銀河通信 その6 Always Coming Home1
幼馴染の親友、湊君が天国へ行ってしまってから、私は毎日、不思議な夢をみるようになった。
いつも同じ夢の続きをみるのだ。
夢と現実が入り混じったように、現実の世界の人が、夢のなかで似たような別人として普通にいたりするし、話したり、一緒に何かをしたりするものだから、目覚めてから、その人と現実では話さえしたことがないのにもかかわらず妙に親しみを感じたり、奇妙な感じのする夢だった。
そしてたいていは前日の目覚める前の夢の続きから、気づいたら夢が始まっている。
夢時間、が現実とは別にあるみたいだった。
私は今年の秋で十二歳になる。
親友の湊君がいない世界はつまらない。
そんな気持ちが、私に不思議な夢を続けてみさせているんだろうか。
時々、真夜中までひとりで勉強しているときなんかに、ふと思う。
私たちはどこからやってきてどこへ還るのだろう?
人々が寝静まったしんとした真夜中、開けた窓からひんやりと心地よい風が入ってきて、虫の声だけがする。その静かな時間が、いろんなしがらみから私を解き放ち、宇宙のおおきな海にたったひとりで漂っているような不思議な気持ちにさせる。
それはどこまでもひとりだけれど、不思議にさみしくはない。
むしろ、しんとした静けさのなかのさえざえとした孤独はとても心地が良いのだ。
不安もない。
恐れもない。
あらゆるしがらみから解き放たれ、何も思い煩うことなく、大きな海のなかに漂い身をまかせている、そんな感じ。
死んだら終わり、それきりよ、って言う友達もいれば、死後の世界をまるで見てきたかのように様々な宗教観で語る大人もいるし、なんだか色々な意見をみたりきいたりしたけど、私にはいまいちぴんとこない。ときにそのまま素直に疑問をくちにして、運悪く(?)たまたまそばにいた親に大慌てで、ごん! と頭にげんこつをくらったりもしたので、なんだかそれは、そういう大人の世界では、あれこれ見てきたかのように語って教えるにもかかわらず、とっても理不尽なことに、実際にはじぶんで開けてみようとしてはいけない扉のようだった。まるで開かずの間だ。質問禁止! 疑問をはさんではいけない!! という奇妙な圧がもくもくと雨雲をよぶように押し寄せてきて、私をそのけむりのなかにくるくるとまきこもうとする。わけ知り顔のままで。もっと知りたかったから教えてほしくてきいただけなのに。それはとても奇妙なさかさま現象だった。
飼っていた金魚や小鳥の死にも何度かあっているし、お墓をつくってあげたりお花や好きだったごはんをお供えしたり手を合わせたり、湊君のお葬式やお墓の前で花を手向けたり、手を合わせたり、そのときはそういうものだというふうに教わるままにそうしたし、そうするものなのだと思っていたけれど、なんだか今の自分にはそうした伝統的な習慣すら奇妙に感じるくらい、何かがかけ離れたような不思議な感じ、ぴんとこない感じがし続けているのだった。
それは、こんなふうに真夜中の海にひとりで漂っているような気持ちのときに、繰り返す波のように遠いどこからか、わたしによびかけてくる。
打ち寄せる波のように、ひたひたと。
ゆったりとしたリズムで。
こんな風に思うのは、親友の湊君にもう会えなくなってしまったショックもあるけれど、私が少しおとなに近づいていて、今までの、おとなのひとたちや周りのひとたちの言うことを正しいものって当たり前に信じていたような子供の気分から、生意気でも、自分がどう感じるのか考えるかのほうを大事にするようになりつつあるからなのかもしれない。
夢のなかでは、そういう私の様々な疑問に、なんとなく新しい観方をみせてくれるようなことを教えてくれる人がいる。そのひとは、湊君にそっくりだけど、もっとお兄さんにしたような感じのひとだった。気づいたら私はいつもその人と一緒にいる。そうして、何かあるたびに彼から色んなことを教わるのだが、夢のなかでは、わあすごい、今までの謎が全部解けた!! 宇宙の謎がすべて解けた!! っていうくらい感動して素晴らしい!! と、ものすごく深く納得しているのに、目が覚めたら肝心の内容をほとんど忘れている。ただ、わあすごい!! 素晴らしい!! すごく納得した!! という感じだけが残っているのが惜しいところだった。
ぼくたちはいつも故郷へと還る──すべてはその道へと、ぼくたちはいつも歩いているんだよ──湊君は亡くなる前にそんなことを私に話した。
湊君は天国へ逝くの?
