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【完結】乙女ゲームの表と裏  作者: あまつ冴
6 夏季休暇
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12/25

>>>>>騎士の休暇

あの騒動の輩は鉱山強制労働、警備兵数人が辺境地へ飛ばされたと聞いた。


イザベラにイベントのことを聞いたが、「偶然」と言われた。


 剣ができたと知らせが来たので、取りに来た。前回よりも握りやすく力を込めやすくなった。満足の一品だ。

 で、………なぜ、またフェルディオがいるのか……?

「暇なんですか?」

「暇といえば暇だねー」

さわやか笑顔のイケメンなのだが、目の前にいるのは残念イケメンに見える。

「あ、親方から」

自分の剣を受け取ったときに渡された、もう一つの剣。

「『試作だが、腕が上がるまでコレを使え』だそうです。お代は要らないと言ってました」

「いい親方だね」

「でしょ」

信頼する親方が褒められるのはうれしい。口元が緩む。では、これで……とフェルディオと別れようとしたが、やっぱりついてきた。

焼き菓子を買い、紙袋を両手に抱える。

「だいぶ歩きますけど、着いてきますか?」

「ええ、是非」


 これから行くところは平民街の住宅地区の端っこ。

「ここは?」

「貧困区です。私が育った場所です」

「とても…貧困とは思えないな」

驚いた顔をするのは無理もない。平民住宅地区とほほ変わらないと言っていいほど。すきま風のない家、小さいが畑もある。樹木も花も植えている。

 離れた所にいた子どもたちが気づき、走って近寄ってきた。

「あーナナシ!久しぶり!」

「ナナシ?」

「私の本当の名前」

フェルディオに菓子袋を押し付け、駆け寄ってきた子どもを順番に抱き上げる。

地区を区切る柵の中に入る。

「元気にしてた?」

「その男の人誰?」

「ああ…今護衛しているお嬢様の友達よ。さ、お菓子買ってきたから皆で食べよー」

お菓子と聞いて歓喜する。フェルディオを案内しつつ、他の住人に挨拶し、お菓子を配る。


 この地区にも教会があり、その横には孤児院の建物がある。共同生活の中で字の読み書き、簡単な計算の勉強、お金を稼ぐために内職もできるようにした。子どもたちは孤児院でお菓子を食べる。

「…ふぅ……普段の口調になるけど、許してね」

「それは構わない」

「最初はほんとに何もなかったの。家は屋根があればいいって感じだし、草花もない、地面もボコボコ」

昔のことを思い出した。

「みんな生気がなかった。貧困区だからと職も就けないし、食べ物も買えない……ひどかった」

「ナナはどうして貧困区に?」

「今はいないけどシスターが言うには、柵の内側の…あの木の根元にいたんだって。まだ赤ちゃんで捨てられたんだろって」

 同情される話だが、何度も話してきたので当たり前になっていた。捨て子もここでは当たり前、ケガして職を失ってたどりつくのも当たり前。

「よりよくする為に色んなことしたの。冒険者稼業もしたし、大変だった〜勿論私1人だけじゃないの。みんなが協力してくれたから」

ここに来ると気が緩むのか、しゃべりすぎる。最初の光景からここまで変えれた。大変だが、達成感もある。

「1番はイザベラが支援をしてくれたことかな」

だからイザベラは恩人でもある。


「でね、フェルディオ様に紹介したい人がいて…」

「えっ!?」

お菓子を配りたどりついたのは、この地区の出入り口近くの家。声をかけると杖をついた大柄の男が出てくる。

「こちら、鬼神のグォーブさん。私の師匠」

「どおも…、って鬼神てなんだ?」

「こちら、隣国から来てる方で、隣国ではグォーブさんのこと鬼神って呼んでるんですって」

強面だが気は優しい。足の怪我で騎士団を辞めて、ここに行きついた。杖をついてるが、それでも強い。地区入り口の近くに住んでいるのは、盗賊や暴力、奴隷にするための人攫いの悪い奴らが来ないように見張るため。門番としてとても助かっている。

