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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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リーシュ降臨

 まずいな。


 リーシュと下石を一緒にしたら、僕が転生して異世界から調査に来てることまでバレる。

 

 そして、洸平だってことも……


 ああ、でもそれはないか。


 「なんなんですか!?高菜くん空から可愛い子が降ってきちゃいましたよ」


 下石は、腰を抜かしたように地面にへたり込み、リーシュを指差す。


 「……」


 「黙らないでくださいよ。アシュとか言ってますけど誰ですか?」


 下石が何かを訴えるようにこちらを見るが、僕は見ないふりをして黙り込んだ。


 「アシュ!なんで私を置いていったの!」


 リーシュは、僕のほうを見て言ってくるが知らないふりをして下石と顔を合わせる。


 「彼女、高菜くんのこと言ってるみたいですけど……」


 「人違いじゃないかな?」


 「でも完全に高菜くんのことじゃないですか?」


 下石は、しつこく僕に迫ってくる。


 ……うん、決めた。


 「下石には眠ってもらおう!」


 「え、なになに……痛ッ!」


 彼が一瞬驚いた隙に、首へチョップを入れた。


 すると下石は、その場で気絶した。


 別にチョップに特別な意味があるわけじゃない。


 体に触れた瞬間、魔力を流し込んで気絶させただけだ。


 だって、気絶させる時ってチョップしてるじゃん。


 まあ下石には、ちょっとばかし首を痛めてもらっただけかな。


 こないだ唐揚げ奪われた仕返しも兼ねてってことで。


 「で、一体なんの用で来たの? リーシュは」


 リーシュはすでに、長い薄緑の髪を結んでいた。


 そして、殺意むき出しの目でこちらを見ている。


 やべえ……これもしかして魔王様のところに帰れないかもしれない。


 「なんでって……私に何も言わずに調査にここへと来たことよ!」


 「いや、あの時は忙しくて言えなかったんだよ」


 マジで言えない。


 実は、調査に行くって言ったらついてきそうでめんどくさいからとは言えない。


 「本当?」


 リーシュは、僕の本心を探るように目を見てくる。


 「本当だよ……今、ここで調査が忙しくて帰ることもできないしね」


 マジでマジで言えない。


 案外、ここでの生活が楽しいこともあって帰ることをサボってるなんて言えない。


 「ふーん、そう。じゃあ、どんな調査してるの?」

 

 リーシュは、屋上の端っこまで僕を追い詰める勢いで向かってくる。


 それにビビって、僕は後ろへと足を引く。


 「えっ……それは、企業秘密ってやつですよお姉さん」


 「言ってくれないの?その企業秘密とやらを」


 リーシュはついに僕を屋上の端まで追い詰め、顔を近づけてくる。


 「……言うとすれば、ここが本拠地の秘密結社(学校)に入った。そして、そこのさらに上の秘密結社をまとめる組織(生徒会)に勤めてる。えっと、あとはそこにいる男(下石)から情報収集(遊んでるだけ)をしているくらいかな?」


 まあ、見方を変えれば、秘密結社で調査してることにもなるってわけよ。


 「なるほど秘密結社ね。それじゃあ、その男はどんな情報を?」


 リーシュは、怒っていた時とは違い、今度は真面目な様子で聞いてくる。


 「うーん、この世界での病(厨二病)についてとか。秩序とか平和について聞いたね(嘘)」


 「あっそ、まあいいわ。久しぶりに会えたことだしずっと怒っててもしょうがないわね」

 

 リーシュは、我に返ったように僕に背を向けた。


 ふぅ、これで僕が死ぬ未来はなさそうだ。


 あとはこいつを家に返すだけ。


 「そうだね、久しぶりに会えて良かったね。じゃあ、そろそろお家に帰ったら?」


 「なに言ってるの?私は、あなたと一緒にここを調査するのよ」


 リーシュは、ニヤニヤとした顔でそう言う。


 「え?」


 なに一緒に調査とか言った?


 考えた限りの最悪の答えで返してきやがったよ。


 「だから調査っていうのはーー」


 「高菜くん!なにが起こってるんですか!?」


 下石が突然気絶から目覚めて、声をあげる。


 だが、


 「お前は一回黙っとけ」


 「うわっ!」


 僕は下石の頭を思いっきり叩いた。


 「痛っ!」


 「だから一回寝てて」


 そして、もう一度魔力を流し込む。


 下石は、その場に崩れ落ちた。


 叩くことに特に意味もないけどね。


 「その人は情報源なんじゃないの?」


 リーシュは、心配そうに下石のことを見る。


 「まあ、そうだけど別にいいんだよ」


 僕たちは『多分』繋がってる友人なのだから。


 「それならいいけど……じゃあともかく一緒に調査するって魔王様から許可証も取ってるから」


 リーシュは、異世界語で書かれた契約書的なものを胸ポケットから出して僕に見せる。


 なんだよ、あの細かい字は。あんなのにサインしないと調査できないの?


 『※実際に効果があるわけではありません』とか書かれてる詐欺の広告みたいなやつだわ。


 それにしてもリーシュまで調査なんて勘弁してほしいこっちだって一応、忙しい。


 課題は、三奈、学校、生徒会、父さん母さん、リーシュって多すぎるんだよ。


 帰ってZ部隊で訓練してたほうがマシだったかな?


 あんまり変わらんな。


 「リーシュ、やっぱりーー」


 僕はリーシュに話を切り出そうとするが途中でやめる。


 いや、どうせここでリーシュに調査を止めろと言っても聞かないだろうし、諦めるしかないってわけだな。


 つまり課題に『リーシュ』が加えられるってわけだな。


 ったくぅ……ふざけんじゃねえって話だよ。


 「なんでもないよ。調査頑張ろうね」


 僕は、リーシュに握手をするために右手を出す。


 そうなのだ学習しないと。リーシュにやめろと言ってやめたことなんて一度もないのだから。


 それに応じて、リーシュと握手を交わす。


 「お互いに頑張りましょう」


 「はいはい、そうですね」


 「あっ、じゃあ一回帰るよ魔王城に」


 そう言ってリーシュはすでに僕の足元に転移網を張っていった。


 「え?」


 キーンコーンカーンコーン


 昼休みのチャイムが屋上に響き渡っている。


 「いや、無理だよ。秘密結社の任務がこれから……」


 「無理無理、もう転移網張っちゃってるから」


 リーシュは、少し嬉しそうな顔でそう言った。


 「ああ、もう結局こうなった」


 そして僕は白い転移の光を見ながら現実逃避するように目を瞑った。

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