もう会えないってこと?
そうたずねた私に、彼はそのように答えたのだ。
なんとなく、私にとっては、それが一番、ぴんとくる答えだったし、今でもそうだ。
彼はほんとうのことを言っている──なぜかそれだけはわかったから。
♆
「フィンが悪いんじゃないか」
双子の兄のセイルが、私をたしなめるように言った。
私は、フィンという異国の少女だった。
セイルは双子の兄だが、みためは二人はまったく似ていないし、双子なのに、セイルのほうがちょっと年上のように見える。
セイルは湊君にとてもよく似ている。
私は夢の世界にいつの間にか入ってきていたようだ。あれ、いつ眠ったんだろう? 宿題ぜんぶ終わったっけな?? などと奇妙に現実と夢が織り混ざる汽水域──を漂うように、私はそれを眺めていた。私は登場人物でもあり、映画監督でもあり──観客でもあるのだ。
「だって、司祭のくせに、インチキなことばっかり言うんだもん」
「司祭・さ・ま」
セイルに訂正されて、私は、ちっと舌打ち(?)などという行儀の悪いことを平気でしていた。
セイルは苦笑して「ほら、僕が床磨き手伝うから、フィンはこれで窓をお拭きよ」と、私に窓拭き用の布をわたしてくれた。私は罰として講堂でもある礼拝所の掃除を命じられていたのだ。
「ちくしょう、あのくそじじい! てかってる頭くらいクリアな説法すりゃいいのに!! はらいせにこんなただっぴろい所を一人で罰掃除なんて、いんけんすぎるよ!!!」
鼻息も荒くあくたいをつく私の目の前で、思いっきりあはははと笑ったくせに、セイルはちょっと間をおいてからまじめぶって「そんなこと言うもんじゃないよ」とたしなめた。
「セイルだって笑ったくせに」
私がかみつくように言うと、セイルはにやっと笑った。
ちっ、陰険なのはこっちもかよ。
優し気なかおして、くえないやつ。
「そんなに吠えるなよ~、疲れるだけだろ?」
「ふん!」
私はさらに可愛げない態度でセイルの差し出す布をひったくり、窓を黙って拭き出した。セイルは笑いをかみ殺しながら、床磨きを手伝ってくれた。もくもくと色付きガラスの窓を拭き上げていくと、少しきもちがすっとした。なんだかんだといっても、手を動かすごとにきれいになっていくのは気持ちがいいのだった。
「フィン?」
礼拝所の扉をそうっと開けて、ギョクとランの双子が入ってきた。彼らはフィンとセイルとは幼なじみで、一緒に礼拝所で学ぶ仲間でもあった。
「あれ、セイル、やっぱりここか」
ギョクがセイルを見つけてそう言うと、セイルは「手伝いに来てくれたの?」と手を止めて二人ににこっと笑いかけた。
「いや、ひやかしに。でもセイルが手伝ってるなら、しようがないからオレも手伝ってやろうかな」
「私は手伝いにきたのよ」
私は台から降りてランに近づき、ありがとう、と言ってぎゅっと抱きついてから、ギョクに向かって「あんた、私のこと、笑いにきたんでしょう。いいきみだって」
「あたりまえじゃん。おら、そこまだ汚れてるぞ、むだぐち叩いてないでとっととはたらけ!!」
おぼえてろよ、と思いつつも、ギョクはセイルと一緒に床磨きを手伝ってくれ出したので、私はもくもくと窓拭きに戻った。ランは祭壇にある聖具を丁寧にひとつひとつ手に取って拭き始めてくれたので、窓掃除が終わったら私は別のところにとりかかれる。
「あーでも、けっさくだったよね。あのときの、司祭様のかおったら!」
聖水の入った聖瓶を磨きながら、くすくす笑いながらランが突然にそう言ったので、それは思いのほか講堂に響いた。私たちはそれを機に、一斉にげらげら笑いだした。セイルなんか、おなかかかえて笑い転げているんだから。
「何だよ、みんな同じこと思ってたくせに」
私がちょっと口をとがらせて言うと、ギョクは笑い過ぎて出た涙を指で拭きながら言った。
「だからこうして手伝いに来てるじゃん」
「あんたは人の不幸を笑いに来るのが元々の目的だったでしょ」
「まあまあ」
