>>>>ドキ?ドキ?デート
夏季休暇に入り、やっと休みをもらえた。護衛は休日がほとんどないのだが、イザベラの許可をもらい休みにしてもらった。イザベラのほうは陛下の近衛騎士が護衛についている。
休みの日は騎士の服ではなく、ラフすぎない服装にした。剣のベルトに騎士である証のバッチをつけている。
せっかくの休みなので、剣の発注をするため中間層商業地区の鍛冶・武具店にやってきたのだが……何故かフェルディオもいる。いや、途中でばったりあったのだが、そのままついてきた。
「………っ、なんで…ついてきたんですか……」
ニコニコでとても機嫌がよさそうだが、目的がつかめない…。店に入る前に、帰らないかと思っていたけど……
「どんなところで、買っているのかと思って」
帰る気はないようだ。
「この地区は中間層だよね。平民もここで剣、買えるんだ」
「ここの親方は身分の偏見をもたない人です。ただ剣を持つに足ると認められないといけないんです」
「君は認められたってことだな。さすがだ」
認められるまで、だいぶかかったが…。
店の扉を開け、入ると、綺麗に並べられた武器と防具、そして独特な金属の匂いがする。
「親方はいるか?」
少々お待ちをと店番は奥に入っていった。店舗の後ろは店舗と同じくらいの広さの庭があり、庭の片隅に鍛冶工房がある。親方はそこにいる。
展示してある武具を眺めながら店番が戻るのを待つ。親方は一度集中すると、どんなに話しかけても聞こえなくなる。作業が一区切りつかないと無理だ。
「奥へどうぞ」
「連れがいるんだが、いいか」
許可をもらいカウンター奥の扉から、庭に出る。
フェルディオは「連れ」に反応している。やっぱり置いてくればよかった。
「よっ、どうした?」
庭に親方が立っている。汗が滝のように流れているのは、直前まで打っていたのだろう。
「剣が雷魔法を受けて、壊れた…。いや…溶けた?」
「……なんだそりゃ。まあ…新しい剣だな。お?後ろにいるのは…、コレか?」
ニヤニヤしながら、私に小指立てないでくれ。
「はい!そう……」
「ちがう!」
フェルディオ!嬉々として返事をするな!
「照れんなよー」
照れてないし、彼氏と勘違いされるのは不本意だ。くそっ、おっさんめ!
「腰から下げてるのは?」
「騎士団の支給品だ。だが、重さも長さも合わない」
剣を抜き、親方に渡す。親方は剣をまじまじと見て、振ってみせる。
「確かにな、前回の剣より重いし、長い」
剣を返され鞘に収める。親方は武器のたくさん入った樽から吟味して取り出す。
「これくらいの重さだな」
選んだ1本を私に投げる。振ってみろ、と言われ、相手がいるイメージで体を動かす。
「……ちょっと、鈍ったんじゃないか?キレが悪い」
ずっと護衛で立っていることが多い。鍛錬以外で剣を振るうのは、殿下の手合わせと暴走事件以来だ。
「うるさい!」
親方は私の動きを見て、剣を作ってくれる。1回作ってくれたからと、次回も作ってくれるかはわからない。
「そこのお前さんは、剣か?魔法か?」
「魔法です」
チラリとフェルディオ見て、まだ剣を振るっている私の方に向く。
「……あいつの相手しろ」
「いや…」
「剣の鍛錬もしているだろ?」
「……」
「そんな体つきしている。そらっ行け」
剣持ったフェルディオが目の前に現れ、私の振った剣に当てる。いつの間にか間合いに入ってきて、剣を交える。
殿下より素早くキレがいい。一撃に重みもある。久しぶりの練習相手にうれしくなった。互いに隙を見つけては剣を打ち込み、それを受ける。
「おい!やめろ!」
親方の声で漸く打ち合いをやめた。
「お前ら、止めなかったら永遠に打ち合うのかよ」
炎天下のなか打ち合いしたからか、汗が止まらない。親方がタオルと水も用意してくれていた。
「重さと長さは前と同じだな。刀身は細めでいいのか?」
「ああ、よろしく頼む」
「できあがったら取りに来い。それまでこの剣を使え」
壊れた剣と同じくらいの重さと長さの剣を渡され、腰に下げる。
「お前さんも作ってやろうか?」
フェルディオは首を横に振った。
「もう少し腕を上げたら、お願いします」
