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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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9/32

シルヴァって、クズ人間の具体例なんだよな

 あれから、数週間が経った。


 僕の修行は、大体Z部隊での訓練をしてからシルヴァのトレーニングルームで行われる。


 それはまた、とても多忙の日々だ。


 まだ、紹介してないことがあったね。最近の僕の習慣はというと、


 「おい、みろよ!こいつ、また泣きそうな顔面してるぞ」


 「そうっすね、シルヴァさん!」

 

 「もっとやってくださいよ、シルヴァさん!」


 シルヴァとZ部隊の魔人に虐められています。


 木に吊るし上げられ、痛めつけられるっていうね。


 魔人たちは、確かに人族のことは嫌いなのかもしれないがなぜかシルヴァとは仲良さそうにしている。


 うん、ふざけんな。


 こっちは、差別されて悔しい思いしてんのに、なにこいつも加担してんの?


 「これも、修行の一環だぞ」

 

 とシルヴァがたまに誤魔化すかのように、僕の耳元に喋りかけるのも腹が立つ。


 顔からして、完全に悪役だ。


 不敵な笑みを浮かべながら、サンドバッグのように扱ってくる。


 その痛みに耐えるのも、確かに強くなる秘訣なのかもしれない。

 

 あいつがやってることは、あながち間違っていないのかもしれない。


 あの座禅を組まされたのにも、効果は一応感じてはいる。


 それが今。


 座禅を組むように、目を瞑って息を吸って吐く。


 そうやって、僕は現実から逃れている。


 そして、目を開けるとシルヴァのトレーニングルームにいる。これで、僕の毎日の習慣が終わる。


 「おっ、やっとお目覚めかい?坊や」


 「……もう、疲れた」


 「お前がああなってるのは、魔人たちに負けるからだ。つまり、雑魚ってことよ」


 そうなのだ。


 魔人たちとは、訓練終わりに1対1の対人戦が行われる。


 それで、僕は全敗中だ。


 「まあ、大丈夫だ。お前は強い」


 こいつが励ましているつもりなら僕には、全然効いてないけど。


 「魔王様とチェンジで」

 

 「なんだと、コラ。俺がそんなに気に食わないか」


 「そうだよ」

 