「セイルもだよ。自分だけ優等生ぶって」
むっとしながら私が言い返すと、セイルはぶっと噴き出し、げらげら笑いながら、
「だっていくら何でも、死者を送るセレモニーの途中で!! それ投げ出すわけにいかないでしょう!!!」
「そうそう、いくら何でも、タイミング悪いよ! さすがに私たちでも拾いきれなかった!!」
そう言いながら、またランはころころと笑いだし、またセイルもギョクもげらげら笑い出した。
私たちはここで午前中に行われた死者を送るセレモニーでそれぞれ大切な役割を担っていたのだ。特にセイルは司祭様のそばで従者のように補佐をしていたし、ギョクもランもそれぞれそのそばで聖瓶や聖杯を捧げ持っていた。私は少し離れたところで聖水を注ぐ巫女のような役割をするひとのそばについていた。
セイルは従者のようにしていたとはいえ、実質的には副司祭として儀式の大切な進行に責任ある立場だったので、それは投げ出せなかった、というのは、確かにその通りだと思う。ギョクもランも同じだ。二人ともセイル同様に儀式の進行に責任のある立場だったのだし。
が、しかし、だからと言って、それが何だと言うのだ?!
という気持ちも私の中でぶすぶすとくすぶり、不穏なのろしを上げていたのだった。
「儀式の不変続行という形を優先するから、そもそも、私みたいな(ばかな?)やつが、こうして割をくうはめになるんじゃんか。だいたいそんなの、もはや本当の儀式として意味なさないじゃないか。それは聖なる儀式というよりも見世物。出来合いの見慣れた慣習のショーじゃないか」
セイルはちょっとまじめな顔をして言った。
「フィンはわかってないんだよ。形が必要な人たちもいるし、そもそもそれは形式を重んじることを大切にしたい人たちもいるってことだし、それはそれぞれの権利と同じ様に、尊重される必要もあるんだよ。もちろん、それよりも本質を大切にしたいし、そのためなら形式にこだわらないっていうフィンのようなひとたちも同様に大切に尊重される必要もあるけどさ。でも、あの場では、フィンはそういう形式としてのセレモニーを必要としている人たちにそれを提供する側にいたんだよ」
「私たちがそれぞれの自分の役割を優先したのはそういうこと。だからこの場合はフィンが悪いの! あきらめなさい」
ちぇっ。また説教をくらってしまった。しかも今度は二人から。
倍になって返ってきちゃったよ。
ギョクは私を見てさもおかしそうに笑った。
「やぶへびだったな!! オレとしては腹の中で大爆笑だったから、フィンに軍配をあげてやってもいいぞ?」
「笑い堪えるのほんとうに大変だったね!!」
ランがそう言うと、また三人はげらげら笑い出した。
「でも、フィンの気持ちはよくわかるよ!」
「案外あれでけっこうナイスタイミングだったかもよ?」
「そうかもね!!!」
それは、死者を送るセレモニーも終盤に差し掛かるときのことだった。
死者を送るための聖別の聖水を、セレモニー参加者がひとりひとり捧げものと引き換えに司祭様から受け取るときに、私はそれまで死者のセレモニーに参加したことがなかったのもあり、普段の十倍の捧げものと引き換えになっていることに気づいて、そばにいた巫女さんに「何で今日だけ普段の十倍なの?」と尋ねたのだ。
それはこの講堂を兼ねた礼拝所に思いのほか、ひときわ高く、大きく、響き渡った。
一斉にみんながこっちを振り返って見たのが分かった。
それで私は司祭様に向かって思い切って尋ねたのだ。
そのときまで私は、司祭様が勘違いに気づいていないだけなんじゃないかと、本気で思っていたからだ。
「司祭様、なぜ聖水が今日はいつもよりもこんなに高価になっているのですか?」
司祭様は私だけではなく聴衆全てに向けて言った。
「死者が亡くなってから次の満月になるまでは、特別に祈りを捧げる必要があるからですよ」
え? それと、聖水の価値が特別高価になることって、関連しているの?
