↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三者連続四球からの三者連続三振  作者: 和泉 きよ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/18

崩れない守備

 六回表


 俺たちの攻撃。


 先頭の山田が四球を選んだ。


「ナイス!」


 ベンチから声が飛ぶ。


 そして俺

 バントで送る


 一死二塁。


 続く鈴木。


 バントの構え。


 相手が前に出る。

 その瞬間、鈴木はバットを引いた。


 そして打っていった。


 ライト前。


 一死一、三塁。


 チャンスだ。


 松井弟が打席へ。


 ここで追加点を取れば、大きい。


 だが

 相手投手も簡単には崩れない。


 松井弟は粘った。


 ファウル。


 ファウル。


 そして最後は四球。


 一死満塁。


 広瀬が打席へ入る。


 俺はベンチから見つめていた。


 広瀬が打った。


 高いフライ。


 しかし浅い。


 鈴木は動けない。


 二死満塁。


 そして四番。

 岡本。


「俺が決める」


 岡本が言った。


 初球。

 ストライク。


 二球目

 ファウル。


 三球目

 ボール。


 四球目

 打った。


 強烈な打球。


 だが、センターの正面。


 チェンジ。


「くそっ!」


 岡本が悔しそうに戻ってくる。


 俺は声をかけた。


「まだ一点ある」


「分かってる」


 岡本が俺の肩を叩いた。


「だから守れよ」


「お前も抑えろよ」


「当然だ」




 六回裏。


 相手の攻撃。


 先頭打者。


 初球

 ボール。


 二球目

 ボール。


 まただ

 俺の悪い癖。


 カウントが悪くなる。


 スタンドの歓声が大きくなる。


 三球目

 ストライク。


 四球目

 ストライク。


 追い込んだ。


 最後

 スライダー。


 空振り。


「よし!」


 ベンチから声が上がる。


 一死。


 次の打者。


 初球

 ボール。


 二球目

 ボール。


 俺は苦笑した。


 またか。


 三球目

 ストライク。


 四球目

 ボール。


 カウント、三ボール一ストライク。


 阿部がタイムを取った。


 マウンドへ来る。


「工藤」


「何だ?」


「力入ってる」


「……そうか?」


「そう」


 阿部は俺の目を見る。


「でも、まだ大丈夫」


「根拠は?」


「俺が捕るから」


「……それだけかよ」


「それだけで十分だろ」


 俺は笑った。


「そうだな」


 打者に戻る。


 次の一球。


 外角低め。

 ストライク。


 最後。

 スライダー。

 空振り。


「三振!」


 あと一人。


 しかし、次の打者にヒットを許した。


 二死一塁。


 そして四番。

 相手の主砲。


 スタンドが大きく揺れる。


 初球

 ボール。


 二球目

 ストライク。


 三球目

 ファウル。


 追い込んだ。


 阿部がサインを出す。


 スライダー。


 俺は頷いた。


 投げる。


 ――打たれた


 打球が三遊間へ飛ぶ。


 松井弟が飛びつく。


 捕った。


 そのまま一塁へ。


 アウト。


「ナイス松井!」


 ベンチが叫ぶ。


 俺はマウンドを降りながら、松井弟を見る。


「助かった」


「いつものことだろ」


 松井弟が笑った。




 七回。


 八回。


 試合は動かなかった。


 俺は何度もピンチを迎えた。


 四球。


 盗塁。


 ヒット。


 だが、最後の一線だけは越えさせない。


 そして仲間が守る。




 八回を終えて――


 1対0。


 残り一回。


 あと三人。


 俺たちは甲子園まで、あと三人だった。


 ベンチへ戻る。


 野村監督が俺を見る。


「工藤」


「はい」


「疲れたか?」


「少し」


「交代するか?」


 俺は一瞬、黙った。


 ベンチを見る。


 皆川。


 山本。


 杉下。


 控えの選手たち。


 そして――


 石川。


 彼女は何も言わず、俺を見ていた。


 俺は首を横に振った。


「投げます」


 野村監督が頷く。


「分かった」


 岡本が俺の横に来る。


「あと三人だな」


「ああ」


「甲子園だ」


「……ああ」


 その言葉を聞いた瞬間。

 胸の奥が熱くなった。


 甲子園。


 ずっと目指してきた場所。

 みんなで行くと約束した場所。


 そして

 石川とも約束した場所。


 あと三人。


 そう思っていた。


 でも



 野球は、そんなに甘くなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。