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三者連続四球からの三者連続三振  作者: 和泉 きよ


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16/19

あと一人

十一回裏。


二死一、二塁。


スコアは四対三。


打席には、相手の四番打者。


ここを抑えれば、俺たちの勝利が決まる。


二塁には相手の九番打者。


一塁には一番打者。


長打なら逆転される。


ヒット一本でも、同点になる。


俺はマウンドの上で、ゆっくり息を吐いた。


「工藤!」


阿部の声が聞こえる。


俺はホームを見る。


阿部がミットを構えていた。


初球

外角へのストレート。


「ボール!」


俺はボールを受け取る。


二球目

今度は内角。


「ストライク!」


カウントは一対一。


相手の四番打者は、じっと俺を見ている。


三球目

俺は低めへスライダーを投げた。


――カキン!


打球が一、二塁間を抜ける。


二塁走者が三塁を蹴った。


広瀬がセンターからホームへ送球する。


しかし――。


間に合わない。


「セーフ!」


同点。


四対四。


俺はマウンドの上で、歯を食いしばった。


一塁走者は三塁まで進んでいる。


二死一、三塁。


相手ベンチが一気に盛り上がる。


「まだだ!」


阿部が声を張る。


俺はうなずいた。


まだ終わっていない。


打席には五番打者。


ここで打たれれば、逆転される。


俺は阿部のサインを見る。


初球

ストレート。


「ストライク!」


二球目

スライダー。


――空振り。


「ストライク!」


追い込んだ。


あと一球。


俺はボールを握り直す。


三球目

外角低め。


俺は思い切り腕を振った。


――空振り!


「ストライク、バッターアウト!」


三振。


十一回裏、終了。


スコアは四対四。


俺は大きく息を吐いた。


あと一人だった。


本当に、あと一人だった。


それでも、相手は追いついてきた。


野球は最後まで分からない。


ベンチへ戻ると、岡本が俺の肩を叩いた。


「工藤、まだ終わってねえぞ」


「……分かってる」


「十二回、取り返そうぜ」


「ああ」


俺は短く答えた。




十二回表。


スコアは四対四。


俺たちの攻撃は、六番・阿部から始まる。


無死一、二塁。


阿部が打席へ向かう。


俺はベンチから、その背中を見つめた。


「阿部!」


声をかける。


阿部が振り返る。


「任せろ」


そう言って、打席へ向かった。


初球

阿部はバットを振った。


打球は三遊間へ。


相手の遊撃手が横っ飛びで捕球して一塁へ投げる。


「セーフ!」


阿部が一塁へ駆け込んだ。


無死満塁。


ベンチが沸く。


「大チャンスだ!」


続く七番・左翼の松井兄。


相手投手はセットポジションに入る。


松井は初球から振り抜いた。


打球はライトへ。


犠牲フライには十分な飛距離。


岡本が三塁からホームへ走る。


「セーフ!」


五対四。


勝ち越し。


さらに一死一、二塁。


続く八番・山田。


山田はバントの構えを見せる。


確実に走者を進めようとする。


しかし、相手投手もバントを警戒している。


山田は二球目を打ちにいった。


打球はセカンドへの高いバウンド。


一塁へ送球。


「アウト!」


二死二、三塁。


そして俺はゆっくり立ち上がった。


「工藤!」


野村監督が声をかける。


俺は打席へ向かう。


ここで、もう一度点を取る。


それだけを考えた。


初球

ストライク。


二球目

ファウル。


三球目

外角へのボール。


そして四球目

俺はバットを振り抜いた。


打球はライト前へ。


三塁走者がホームへ。


「セーフ!」


六対四。


追加点。


俺は一塁上で拳を握った。


ベンチから大きな歓声が上がる。


二死一、三塁。


次は一番・鈴木。


鈴木は打席に入り、相手投手と向き合った。


一球目

ストライク。


二球目

ファウル。


三球目

――カキン!


ショートライナー。


「アウト!」


攻守交替。


十二回表、終了。


スコアは六対四。


俺たちは二点のリードを奪った。


だが、野村監督は笑わなかった。


「あと三つだ」


その言葉に、俺たちはうなずいた。




十二回裏。


相手の攻撃が始まる。


俺は再びマウンドへ向かった。


二点差。


あと三つ。


甲子園まで――。




本当に、あと少しだ。


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