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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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九魔王兵会議

 一人の者が手を挙げる。


 耳が横に長く伸びているのが特徴的で、人を超越するような美しさがある。


 そして、その美しさを鮮やかな青色の瞳と長い髪が引き立てていた。


 そう、エルフ族だ。


 「タコイズ殿、どうされましたか?」


 魔王がそう聞くと、


 「その『地球』についての詳しい情報とこれからどうするかを教えてください!」


 背筋を伸ばしながらハキハキとした声でタコイズは言う。


 「タコイズ殿……それを今から話すんですよ」


 魔王は気をつかうようにタコイズの耳元で小さく言った。


 すると彼女の頬が赤く染まり、肩を狭くしながら席へと着く。


 「『地球』という星の情報はまだあまり、得られていないんです。わかる情報といえばそこは人族がトップに立ってるということと魔法は使わないということです」


 魔王がそう言うと周りは、冷静で落ち着いた様子だ。


 「人族の脅威というのは魔法の発達と技術力です。それがなければ人族は、力がないに等しい。その世界でトップを取れるなんて、平和ボケした環境という考えが妥当かな」


 ヴァンパイアのマジェンタは、目を光らせながら笑顔で二本の歯を出す。


 ヴァンパイアは、吸血鬼のような種族だ。どんな種族の血でも吸うが、特に人族の血を好むらしい。


 「だが、もし向こうの人族がなにか魔法以外のもので天下を取ってる可能性もあるぞ」


 そう、長い凶器のような爪を机にトントンさせながらデーモンのチャトールは言った。


 デーモンは、とにかく悪魔のような見た目をしている。


 この世界で人族は、個の戦闘力こそ弱い。だが、洗練された武器や技術、そして圧倒的な人口を武器に、集団では猛威を振るう。

 

 それに対して、デーモンやオーガなどは個の戦闘力が高い反面、技術力と数では人族に及ばない。


 「ないに決まってるだろうが!」


 マジェンタは、机を思いっきり叩くと亀裂が入って真っ二つに割れてしまった。


 「もしかしたらの話をしてるんだ!」


 反抗してきたマジェンタに対して、チャトールも怒る。


 ヴァンパイアとデーモン同士は、昔から仲が悪いらしく因縁があるとかないとか。


 「やめたまえ。貴様ら雑魚の話など聞くまでもない」


 そう冷静な口調で言い放ったのは、ドラゴニュートのバーガンディだ。


 バーガンディは、人差し指一本で割れた机を綺麗に直す。


 「そうだぞ、ガキどもはママのところにでも帰ってな」


 シルヴァは、退屈そうに天井を見ながら言った。


 「シルヴァは口出すんじゃねえよ!」


 「そうだぞ、いくらお前が強かろうと俺たちには敵わねえ」


 マジェンタもチャトールも、見事にシルヴァの挑発に乗ってしまう。


 確かに、人族は個の戦闘力が弱い。だが、シルヴァはもはや「強い」という言葉だけでは語れない存在だった。


 「だったら、勝負するか?」


 シルヴァは、腰につけた大剣を握りしめる。


 「やめて!」


 魔王は、デコピンをするように指を構える。


 その瞬間、魔王の指先から三本の矢のようなものが生まれ、発射される。


 三本の矢は、ものすごい速さでシルヴァとマジェンタとチャトールに向かう。


 だが三人もそこらの雑魚とは違う。


 「やばい、来るぞ!」


 シルヴァはそう言うと大剣を持ち、それに反応してマジェンタとチャトールも受けの体勢をとる。


 「無意味なことを……」

 

 オーガが呟く。


 三人は、なんとかその見えない矢を抑えようと足を踏ん張る。


 だが、三人の抵抗などなかったかのように、全員が部屋の端の壁まで吹き飛ばされた。


 マジェンタとチャトールは、気絶してしまっていたがシルヴァはというと。


 腰に大剣を戻し、何事もなかったように立っていた。


 「あっぶねぇな……危機一髪だったぜ」


 どうやらシルヴァは、あの一瞬に風魔法を繰り出し相殺したらしい。


 「じゃあ、席に戻ってください。マジェンタ殿とチャトール殿はそこで少し寝ていただきます」


 魔王が、そう冷酷に言い放ち席に座る。


 「ああ、おっかねえな……」


 シルヴァは、小さい声で呟き席に着く。


 「馬鹿なことをするんじゃないシル坊」


 ドワーフのアリボリイは、シルヴァの隣の席でボソッと言った。


 アリボリイとシルヴァは、長い付き合いでこの大剣を作った張本人でもあるのだ。


 「じいさんは黙っといてくれよ……」


 「ほら、会議再開じゃぞ」


 アリボリイは、シルヴァの肩を思いっきりパーンと叩く。


 「ええっと、再開しますよ。『地球』という星を攻めることを提案したオーガ族代表のコーラルク殿。どうして提案されたんですか」


 魔王は、何も無かったかのように会議を再開する。


 オーガというのは、鬼と人を混ぜたような種族だ。鋭い角に牙を持っている。


 このコーラルクは、九魔王兵の中でも一、二を争う実力者だという。


 「それは、必ず言わないといけないことなのか?」

 

 コーラルクは、するどい目つきで魔王を睨む。


 「できれば言っていただきたいけど……」


 魔王は、その様子を見て落ち着かせるように言う。


 「すまない、ここは言わないということにさせてくれ」


 コーラルクは、軽く頭を下げる。


 この怖い見た目をしていて子供が見たら泣きそうだが、案外健気なところもあるようだった。


 「わかりましたよ。もう一つ、話さないといけないことがあります。私の命令で一名をその『地球』という星へと調査に向かわせているんです」


 コーラルクは、一瞬だけだが驚いた表情をしていた。


 「ほう、調査か」


 バーガンディは、腕を組みながら頷くように言った。


 「これから一年間、地球の調査をさせることにしたんです。だから侵略の決断は、一年後にしましょう」


 魔王がそう言うと、エルフのタコイズは必死にノートと思われるようなものにメモをしていた。


 「いいと思いますよ……」

 

 さっきからずっと座っているだけの獣人のブローズが言った。


 そうなるのも仕方がないのかもしれない。


 獣人族も人族に次ぐ、カーストの低さだ。


 周りの実力に圧倒され、萎縮しているのだろう。その中でシルヴァは居眠りをしている。これが強者の証なのか、それともただのうつけなのか。


 「では、『地球侵略』についての話はこれで終わりでいいですか?」


 魔王がそう聞くと、周りのチャトールとマジェンタ以外はコクリと頷く。


 「では、これにて九魔王兵の会議を終了します!」


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