だいたい、司祭様たちを始め礼拝所で学ぶ私たちみんな毎日朝に夕に礼拝を捧げているけれど、それは私たちの仕事で、特別な祈りも、すべて私たちの日課のなかにあるものだった。
「ここにいるみなさんのなかには、この聖水を引き換えにするだけの捧げものがあれば、ひと月分の食事を十分にまかなえる方たちもいるのに?」
司祭様や裕福なひとたちのように特別に優遇された階級にいるわけではなく、厳しい環境で質素に暮らしているひとたちもそこにはたくさんいた。
そんなひとたちが、大切な死者を送るために捧げたい一心で捧げる供物と引き換えに手にする聖別の聖水は、死者の苦しみを癒し安らかに次の世界へ渡るためのはなむけなのだ。
だから、みんな、真心をかき集めるようにして、それを一心に捧げているのだ。
それは大切な儀式の一部だけれど、こうした個別の死者のためのセレモニー以外の時でも、亡くした愛する人たちのためのはなむけを、気が向いた時にそっと捧げる花のように求める人たちもいた。普段のときにその聖別の聖水を捧げものと引き換えにお渡しする仕事はこれまで幾度となく手伝ってきていたので、私はそこでの通常の価値と同じものでないのはおかしいのではないかと思ったのだった。
死者へはなむけを贈る数ある機会のなかでも、一番その死者を悼む心が切実に溢れているときに、普段の十倍の価値にするなんて、変でしょう?
逆なら分かる気がするけど。
それで尋ねたのだ。(もちろんだが)後先も考えずに。
司祭様はみるみる、真っ赤になった。
あ、カミナリ、落ちる。
それなのに、というより、だからかもしれないが、ついで(?)によけいなひとことまで言ってしまった。
「便乗値上げのぼったくりじゃん」
どうせ叱られるなら、言いたいこと言っちゃえ!! 的な(?)私のあまのじゃくさのせいだった。毒を食らわば皿までというやつだ。
結果、私は、儀式そのものから、ぽいっとつまみ出されてしまった。
出入り禁止にされたのだ。
だから、そのあとのことは、知らない。
「~~~、でっ、出て行きなさ~~~いっ!!!」
真っ赤になってぷるぷるふるえる司祭様の高いわし鼻から、怒りのあまりか? 今にも鼻水がたれそうになっているのが気になって、それしか覚えてない。
「あのあとどうなったの?」
「どうって、セイルがうまく治めたんだよ。感謝しろよ。悪態ついてる場合じゃないぞ」
ふん、とえらそうにギョクが言うので、かちんときた私は「あんたが偉そうに言うことないでしょ」
「ホントひと言よけいなんだよ、おまえは!!」
「ちょっと~~! けんかしてもいいけど、手も動かしてよね!!」
ランにびしっと言われて、私たちはにらみ合ったままそれぞれの仕事に戻った。
「でも、結果的に、あの場にいるみんなに、セイルが聖水の対価としての捧げものは本当は一定の価値が決まっているのではなく本来は個々人が自由に決めていいもので、一定の基準に従うのが楽な人もいれば、難しい人もいる、それはその人の自由裁量でいいことをちゃんと伝えることができたんだよ」
ランがそう言うと、ギョクが
「あのじいさんたち、なんでそれをみんなにちゃんと伝えないんだろうなってオレたちも思ってたから、ちょっとすかっとしたよな」
「そうだったんだ」
私がセイルに改めてお礼を言おうとしたら、セイルは「でもフィンは確かにひとことよけいだったよ!」と笑った。
「うん、ごめん」
