>>>ナナとイザベラ
イザベラと出会ったのは、平民街で攫われかけていた女の子を助けた。その女の子がイザベラだった。
確か、私が10才で、イザベラが12才。身なりは平民街にはない綺麗な服。色艶のいい肌と髪。明らかにいいとこのお嬢さんでは?と思った。
人攫いから助けたときには気絶をしていたので、貧困区の教会に連れてきてしまった。起きそうもなかったので、そっとしておいた。
外で孤児院の子供に、前世で有名な昔話をしていると、教会で寝ていたイザベラが起きてきて、目を丸くして驚いていた。
起きたイザベラと教会でここへ連れてきた経緯を説明した。
「いやっ、それよりもっ、さっきの!昔話…『桃太郎』よね!」
「え?」
「あなたも!転生者なの!?」
勢いに押され、秘密にしていたことを話してしまった。
「私も転生者なの」
私だけでなかった安堵と、驚きで言葉が出なかった。
イザベラが教えてくれたのはこの世界は『剣と魔法のフェイヴァリット学園』という乙女ゲームの世界で、イザベラは【悪役令嬢】なのだという。
なぜ貴族が平民街にいたかというと、12才の誕生日に第1王子との婚約が決まったと言われたときに、前世と乙女ゲームの内容を思い出し、失意で平民街に来てしまったのだ。そして人攫いに会ったと。
でも、私はその乙女ゲームをやったこともないし、タイトルも知らない。そもそも私のスタートは…
そのこともイザベラに話した。イザベラの言う乙女ゲームにはそんな要素はなかったと言っていた。この貧困区も設定にはなかったという。ナナシという人物も。では、私は誰なのか。なんの為に転生して生まれてきたのか。
そんなことを考えてもしかたないので、ここの現状、孤児院のことを話した。平民差別は初めて知ったと言っていた。
イザベラをグォーブさん付き添いで、「迷子になっていた」ということにして、警備兵に引き渡した。それからイザベラは貧困区をたびたび訪問し、親を説得し、支援してくれるようになった。イザベラの親は貴族贔屓ではあったが、差別までは酷くなく、イザベラの話しを聞き、支援を決めたのだそう。
イザベラとともに中間層地区に入れた時はうれしかった。また、私が行ける範囲が広がったのだ。平民が中間層に行けることはそうそうない。それを可能にしてくれたのは、イザベラの『公爵家の友人』であることを示す紋章のおかげ。
グォーブさんに鍛冶屋を紹介してもらったのはそのころ。でも親方は厳しくて、腕をみてもらいに行っては断られるを繰り返した。
イザベラの【悪役令嬢】は最終的に断罪され、処刑はないものの、国外追放になる。
「どうしよう」
と、相談された。ゲームをしたことのない私が何ができるのか。
「とりあえず、味方をつくろう……私以外で」
1番偉いこの国の王様に取り入ってはどうかと言ってみたら、意外と乗り気になり、王城に行くたびに、
「王太子妃になるために陛下の公務を知りたい」
と、妃教育以外は王様にべったりつき、公務の手伝いをしていた。
学園に入るまでに、王様の信頼を勝ち取った。
今、王妃は不在……というか、第2王子を出産したのち亡くなった。陛下に後妻をと話しもあがっていたが、亡くなった王妃を愛していたため、後妻の話はなくなった。
さらにイザベラは王様に平民差別の現状、他国での平民に対する考え方を説き伏せた。
王様の信頼を勝ち取ったイザベラは、私を護衛したいと、王様に願い了承させた。
また、この護衛に関して、貧困区や平民区で起こった事件を調べるための、イザベラの案でもある。
護衛の為に、貴族地区へ、そして王城へ行ったことで、王都のほとんどを行けるようになった。
∷∷∷∷∷
「気がついた?」
傍らに、フェルディオがいる。手には濡れたタオルを持って、私の顔を拭いている。
天井も見覚えのない……部屋。
「ここ…は?」
まだ、ぼんやりしている。リリアーナに魔法で……
「ここは学寮の、私の部屋」
部屋…フェルディオの……部屋。
?!へっ?
「まだ、動かない方がいいよ。傷は塞がってはいるけど、多量に血を失っているから」
起き上がろうとした私を止め、もう一度寝かせる。動いたとき、右肩に痛みを感じ、目眩もした。
「わ、私…どれくらい、寝てた…?」
時間がどれくらい経ったのか、日にちは?
「だいたい2週間、かな」
え!?フェルディオの部屋で2週間も寝てた!?
しかも動けるまで、まだ時間がかかりそうだし……
「ずっと、看病してくれてたの?」
「授業がないときはね。授業の時は、この魔力石を媒介に結界を張ってたんだ」
魔力石を見せてくれた。
「私がベッド使ってたから寝れなかったよね」
「大丈夫。ソファを置いてるから、そこで寝てたから、問題ないよ」
迷惑をかけてしまった。しかも巻き込んでしまった……。軽率な行動したばかりに、リリアーナと話そうとしたから、こんなことに。
「助けてくれて、ありがとう」
「どういたしまして。無事でよかった」
駆けつけてくれたのが、フェルディオでよかった。
「一応、心配させてはいけないと思って、イザベラ嬢には知らせておいた。イザベラ嬢の『大事な時』が何なのかわかったよ」
「!!」
まだその時まで、秘密にしたかった。フェルディオだから、まぁいいのか…。
その後は、私が動けるまで、水を飲ませてくれたり、食事を食べさせてくれたり、甲斐甲斐しくお世話をしてくれた。お世話されるのってすごく恥ずかしい…。
着替えはさすがにフェルディオはできないため、イザベラが手配しくれたメイドがしてくれる。口止めもしてくれているようだ。
動けるまで1週間かかった。




