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【完結】乙女ゲームの表と裏  作者: あまつ冴
6 夏季休暇
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13/25

>>>>騎士の休暇(過去の思い出)

 空が白んで、朝になりかける頃。みんなが起きる前に井戸の掃除をしようと、早起きし井戸に来たのだが、なんだろデジャブ?……フェルディオがいた。

「手伝うよ」

遠慮します。と、言いたい。みんな寝てるから、こっそりひっそりと出てきたのに。

「……眠れなかったの?だから言ったのに、やめたほうがいいって」

布団の質も、平民街の宿の方が、貴族向け宿の方が断然、布団の質はいい。高級な布団で寝ている王族は、ここでは体が痛くなるだけだ。

「いいや、ちゃんと寝たし、寝心地もよかった」

「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます……王子様」

わざとらしく、言ってみた。会話をしながらも、準備を続ける。

「あれ?疑ってる?…ホントだよ。ただ比べた対象は『戦地』だけどね」

「え?王子様は戦場に行くんですか?」

準備していた、手が止まりフェルディオを見た。

「戦地の現状を把握するためにね。体を休めるのは、寝袋はあるが、ほぼ地面で固い。食事なんか干し肉とパン。温かいスープなんか作れない。いつ敵が仕掛けてくるかわからないから、緊張して心も休まれない。それを体験したんだ。」

私が知り得ないことを、してたのか。そもそも戦っている所があるというのも、初めて知った。

この国のことも知らないことが多い。自分のことで精いっぱいなのもあって、それどころではなかった。

 『戦地』よりも孤児院……褒められているのか?なんか複雑な比べ方だな。比べるものでもないと思うんだが…。


 袋に付いているロープを木に括りつけ、袋は井戸に放り込む。

「フェ……ルディ。私がこの袋に葉っぱとか入れるから、合図をしたら引き上げて」

「わかった。任せて」

ゴミを掬う網を持って井戸に入る。

井戸を作った時に、レンガで階段のような足場をつけた。 下に行くごとにひんやりとした空気になる。


※※※※※…


 私が幼い頃、この井戸はなかった。この区域を横断する、山側から流れる細い川が唯一の水であり、生命線だった。この川は平民街の住宅区へも続いている。


 確か私が5、6歳くらいだったころ…。グォーブさんがここに来たのもそれくらいだった。

 貧困区のみんなが苦しみ寝込むようになった。食べ物もろくになかったので、水だけで空腹をごまかしていたから、原因は水だろうと思った。この症状は貧困区だけでなく、平民街の住宅区にも及んでいると、聞いた。平民街は貧困区のせいだと騒ぎ立て、石を投げられたり、暴力沙汰もあったが、来てくれたばかりのグォーブさんが庇ってくれた。だが、状況は変わらず、貧困区では亡くなる人も出てきて、シスターはその1人だった。


 原因は川の水。川の上流に原因があるのではとグォーブさんに相談し、平民街の何人かとグォーブさんが調査しに山へ向かった。


 何日かして、グォーブさんが数人の男を捕まえてきた。話によると、山に行ったときに、ちょうど毒薬を流していた現場に遭遇し、捕まえたとのこと。


 この人達が、みんなを苦しめ、育ててくれたシスターを殺した。怒りで、あまり憶えてないが、グォーブさんが教えてくれたのは、手で掴めるくらいの石で、泣きながら何度も何度も何度も…何度も……殴った…と。

 その様子を見ていた、グォーブさんも平民街の人達も必死に止めて、泣いていた私を抱きしめ、なだめてくれたのだそうだ。


 毒薬を流した男たちは、平民を嫌悪する貴族から頼まれたと言っていた。でも、貴族の名前は不明のまま。


 男達を警備兵に突き出すことになったが、グォーブさんは貴族が絡んでいると、うやむやにされるかもしれないと言った。

 グォーブさんは元騎士団で、警備兵も知っているから、話をつけると、直接行ってくれた。


 その後どうなったかは、風の噂も何もなく。グォーブさんが聞きに行っても、はぐらかされたそうだ。結局、グォーブさんの言った通りになった。


 私はしばらく気力をなくし、原因になった川をずっと見つめていた。

 あの一件で平民街の人達が気にかけてくれたり、話かけてくれたり、食べ物をくれたり…。

(この人達も、苦しんだのに……)

みんなの為に自分ができることをしようと思った。


 川を堰き止め、毒の染み付いた土を取り除く。平民街の人達も手伝ってくれた。住宅区の川は私も手伝った。また毒を流されないように川をなくし、井戸を掘ることにした。

 平民街の職人が、率先して掘り、井戸を作ってくれた。平民街の人達と交流が増えた事件であったが、亡くなった人も多い、やりきれない事件にもなった。

 うやむやにする警備兵、平民を嫌う貴族。このままではダメだと、強くなりたいと、グォーブさんに剣を習うようになった。


…※※※※※


 この井戸は、その時のことを思い出させる。辛く悲しい思い出の井戸。



「手伝ってくれて、ありがとうルディ」

フェルディオはじっ…と、私を見つめる。

「どうした?目が…」

「何でもないよ。さぁみんなも起きてるだろうから、朝ご飯にしよう」

井戸に蓋をして、びちゃびちゃの服も着替えないと。フェルディオを引っ張り孤児院へ戻った。


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