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【完結】乙女ゲームの表と裏  作者: あまつ冴
6 夏季休暇
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14/25

夏季休暇の思い出

 夏季休暇、最後の思い出に、私のユシェリ子爵領にザッオールを招待することになった。

招待することを養父母に伝えると、喜び歓迎してくれた。


今回は養父母もいっしょに領地へ行く。普段から養父母は領地へ行くことが多い。領地に、その土地にちなんだ商品を扱う商会を運営しており、商品と取引についての話し合いをしていると言っていた。



 ザッオールと同じ馬車で、片道5日かけて移動する。途中の街でも2人で散策したり、楽しんだ。その街の夜の様子が見たいと、1人で出かけたりもあったが、昼間はいっしょなので特に気にしていない。


 5日かけて子爵領に到着し、初日は長旅の疲れを癒すため、ゆっくり過ごし、次の日は街の散策と案内。服のチョイスはゲームの記憶をたどり、選ぶ。街は明日行われる祭りの準備で賑やか。飾り付けや、屋台がすでに準備ができている。街の案内はゲームを思い出しながら、案内する。店のおばちゃんの冷やかしもゲームどおりのセリフだった。ザッオールにも明日の祭りの事を伝えると、参加する。「大物をしとめる!」と意気込んでいた。

 3日目には、領で行われる狩猟祭がある。どれだけ大きい獲物を仕留めれるかを競う。捕れた獲物は夜のごちそうになる。


 参加する人達が、会場となる狩猟場の森に集まる。その中にザッオールもいる。私は離れたところへ街のみんなと見守っている。ザッオールが私に気づいて手を振る。私も振りかえした。

 合図とともに、一斉に森へ入っていく。ここの森は1番小さい獲物ではラビット、大きいものはビッグボアがいる。ビッグボアは大人1人だけでは仕留めれないと聞いたことがある。

 森のあちこちから、男性の叫ぶ声が聞こえる。私からは森の中がどんな状況なのか、わからない。ゲームでも攻略対象者の声だけのセリフしかないから、どう闘っているか、想像ができない。


 男性の声から、今度は大きな足音が聞こえ、木の葉が揺れる。

もしかして、大きい獲物かも……

砂埃が舞い上がり、グオォォ……轟く声。そして木の葉の揺れがおさまる。

ゲームどおりだと……


 ザッオールがビッグボアを仕留め、戻ってきた。息切れをしながら、仕留めたことを剣を振り上げ宣言する。そして……

「リリアーナに、この勝利を捧げる!」

その言葉に他の街の女性たちが、歓喜の悲鳴をあげた。


 この後は、ザッオールが仕留めたビッグボアを、街のみんなで食べる。串焼きやスープ…。さまざまな料理になって、おいしくいただいた。ザッオールは参加した男性たちと楽しそうに酒を酌み交わし話している。

 1人の強面の男性が、私を指さしザッオールに何か話している。ザッオールの頬は赤く、男性の言葉に頷いていた。


 まだまだ盛り上がり騒いでいる。ザッオールがそっと私に近づき、いっしょに会場から離れた。



 森の反対側に湖がある。私たちは湖のほとりに座る。すっかり夜になり、瞬く星は湖に降り注ぐ。キラキラ光る湖面を見ながら2人体を寄せ合い、触れた手をザッオールが握る。お酒は飲んでないのに、顔が熱くなった。ザッオールの視線を感じ、振り向くと……



 ザッオールの手も唇も熱い。触れた私の唇も熱い。抱きしめられた体も、触れられたところ全部、熱く溶けてしまいそう……

「好きだ」「愛してる」

何度も何度も、囁いてくれた。深く…深く…心も、繋がる夜。


部屋に戻ってからも、甘い言葉は紡がれる。


2人の速い鼓動は重なり合って、どちらの鼓動なのか分からなくなった。


 明日、出立しないといけない。寂しい思いもあるが、今このときの愛しい人のぬくもりを感じた想いは、寂しいよりも嬉しいになった。

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