親方は、フェルディオの返事がわかっていたかのようだった。
店を後にし、区域中央に向かって歩いた。主な用は済んだし、どこかで腹ごしらえしてもいい。お菓子を買ってあそこに寄るのもいいかも。
……ところでフェルディオはいつまでついてくるのか…。
ここらで別れようと、声をかけようとしたとき、向う先から悲鳴が聞こえた。咄嗟に走り出し、声の方向には3人の男性?1人は女性の手をつかんで、もう1人はナイフを持っている。
「女性の方をお願いします」
ナイフの持つ手を叩きつけ、手を離した隙に後ろ手にして固定する。逃げていく男の足にナイフを投げ、男は悲鳴をあげた。フェルディオのほうは難なく組み伏せている。
絡まれていた女性はリリアーナだ。心配して駆け寄ってきたのは殿下。殿下に足にナイフが刺さった男を取り押さえてもらった。
「お、おれらは!頼まれたんだ!その女を痛い目にあわせろって!」
「……誰に?」
「た、確か……イザベラって言っていた」
……もともと、こういう奴らは嫌いだ。嫌悪する。それなのに『イザベラ』の名を出してきた。
殿下は単純バカだから、こんな奴らのいうことを信じるだろう。イザベラのことは、よく知っている。だから犯人ではない。
「お前の会った『イザベラ』の髪と目の色はなんだ?」
そもそもこいつらムカつくんだよ。弱いクセに女には強気で言い寄って、刃物まで出して……。足か腕の1本くらい折ってもいいんじゃないか?あー指でもいいか…それとも…
「ナナ!落ち着け!」
!フェルディオ?
「痛でで〜」
頭に血がのぼって、つい、力が入りすぎた。
フードをかぶって、髪も瞳の色もわからない奴が名前を言うのか!? 明らかに偽名だろ!それとも『イザベラ』を犯人にしたい誰かの……。
?男が、リリアーナに視線を向けた。リリアーナは目を逸らしたが。たまたま目が合っただけか?
「殿下、別の人物が指示しているようです。警備隊の詰め所に連れていきます。そこで……尋問します」
フェルディオにも手伝ってもらい、もう一度親方の店に向かった。
「すまない、庭を借りる」
鍛冶の音が漏れないように、魔力石で防音結界をほどこしている。魔力石が壊れない限り、外へ音は漏れることはない。
「警備隊……の…詰め所は?」
男たちはオロオロしてるが、こっちは聞きたいことがある。
「そんなところに連れて行くわけないだろ、うやむやにされても困るしな」
「怒ってるのはわかるが、ほどほどに…」
フェルディオと目が合ったが、怒りが収まるには少々時間がいる。
「女の子に手を出すことも許せないが、犯罪の片棒を担いだことが1番腹が立つ」
だいたい、平民街より警備が整っている中間層区域にこんな輩がいることがおかしい。それぞれ区域ごとに警備兵のいる門を潜らないといけない。そこを難なく通り抜けられたとしたら、警備兵もグルの可能性もある。
武器の入った樽ごと、男たちの目の前に置く。怒りを抑えた笑みを向ける。
「どの武器で切ってほしい?あー大丈夫、得意ではないけど治癒魔法で治してあげるから」
「「〜〜〜っ!」」
「それとも、男の矜持をベッコベコにへし折ってもいいのよー」
「ほんとに知らないんだ!ただ金渡されて!!」
これ以上は何もないようだ。フードをかぶった見知らぬ『イザベラ』を名乗った人物……か。
「わかった。で、お前達に関わったすべての人を吐いてもらおうかな」
…そういえば、殿下とリリアーナがいっしょにいたな…………?………あ!!
あれってイベントだったのでは?いつもならイザベラからイベント情報を教えてくれるのに。
今日休みにしてくれたのも、まさかこのため?私……イベント潰した?
いつのまにか工房から出てきた親方がフェルディオと話している。
「あいつを怒らせるなよ」
「ええ…実感しました」
気づいたら日が暮れかかっていた。あそこへ寄るのは今度にしよう。あらかた聞き出したから、引き渡すときに警備兵に釘を刺してから、帰ろう。あとは陛下に報告…と。
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