 「辛い思いをしているお前に、刺激を与えようじゃないか」


 シルヴァは、偉そうにそう言った。


 辛い思いをさせられてるのは、半分お前のせいだけどな。


 「今日から、新入りがくるぞ」


 とトレーニングルームの扉から入ってきたのは、リーシュだ。それに、付き添うように魔王様が後ろにくっついている。


 「リーシュです。よろしくね、アシュ」


 リーシュは、看病していた時と同様に落ち着いた様子というか、お淑やかだ。


 「はい、じゃあリーシュはまず準備運動したら終わりでいいよ」


 シルヴァは、耳の中をほじくりながらそう言った。


 「甘すぎでしょ!」


 僕は、ついつい大きな声が出てしまった。


 「病み上がりなんだから、しょうげねえだろ」


 「あれから、結構経ってるでしょ」


 「まあ、俺もよくわかんねえけど魔王さんが言ってんのよ」


 魔王様のほうに振り向くと、


 「シルヴァは、危険だから私が超甘めにしてって言っといたの。チビスケは体ができてるけどリーシュはまだね」


 なぜか申し訳なさそうに言っている。


 確かに、それはそうかもしれないな。魔王様が鍛えてくれなきゃ死んでたね、多分。


 「魔王様、一ついいですか?」


 「ん、どうしたの」


 「僕、あの人嫌なんですけど。虐めてくるんですけど。魔王様には、いつ教えてもらえるんですか?」


 「ごめんね、私は今ちょっと忙しくて。そのうちね……あっ、呼び出されちゃった。じゃあ、また今度」


 魔王様は、ここ最近ずっと忙しそうにしている。


 だから、会う機会も少ない。


 「じゃあね」


 と魔王様が僕たちに後ろを振り向きながら手を振って走ると、扉にぶつかってしまった。


 そして、頭を抑えながら出ていった。


 「ててて……バイバイ。修行頑張って」


 大丈夫だろうか、あの魔王は。


 「アシュ、ちょっといい?」


 今度は、リーシュがこちらにくる。


 「どうしたの」


 「もう一度お礼を言わせてほしいの。この前は、私を救ってくれてありがとう」


 リーシュは、深々と頭を下げて僕にお礼をしてくれた。


 「いや、とんでもないよ。よろしくね」


 僕とリーシュは、握手を交わした。


 「私は、あなたに一生ついてくから」


 前も言ってたけど、重いな。一生ついていくなんて、そこら辺にいてくれればいいんだけどな。


 人族の友達として。


 いや、まあついてくるなら勝手にくればいいけど。


 「あのー感動シーンを邪魔するのは悪いんだがお前は修行だぞ」


 シルヴァは、横槍を入れるように僕を指差しながらそう言った。


 「ああ、そうだった……やりたくないな」


 「なに言ってんだ。リーシュを見習え、もう始めてるぞ」


 リーシュは、すでに準備運動を始めていた。


 「一、二、三、四、五、六、七、八」


 「リーシュ頑張って!」


 シルヴァは、目を輝かせながら応援している。


 なんて言えばいいのかな。


 多分、だけどシルヴァはロリコンなのかもしれない。


 「はい、じゃあお前は今から投げる剣を避けて。ヒントは集中だ」


 シルヴァがそう言うと、リーシュの応援の片手間に小さいナイフのようなものがこちらに飛んでくる。


 「やばい!来る」


 飛んできたナイフを、僕は髪に当たる寸前で間一髪避けた。


 ふざけてる……こんなの無茶に決まってるだろ。


 ナイフは、次第に数も増えてスピードも増していく。


 マジで、当たったら死ぬ。殺す気であいつはきてる。


 「リーシュ、次はちょっとランニングしてみよう!」


 シルヴァはナイフを投げているにもかかわらず、リーシュに指示まで出していた。


 どうすれば、いいんだ。


 確か、あいつが言ったのは集中……


 集中ってなんだ?


 あっ、そうだ座禅。


 座禅を思い出せ、息を吐いて吸う。


 そして、意識を集中させる。


 それだけだ。


 よし、いける!読める!避けれる。


 「魔王軍警報、魔王軍警報!Z部隊は、至急魔王城の下に集まって、危険度はレベル1」


 その魔王様の声のアナウンスが響くと同時に、僕の集中力はプチッと切れた。


 「魔王軍警報!?……って、やばい!ナイフ」


 気を取られるうちに、僕の方へと一本のナイフが目の前にくる。


 まずい、避けないと。


 でも、この至近距離じゃ。


 死ぬ!


 そして、そのナイフは僕の額にーー


 「って、あれ?痛くない」


 落ちたナイフは、ゴム製のいわゆる偽物だったらしい。


 シルヴァのやつ……騙しやがって。


 本物だったら死んでたぞ。


 「魔王軍警報だとよ、いくぞ。ちょうどいい、お前には初任務だ。リーシュは、ここで待ってろ。」


 シルヴァは、だるそうにそう言った。


 魔王軍警報……結構、頻繁に鳴るけど本当に出陣することになるなんて。


 魔王軍警報は、主にこの城が攻められた時に鳴って、レベルっていうのは相手の強さで1から10まである。まあ、つまりレベル1ってのは一番弱いってわけだな。


 「わ、わかった」


 「モタモタすんなよ、お前本当なら俺のナイフで死んでたからな」


 「あれは、しょうがないでしょ。緊急事態なんだから」


 「ほざきやがるぜ。油断は禁物って言うだろ」


 「……」


 「雑魚は、味方の支援でもしてな」


 まあ、兎にも角にも。


 今日は初出陣なんだ、頑張るしかないな。

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