「あ?剣を新調したのか…。剣筋見てやる。そっちの坊主とやれ」

ボウズって…王子なんだけど。また、フェルディオを相手に打ち込みをするハメになってしまった。

鍛冶屋の親方はグォーブさんから紹介してもらった。


 踏み込みが甘いだの、脇をもっと締めろだの、夕暮れまでやらされた。

「だいぶ、よくなったな。おつかれさん、井戸で汗流してこい…、坊主ちょっとこい」

フェルディオだけ呼ばれ耳打ちされてる。

「アイツを怒らすなよ」

「先日も同じことを言われました。肝に命じます」

何を言ってるのかなんとなく分かった気がした。


 この地区の中央に共同井戸がある。生活用水として、みんなで使っている。井戸水をくみ、顔を洗おうとしたが、桶には葉っぱなど入っていた。使わないときは蓋をしているが、開けている時にはどうしても入ってしまうので、塵積で溜まっていく。

「掃除、しないとな」

井戸には苦い思い出がある。思い出しては胸が締めつけられる。

 日が沈むから、掃除は明日だな。護衛の仕事は長めに休みをもらっているから、大丈夫だ。

「フェルディオ様、私はここに泊まるから。帰り道がわからないなら、途中まで送るけど…」

「………、さっきの打ち込みで疲れたから、私も泊まる」

え?なんで?いやいやいや!だめでしょ?

「貴族の宿屋よりキレイじゃないし、食事も質素だし、やめたほうがいいって!」

「かまわないよ」

おぅぅーじぃぃー!私がかまう!勘弁してー

「寝る場所がないなら、野外でもいい」

「それはだめー!あっ!平民街に宿あるから、そこに行こっ!」

「やだ」

なんでーー。

フェルディオの笑顔の圧がすごい。もう…あきらめた。だめだ、この王子には勝てない。

「……孤児院の2段ベッドが一つ空いてたと思う」

渋々、孤児院のベッドに案内した。一通り施設内の説明をする。


台所では夕ご飯の支度をしていた。

「手伝うよ」

 年上から包丁の使い方、料理の仕方を習う。幼くてもある程度、皮むきや食材を切ることができる。そんな仕組みを私が考えた。教えることも、教わることも経験になる。子どもたちだけでは解決できないことは、周りの大人に頼ることも教えている。

 生活費はイザベラの支援と私の給料、平民街からは野菜など提供してもらっている。子どもたちがしている内職は内職した子のお小遣い。


 食事ができあがり、大テーブルに並べる。ここで、みんなで食べる決まりにしている。

「これはフェルディオ様の分よ」

「ルディでいいよ」

このこだわりはなんなのか…。ちょっとイラつく。

「る、ルディ…毒見しよっか?」

「こんないい子たちがつくる料理を疑わないよ」

あっそ…。みんなが席に着き、手を合わせる。

「いただきます!」

「?そんな言葉初めて聞いた」

でしょうね。

「この食材をいろんな人から頂いたことに。動食物の命を頂き私たちの糧になってくれたことに。この料理を作ってくれたみんなに。感謝する意味を込めているの」

「なるほど。では、いただきます」

んーんおいしい。長く剣の打ち合いをしたせいもあってくたくただ。食べ終わった食器は自分たちで片付ける。フェルディオも率先して自分の食器を片付けた。

 

 テーブルでくつろいでいるところで、フェルディオに聞きたいことがあった。

「国に帰省しないの?」

「ああ、隣国といっても往復で1カ月はかかるからな。夏季休暇後の授業に間に合わないんだ」

そうなんだ…。

「私もナナに聞きたいことがある。リリアーナは元孤児だと聞いているが、ここにいたのか?」

「いや、いなかった。平民街にも孤児院はあるから、そちらかもしれない」

洗い物をしている子供から呼ばれた。洗った後の食器を片付けているときに、フェルディオは別の子供と、話しているようだ。

「ナナシの恋人?」

「えーそうなの?そうなの?」

「ははは…、違うな」

苦笑いをするフェルディオの顔を子供たちはのぞきこむ。

「恋人になったらいいのに」

「どうして?」

「ナナシは私たちの為に、文字や計算も教えてくれた。この建物も建ててくれた……ナナシに幸せになってほしい」

「自分以外の人の為に、幸せを願えることは素晴らしいことだ」

頭を撫でてあげる。


 ナナの築き上げたものが、ここにある。大変だったと言っていた。どんなことがあって『大変』だったのか、想像もできないが、きっと地道なことをしてきたのではないかと思う。いつか、ナナから話してくれるだろうか。

※読んでくれてありがとう。

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