【第一部】19話
───20○○年12月28日───
今日は親父が迎えに来る日である。
あの除霊の一件後、熊さんの言われる通りに座禅や呼吸法などいろいろな事を教わった。
そして、あの日以降・・・いや、自分の中の力の正体が分かって以降は今まで以上に自分の霊感・霊力といったモノが強くなったのを感じる。
犬神様の言っていた・・神産巣日神様。
熊さんからも教えて貰ったが、俺は本当に一族の因縁を断ち切る為に生まれてきたのだろうか・・・。
これが俺の運命ってやつなのか!?
そんな事をふと思ってしまった。
「お~い。翔!親父がきたぞ~」
熊さんだ。
俺は荷物の入ったバックを片手に外に出た。
今日は見事なまでの快晴により、お昼前だがかなり暖かく感じる。
「よう。元気にしてたか?」
親父は珍しくスーツ姿で立っていた。
その横には熊さんと沙織ちゃんもいる。
「あぁ。俺はいつでも元気だよ」
(こいつ以前より顔つきが変わったな。熊さんに任せて良かった)
「さぁてほんじゃ行くぞ。熊さんありがとな。後で、ちゃんと礼に来るわ」
「えっ・・ちょ・・」
親父はそういうとクルっと向きを変え駐車場へと歩きだしてしまった。
俺はもっとゆっくりしていくのかと思っていたので驚きながらも熊さんと沙織ちゃんにお礼を言い親父を追いかけた。
親父は何処か急いでいるように感じる。
俺が親父に追いつく頃には駐車場へ辿り着いてしまっていた。
「親父。何急いでるんだよ」
「ちょっと今日は忙しくてな。」
「どうせろくな用事じゃないんだろ?」
「まぁ確かにろくな用事ではないがな・・・お前を守る為には必要な事だ」
「何するつもりなんだ」
「これからちょっとお前を霊視してもらいにいく」
「霊視!?」
「あぁ。お前がこっちで世話になってる間に祟り神を封印している小屋の鍵が何者かによって壊された。まぁこれと言って荒らされた形跡はないにしろ少し気がかりでな」
「え・・でも、それと霊視に何の関係があるのさ?」
親父は少し間を空けてから答えた。
「これは俺の憶測だが、今のお前には奴の力が少なからず入ってる。多分今もお前の見ている世界は奴にも見えているのだと俺は考えている。それにだ、その鍵が壊された晩に奴が俺の頭の中に現れやがった。」
「ちょ・・なんで!?まだ封印は解けてないんだろ!?」
「もちろん封印は解けていないさ。現れたと言うよりは語り掛けてきた感じだな。その時奴は何かを企んでいるような素振りだった。これは鍵が壊されたのも繋がりがあるのではと思っている。」
「でも、霊視って何を見るつもりなんだ?」
「これも俺の憶測だが、奴にお前に見ているモノが見えるならこっちからも奴が見ているモノが分かるのではと考えている。だとすれば何者が鍵を壊したのかも分かる筈だ。まぁとにかく見て貰わん限りは憶測の域を出ん。とりあえず早く車に乗れ」
「あ・・あぁ」
俺は言われた通り車に乗り込みその後お互い何も言わずに車は走り出した。
車は見慣れた道を走り続け地元の繁華街へ辿りついた。
親父は慣れた感じで24時間500円のコインパーキングへと車を停める。
俺が小さい頃から遊び親しんだこの繁華街に霊視のできる方がいるとは少し意外だった。
「親父。こんなとこに霊視が出来る人がいるんか?」
親父は車を降りると煙草に火を点け1度大きく吸い込んでから答えた。
「あぁ。俺の中学の時の同級生だ。」
「へ~。てか、親父じゃ霊視できんの?霊感もあるし神様とか呼び出せるんに」
「まぁ霊視と言っても種類があるからなぁ。基本的に視界に写らないモノを映像として見るという事できるってのが霊視なんだが、俺達の業界では見えざるモノの視界や、過去、若しくは、生きた人間の奥深くを盗み見る事を霊視って言うな。」
「あっ!てことは、俺の中に眠っている霊感の類の元が神産巣日神様って熊さんのとこの犬神様に言われたけどあれも一種の霊視って事?」
「まぁそんなとこだ。俺も熊さんからその事実電話で聞かされた時は驚いたが、まぁこれでお前が生まれた時から感じていたうちの家計には無い霊力の元がわかった訳だな。基本的に霊感ってのは高い霊力を持ったモノに触れたりすることによって体内にその力が多生なり宿り霊が見えたりするんだが、
お前にはオキツネ様の霊力をまったくと言っていい程感じられんかったからおかしいとは思っていたんだ。とにかくかなり位の高い神様の力がお前には宿っている。万が一それが奴に吸い込まれた場合はもはや手が付けられなくなっちまうだろうな」
「とにかく祟り神に負けなきゃいいんだろ?俺だって熊さんとこで遊んでた訳じゃねーしそう簡単にはやられねーよ。」
「フッ・・まだまだ甘いんだよ。たかだか1週間修行した程度じゃたかがしれてるわ。ただ、以前のお前よりはだいぶ良くなっているがな」
「あったりめーだ!」
俺達はそんなやりとりをしつつ目的の場所へと着いようだった。
「ここだ。」
「ちょ・・ここって・・・・」
質素な階段の登った先には木彫りの札に「美吉組事務所」と書かれている。




