵位も返上した。今はただの平民。
着替えて外へ出ると、フェルディオが剣を持ち待っている。さっそく、鞘から剣を抜き、柄の感触を確かめ、構えた。目が合うと同時に踏み込む。剣の弾ける音が何度も響く。
「…そろそろ、国に帰るの?」
フェルディオの動きが前より速くなっている気がする。フェルディオの練習の成果か、私が鈍ってるのか。
「そのことで、話がっ……ある!」
私の剣が弾かれ、私の後方に飛び地面に突き刺さった。
「腕が上がったんだね」
?…何か怒ってる?苦しいような、耐えてるような表情をしている。
「まだ、本調子じゃないだろ」
「………」
刺さった剣を引き抜く。
「肩を切られた感覚が…どうしても拭えなくて…」
それとあのときは『見えなかった』と言ったが見えていた、怒りの目で私に魔法を打ってきたきたリリアーナを。
「で、話って」
「……ナナと、もっと……」
「え?」
何か言葉にすることを迷ってる?
「いや…違うな…」
聞こえないくらいの声で呟いてる。
「私の国の学園に、来ないか?……あ、来てほしい」
「どうして…」
フェルディオはまっすぐ私を見つめる。…なんだか恥ずかしい……。
「騎士として?」
「違う。生徒として」
え?生徒?…確かに、学園に入学できる年齢だけど。
突然すぎるし、私には問題が……
「王妃様より、大まかな事情は聞いてる。とりあえず、これを見てほしい」
大まかって、どこまで……。
フェルディオが広げたのは…地図?
「これ…この王都ね」
シスターが生きてたころ、地図を見せて貰ったことがある。でも、地図も真っ黒でわからなかった。
でも、今は…
「!」
王都以外もはっきり見える。
「この国の領土地図だよ。そして…」
別の紙を広げる。これも地図?
「こっちは私の国の地図。この国のここを通って、私の国に行けるんだ」
初めて、他の領土と国の地図を見た。
「こんな風になってたんだ」
なんだか嬉しい。この国の問題を、ゲームを、クリアできたから?見えるようになったの?
「王妃様から、これを見せろと言われたんだ」
イザベラには、地図のことも言っている。本当に見えるか私に試させたのかな。
「学園には他国の生徒が多くいる。ナナの世界がもっと広がると思うんだ。どうかな」
始まりはここ、周りは真っ黒で、このまま終わるのかもと思っていた。少しずつ見える景色が増え、嬉しくて、楽しくもなった。
もっと色んな景色を見たい。
「…行きたい……もっと見てみたい!」
私の返事を待っていたかのように、笑顔になり、封蝋付きの手紙を見せた。
「王と王妃の推薦状と…」
イザベラを守ったことで、男爵位はそのまま授与すること、学費は免除されること、貧困区の支援は半永久にすることも書かれていた。
「明日、出発するから準備してね」
「え!?早っ」
えーと、着替えと…、みんなに伝えなきゃ、親方にも言わなきゃ…忙しいよぉ。
「それと、また『ルディ』と呼んでほしい」
教会に入り、女神像に祈る。
女神様、悲しいことも辛いことも嬉しいことも楽しいことも、たくさんありました。私は一旦ここを出て、別の国の景色を見てきます。
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続編の始まりは、留学していた先で出会った、年若い平民出の騎士が自国の学園に入学する。
攻略対象キャラは、王太子兼学園の剣と魔法の指導教師フェルディオを含め5人。
誰と恋仲になり、どんなエンディングが待っているのか…。
「あーあ、私も見たかったな」
この先は、ナナ1人でがんばるのよ。幸せになってね。
まぁフェルディオの好感度はカンストしてそうだけど…。
たしか…好感度MAXで愛称呼びを許されたはず。
……。……。……
あれ?ナナ……ゲーム始まる前から、フェルディオ一択になってる。
でも…フェルディオの好意に気づいてないんだよなー。こりゃ、フェルディオがナナを攻略する図が見えるわ。
「乙女ゲームの表と裏」の本編は完結です。これから【閑話】を掲載します。




