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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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初めての出陣だ!

 「Z部隊、全員集まったな!本日は亜人が襲撃をかけるとの情報を魔王様が得た!相手の部隊は、数百人、ましてやレベル1だ。勝てない相手ではない」


 魔王城の城下に集められた僕たちZ部隊は、長官の命を受ける。


 「お前らがつけているZ部隊の証、そのバッジでお前らの活躍が見られる」


 そう、この魔王軍の部隊にそれぞれ配布されるバッジで計測がされているらしい。


 倒した敵の数に、位置情報、体力などなど、様々な情報を計測できる機能が付いている。


 便利なもんだよな、前世でいうスマートウォッチくらいの代物だろうか。


 「それでは、健闘を祈るぞ!出陣ーーー!!」


 「「「うおーーーーー!!!」」」


 そして、やる気満々の魔人たち。


 負けるわけがなさそうだな。


 「おい、大丈夫か?前みたいに漏らさねえような」


 シルヴァは気だるそうに腕を組んで、そう言った。


 「な、なんでそのこと!?」


 「そりゃあ、床は濡れてるし、臭えしで。掃除するこっちの身にもなれって話だぜ」


 「ごめんなさい……」


 「おしっこ、漏らしちゃうようなクソガキはここにいな」


 そう言って、シルヴァは出陣している魔人たちへついていった。


 今すぐ、あいつをぶん殴りたい気持ちではあるが、殴れる気もしないのでとりあえずついていくか。


 くぅ……漏らしたのバレてたか。


 他の魔人たちは全力で走っているようだが、そのペースに置いて行かれているやつもいる。


 こんなもんで弱るなんて、さすが一番弱いZ部隊ってだけあるな。


 まあ、僕は幸いなことに、魔王様に魔王城の周りを毎日のように走らされる訓練をしている。


 単純な基礎体力なら、自信がある。


 「ん?」


 ちょっと待てよ。


 基礎体力なら、誰にも負けないくらいだ。でも、なにも持ってない僕はなにをすればいいんだ。


 剣はそもそも、持ってないし。


 素手なんて、もってのほかだ。


 魔法も使えない僕なんて、いくら筋肉があろうとここでは肉の壁となるだけだ。


 シルヴァは一切、魔法のことについては教えてくれなかった。


 そして、走っている僕たちは、ついに亜人と衝突した。


 相手の動機なんて知ったことじゃない。どうせ魔王軍が何かやらかして恨みを買ったんだろう。


 他の魔人たちが戦う中、僕は戦場で一人なにもせずただ立ち尽くしているだけ。


 激しい戦闘が繰り広げられ、爆風や魔法が飛び交っている。


 「シルヴァは一体どこにいったんだ……なにもできないよ」


 僕が、そんなことを呟いているうちに一人の亜人がこちらへと飛んできた。


 まずい、逃げないと!


 「どうして人間がこんなところにいるんだ?」


 「……」


 「魔王軍に売られたってところだろうか。かわいそうに……」


 その猫耳をつけた男は、哀れむような顔で僕を見てくる。


 「だが、これは戦いなんだ。こっちだって、敵は敵。ごめんよ!」


 その亜人は、僕のほうへと剣を突きつけ突っ込んでくる。


 まずい、殺される。


 でも、足が動かない。


 体が震えている。


 ……怖い。


 それは初めてのことなんだ、怖いに決まってる。


 僕は、戦うことが怖いんだ。


 「誰か……」


 僕は、その一瞬、ポケットに入れた魔王様がくれた赤いスカーフを握りしめた。


 このままじゃ、あっけなく。


 「ごめんよぉぉ!」


 亜人の男は、僕に謝りながらも、剣を向けて構える。


 だがーー


 「謝るくらいなら、殺そうとしてるんじゃねえよ。このばかやろう」


 その剣を受け止めたのは、シルヴァ。


 いつも大剣を腰に下げているだけの男が、鞘に入れたままで剣で止めていた。


 「ガハッ!」


 シルヴァが、少しだけ大剣を前に押すと、その亜人は軽々と吹き飛ばされた。


 「助けてくれた……?」


 「バカ言うんじゃねえよ、クソガキ。お前が死んだら、魔王様が悲しんじまうだろ。助けたつもりなんてねえ、俺はお前に貸しを作っただけさ」


 シルヴァは、不敵な笑みを浮かべながらいつもと違う透き通るような目で僕を見た。


 「ちと、お前には戦場は早かったみたいだな。ひとまず、戻っとけ」


 僕には、その声に単なる煽りだけではなく、心配も混じっているように感じた。


 そうして、僕は素直に走って戻っていた。


 くそ、あいつに助けられるなんて。


 悔しい……でも、少しはシルヴァのことは見直さないとな。


ーーー


 無事、勝利したらしい。だが、それは単純に人数差があったからだ。


 相手の手勢は百人。それに対して、こっちは千から二千の兵がいた。それでも半分以上が負傷したらしい。


 やっぱり、Z部隊は相当弱い。


 それとも、魔人が弱くて亜人が強かったのか。その辺の因果関係は、僕にも正直わからん。


 そして、僕はZ部隊のバッジで数値を見る。


 討伐数ゼロで貢献度ゼロか……しょうがないよね。


 少し落胆しながらも、僕は自室に帰ろうとすると魔人たちが立ちはだかる。


 「おい、討伐数も貢献度ゼロだったんだってな。お前だけだぞ、そんなやつ」


 「そうですぜ、討伐数は人数差があるが貢献度は誰でも貰えるもの」


 「つまり、お前はなにもしてない」


 「「「負け犬ってことだよ!!」」」


 三人の魔人たちは、ゲラゲラと笑いながら僕にそう告げた。


 そうしているうちに、周りにも魔人たちが集まる。


 「マジで、無能」

 

 「雑兵って感じだな。荷物運んでる」


 「傑作だぜ!雑兵Aってのはどうだ!」


 「いいっすね」


 僕は、拳を強く握りしめる。


 「……ふざけーー」


 僕が、こいつらに反発しようとする前に、一人の男が介入してきた。


 「まあ、まあ落ち着けよ。こんなやつに構ってないで飲もうぜ、勝ったんだから」


 それは、シルヴァだった。


 「それも、そうだな。行こうぜみんな!今夜は宴だ宴!」


 「「「「「ウィィィーーっす」」」」」


 魔人たちは、そう言ってシルヴァと共に去って行こうとしていた。


 「じゃあな、雑兵A!お前は掃除でもしてろ」


 「ガハハハハ!!」


 くそ。


 「あいつに、また助けられたのかな?僕は」


 雑兵A……いいネーミングセンスしてやがるぜ。


 僕は、小さい拳で壁を殴り自室へと戻っていった。


 その壁には、小さな穴が空いた。


 

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