「あのあと、司祭様は興奮のあまりか、癖になっていたぎっくり腰が運悪くというか運良くというか、ここぞってときに再発して、セイルに儀式の進行を任せるしかなくなったんだよ」
「これぞ神のみ心、恩寵とでも言うべきものだな」
ギョクが胸に手を当てて敬虔に祈るポーズで言った。
「それで私に罰を言い渡したときも、あんなにも難しい顔してたのかな」
「いや、それは、ほんとうは煮て食いたいけどさすがにそれはできないという苦渋の表情だったのだろうと思うよ」
「そうかな」
何故かそこで照れた私にセイルはつっこんだ。
「なんで照れるんだよ」
「あれ、褒められたのかと?」
「なんでだよ」
「よくやったみたいな?」
「ばか!」
ちっ、冗談の通じないやつだ。
「まったく、反省してないな!!」
カミナリがこっちからも落ちそうだったのに、私は「セイルたちには悪かったと思うけど、やったことは別に悪いと思ってないもん」と、さらに雷雲を呼ぶようなことを言ってしまった。
しかしセイルは、げらげら笑い出した。
私にこれ以上何を言ってもムダ、というのは、さすがに双子の兄なだけによく心得ているからかもしれない。
「ほら、もう、二人とも手を動かしなさいよ!」
ランの掛け声に、私たちはそれぞれの持ち場に戻ったのだった。
「こんなんで、本当に、フィンは水晶宮の巫女がつとまるのかしら?」
ランがため息まじりに言ったので、私は
「セイルの手伝いでそれをするのはいいけど、あとのことはするつもりないよ」
「あとのことって?」
「あの石頭たちの世話。支配階層やそれにくっついておこぼれにあずかろうとしているとりまきやなんかの世話もね。それに、今にこういう司祭階級制度なんてなくなるもん。それは託宣のときに何度も見ているから。そう遠くないうちに階級社会なんて壊れるもん。
支配の階層構造なんてもともとは一部のひとたちを特別に優遇させるためにあれこれ勝手な理屈をこねくりまわしたトリックでしかないんだもん。神聖なものを自分たちの専売特許みたいにしてるけど、本来は自由なものに鍵をかけて取り込んだり閉じ込めたりして、自分たちがその鍵を管理できる唯一のものみたく信じ込ませているだけで。
もともと誰のものでもないものを奪ってまるでそれが専売特許みたいにひとやいきものを好き勝手に支配してきたけど、そんな強欲で意地の悪いシステムなんてもう壊れていくもの。そんなものにしがみつけばしがみつくほど苦しむだけだって気づいていくひとたちが、そこからどんどん離れていくから。
そしてそれは、止めることなんてできない。本来自由なものだから。それが自然の法則だから。
あ、でも、それでもみんなはそれぞれの場でまた仕事をするよ。もっと自由にね」
「そんなこと、ここにいる私たちの間以外で口にしたらだめよ」
「しないよ。そこまでばかじゃないもん」
「そこまでばかだから、今日みたいに爆弾投げるんだろうが」
むっとしたけど、心底心配そうにこっちを見ていたギョクに、私は「わかったよ。気をつける」と言った。
「それで、何が見えたの?」
そう尋ねるランに答えようとして私は彼女を振り向いた。
「それは──」
★
私は、はっと目が覚めた。
机の上につっぷしたまま変な姿勢でうたた寝していたせいで、体のあちこちが痛かった。
時計を見ると、深夜2時過ぎ。
目の前に広げたノートを見て、私はほっとした。
宿題は、なんとか最後までやり遂げていた。




