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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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3/32

日常

 朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。


 その光に起こされるように、僕は目を覚ました。


 「あとちょっとだけ寝よ……」


 そうしてまた布団を被った。


 「やっぱり二度寝は最高……うわぁ!?」


 どたんと僕はベッドから床に転げ落ちていた。


 なにかに蹴られたような気がしてベッドを覗き込んでみると、


 「なんなんだよ……」


 そこには、足を大の字に開いて気持ちよさそうにする三奈がいた。


 朝の光を受けて、三奈の黒髪が淡く輝いていた。


 すでに三奈は僕のベッドを独占し、枕を抱き枕にしている。


 「おい、僕の部屋で寝るのはやめろって言ったよな」


 僕は、三奈を床へと引きずり下ろした。


 「ちょ、なにすんの!?ここは私の部屋よ!」


 目を擦りながら三奈は当たり前のように言う。


 「違うわ!」


 ったく……もう、なんなんだこいつは。


 本気で言ってたわけじゃあるまいよな……


 そう、これが僕の『日常』だったのだ。


 朝ご飯を食べるために、下へと降りていった。


 「おはよう、洸平。朝ご飯できてるわよ」


 僕の母さんは、そう優しく微笑んだ。


 「うん……」


 そう言って食パンを食べながら、ニュースを見ていた。


 「洸平、コーヒーいる?」


 すると、三奈も下へと降りてきた。


 「うん。お願い」

 

 三奈はこちらへと近づいてきた。


 そして、僕の頬を人差し指でぐりぐりさせていた。


 「もう、お兄ちゃんったら。コーヒー飲んで格好つけないでよ」


 三奈が嫌味ったらしく言ってくる。


 「うるさい……僕はコーヒーが好きなんだよ」


 コーヒーを啜りながらイラつきながらも言った。


 生意気な妹だよ……本当。


 僕は食べ終わり、自分の部屋に戻り学校の準備をしていた。


 「よし、行くか」


 と下に行くと、妹はテレビをボーッと見ながら歯磨きをしている。


 「お兄ちゃん、もう行くの!?ちょっと待って」


 三奈は同じ高校の一年生。


 僕は三年生だ。


 「あ、星座占い十二位だ」


 三奈が身支度をしている間、僕はテレビを見ていた。


 「え、私は?」


 靴下を履きながら三奈は言った。


 「えっと十一位……」


 「今日は二人とも運が悪いね。でも、きっといいことくらいある!」


 そう言って僕と三奈は家を出た。


 「いってらっしゃい!気をつけてね二人とも」


 母さんが台所から大きな声で呼びかける。


 僕と三奈は駅に着くまで、くだらない会話をしていた。


 「お兄ちゃん、早く彼女つくりなよ〜」


 「いや、彼女って言ったってさ……」


 「お兄ちゃんは一応、イケメンに分類されると思う!」


 三奈は真剣な顔でそう言ってくる。


 別に友達だって普通にいる。


 ま、まあ一応好きな人もいる。


 「うん……そうかもね」


 素っ気ない反応をしたのを見て、三奈は


 「まさか、あの人をまだ追いかけてるの?」


 「……いや別に」


 「お兄ちゃんってやっぱり嘘が下手くそ」


 「うるさい……」


 高二の時にその人に告って、見事玉砕した。


 わけではなく、彼女と付き合うにはある条件が提示された。


 それは『私の全てを上回る』ということだ。


 「お兄ちゃんも相当、頑張ったけど相手は高嶺の花」


 そう、僕は努力をして彼女を越えるために勉強も運動もした。


 勝てるわけがない。


 『努力』が『才能』に。


 「でも、お兄ちゃんだって学年で成績は二位になってたしね」


 全てにおいて優秀な彼女を見て、僕はもう勝負する気すら失せた。


 「凡人の僕にしては頑張ったほうじゃない……」

 

 「そんな顔すんなよ!」


 と三奈は笑いながら思いっきり僕の背中を叩く。


 「いってえな……」


 だが、三奈に励まされていたのかもしれない。


 自然に僕は微笑んでいた。


 「はぁ……憂鬱」


 「どうしたのお兄ちゃん?星座占いが十二位だったのそんなに悔しかった?」


 「そう……じゃないわ!月曜日は僕が最も嫌いなんだよ」


 「そんなのみんなそうに決まってるじゃん」


 少し先を歩いている三奈が、こちらを見てニヤリと笑った。


 「なんでそんなに嬉しそうなんだ三奈……」


 「嬉しくなんてないよ」


 三奈がそう言って前を向くと、頭に桜の花びらがついているのに気づいた。


 「おい、三奈。頭に花びらついてるぞ」


 「え、本当?とって」


 「自分で取れよ……」


 「お願い!」


 しょうがなく僕は桜の花びらをとった。


 全く……世話が焼ける。


 「その花びらかして!」

 

 「なんで?」


 「いいからさ」


 渡した花びらをポケットに大事そうにしまっていた。


 「本当、わけわからないな」


 「へへーん」


 「褒めてないぞ」


 だが、その時はやってくる。


 ーー『非日常』


 横断歩道を渡ろうとした時だった。


 その横断歩道には、小さな子どもが歩いていた。


 トラックの運転手は、その子に気づいていないようだった。


 大きなトラックはブレーキを踏まず、そのまま走り去ろうとしている。


 「まずい……」


 三奈は荷物を放り捨て、迷うことなく飛び出した。


 僕は立ち尽くすことしかーー


 「そんなことしてる場合じゃねえぇぇぇ!!」


 それを追いかけるかのように僕は横断歩道へと出た。


 トラックは三奈に気づいたのか、クラクションを鳴らす。


 周囲の人々も一斉にこちらへ目を向けた。


 頼む!間に合ってくれ!


 三奈はその子を守るように抱えていた。


 ダメだ……このままじゃ、三奈が――


 「三奈!!」


 僕は二人を外へと突き飛ばした。


 ふっ、星座占いなんてクソ喰らえ。


 もう、これで大丈夫……


 そう思った瞬間、三奈と目が合った。


 「……お兄ちゃん?」


 三奈の顔が、絶望に染まっていく。


 ――キキィィィィッ!!


 鈍い衝撃音が響いた。


 そして、僕は――

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