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【完結】乙女ゲームの表と裏  作者: あまつ冴
7 それぞれの思い
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17/25

>>>騎士・ナナ

下手こいた……まさか、こんなことになるなんて。



 新学期に入ってから、イザベラは学園には登校せず。王城で勉学に取り組んだ。急に学園に行かなくなるのは不信がられるからと、私に成り代わりを頼んだ。

 リリアーナの転落。その時もイザベラに扮していたのだが、落ちていくリリアーナを見て、変身を解いてしまい、助けた。王城にいるのは本当。課題はウソ。


 フェルディオにもリリアーナにも近づかないように気をつけていた。あまり避けすぎたのか、リリアーナが必死に探すようになった。

 どうして探しているのか、話をしてくれるかもと、生徒の少なくなった校舎に残っていたが、話すどころか、魔法を打ってきた。咄嗟に避けたが右肩を切られてしまった。激痛に膝から崩れ、押さえた手が、肩が熱い。

 リリアーナに声をかけてる間もなく、魔法をむけてくる。避けられそうにない。まだ、やらないといけないことがあるのに……孤児院のみんな、イザベラ…フェルディオ…


「ナ…ナ…?」

聞き覚えのある声がする。

フェルディオ?

助かったのか…それとも夢?

「……っ!」

この痛みは夢ではない。痛みで魔法が維持できない。…治癒もしないと。

たぶん変身の魔法が解けてるかも……

「……秘密に…」

「わかった」

動揺はするだろな。

フェルディオの返事に安心した。

ごめんね、フェルディオ…



∷∷∷∷∷

 私は捨て子だった。キンと冷え込む冬の夜に捨てられていたと、シスターが教えてくれた。

 親が誰か、誰に捨てられたのか、わからない。食べ物もろくにない貧困区に乳飲み子の赤子が来た。シスターは母乳を平民街に何度も頭を下げ、分けてもらったそうだ。


 シスターは私に名前をつけなかった。私が物心つくころに、私に決めさせた。名前のない、捨て子。

『ナナシ』にした。


 私には不思議なことがあった。この貧困区の外が見えない。いや真っ黒に見えた。シスターはふつうに景色が見えると言った。他の人も。思い切って真っ黒の中に足を踏み入れたが、まっすぐ進んだつもりが、貧困区に戻っていた。


 もう一つ、私には秘密があった。

 私には前世の記憶がある。前世では社会人だったが、どんな亡くなり方をしたのか、憶えていない。しかし転生したことは理解した。

 シスターには話したが、誰にも言わないよう秘密にしなさいと言われた。


 シスターは育ての親で、魔法の師匠でもある。魔法の世界とわかったときには、ワクワクが止まらなかった。でも本来なら選択の儀式を経て使うようになるそうだ。しかし、儀式がなくても魔力は誰しもが持っていて、使うことができると教えてくれた。魔法の練習に取り組んだ。


 貧困区の状況は深刻だった。屋根しかない家、やせ細った人、唯一水だけは確保できる。食料はシスターが平民街に頼み込んで、分けてもらえるが足りない。


 国の支援は全くない。支援も、平民差別のせいでないのだとシスターが教えてくれた。平民は…貧困区のみんなは死んでもいいと、命を軽視することが許せなかったが、私には何もできなかった。


 年月が過ぎ、グォーブさんがやってきた。始めは強面で怖かったが、ナイフの扱いはとても上手で、木彫りでウサギを作ってくれた。造りの繊細さに驚いた。 (これ!売れるのでは?)

 外にいけない私は、またシスターにお願いした。 シスターだけでは売れず、グォーブさんがついていってくれたことで、少しずつ売れ、食べ物も買えるようになった。

(このままいけば、うまくいく)

そう思っていたら、毒薬事件が起こり、シスターが亡くなった。


 平民街の人達が私を抱きしめなだめてくれた、あの辺りから平民街の住宅区まで視界が開け、川の手伝いができるようになり、平民街の職人が井戸を作ってくれてから、平民街全体が見えるようになった。

 職人たちのおかげで、家が整い、ボコボコの地面が平たくできた。食料も服もくれた。

 お礼に、平民街の清掃や店の手伝いをした。そのうち、手伝いをすると賃金をもらえるようになった。


 あの事件から、私はグォーブさんに剣を習い始めた。まずは体力から、次は構え方、素振り。


 剣の練習から、平民街のお店の手伝い、食料を買って、貧困区で料理しみんなに食べさせる。シスターの代わりに、私がみんなを守らなければ、という思いでいっしょうけんめいだった。


 そんな私をグォーブさんは心配してくれた。何でも1人で抱えるなと。


 グォーブさんの心配が現実になる。休むことなく動き続け、みんなを守るという責任感から、体も心も疲れ、寝込んでしまった。


 起きた時、グォーブさんが教えてくれた。

私が寝込んでいる間、私がしていたお店の手伝いを別の子がして、また別の子が買い出しをして、また別の子が料理をしていたこと。

お店の人は、私の代わりだと知ると、手伝いのやり方、いつもどんな物を買っていたか、住宅区の人が料理のやり方を教えてくれたそうだ。


 自分で抱えて、その先まで考えれていなかった。全部やってしまうのではなくて、教え伝えないといけない。困ったこと、知らないことは聞くこと。

 報連相ができてなかった。社会人してたのに、情けない。



 捨てられる子は少なくない。年々増えていく。住むところも多くないので、職人に頼んで、孤児院を建ててもらった。台所と食事をとるダイニング。2段ベッドと机も備えた4人部屋を何部屋か。

 ルールも決めたが、最初は手探りで、何か問題が起これば、その都度話し合いルールを見直す。もめることあったが、なんとか今の形におさまってる。

 小さい子でもできる簡単な内職をお店の協力のもと、できるようにした。部品の仕分け、袋詰めなど。納品は年上の子供とグォーブさんがついていく。


 時々、平民街や他の貧困区で人攫いがあった。特に貧困区は恰好(かっこう)の的で、いなくなってもわからないという理由で狙われる。もちろんここにも来たのだが、グォーブさんが捕まえてくれた。

人を攫うのは、奴隷にするためだと言っていた。ポロっとこぼした話では、どこかの貴族が奴隷売買をしている、ということ。

 この国は一応奴隷を禁じているが、奴隷ということを知られなければ、買おうが売ろうがどうにでもなる。抜け穴があるのが現状らしい。これはグォーブさんが教えてくれたことだ。


 なので、貧困区の子供が街へ行くときには必ずグォーブさんを連れて行くことにしている。



 冒険者をしていたのは、店の手伝いの一環で、薬草取りや獲物取りをするためだった。街の塀の外は狩り場だけ行けた。1人で行くことはなく、同じ狩りを生業としている、剣士と魔法師。剣士からは獲物の取り方、捌き方を教えてもらって、魔法師からはいろんな魔法を教えてもらった。魔法の第2の師匠になった。その師匠から魔法の多重使用も教わった。



 店の手伝いから、狩りまで何でも屋に変わっていったのもそのころからだった。

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