好きな食べ物は最後に残す派です
「水たまり高菜くんは、どうして生徒会に入ったんですか?」
今日も昼休みの屋上で、僕と下石は昼ご飯を食べながら会話をしていた。
「やめてよ、その呼び方……別に落ちたくて水たまりに入ったわけじゃないんだから」
「わかってますよ。窓から飛び降りたら水たまりがあっただけですよね。でも、服は泥まみれになったらしいじゃないですか」
下石は、笑いを堪えるようにメロンパンを口の中に突っ込んだ。
あの後、全力で家に帰って泥まみれだったことを忘れて家に上がってしまい母さんと父さんにめちゃくちゃ怒られてしまったのだ。
ついでに三奈を学校に置いて逃げたこともだけど。
「はあ……」
僕は母さんが作ってくれる弁当のトマトとブロッコリーを頬張る。
嫌いな物は、後から食べる。それがご飯でのルールだ!
「で、生徒会にはなんで入ったんですか?」
「変えたいと思ったんだ!この学校をあの人と共に!(美声)」
どうだ、なかなかの演技じゃないか?
橘から口止めされてるから『強制的に書かされた』なんて言ったら多分殺される。
「まあ、でもなんにせよ生きて帰ってくることを私は願いますよ。生徒会に入りたいなんて死んでも言えませんけど。でもあの生徒会長とはご一緒したい……」
下石は、神を拝むかのように手を合わせる。
どうやら、生徒会は忙しすぎてついていけないというのが、この学校の常識らしい。
でも、本当はパシられるからだ。
橘の悪い噂は一切流れていないし、表向きはただの美人な生徒会長。
前世の時の話だが、生徒会に入るには橘の許可が必要だった。もし入ることができても、パシられるだけなのだ。
そして自分から生徒会を辞めてしまう。
つまり橘はいいサンドバッグを探していて、僕を見つけたのだ。
「本当なら辞めたいけど……」
ボソッと呟くが、下石には聞こえない。
「高菜くん、その唐揚げ美味しそうですね俺に一個ください」
下石は、二個目のチョココロネを片手に持ちながら僕の弁当を覗き込む。
その弁当の中に残ったのは、唐揚げ、白米、カップに乗ったスパゲッティ、野菜の炒め物。
中でも、唐揚げは最後に食べるために取っておくご褒美!『それを一個ください』なんて論外だ。
三つしかないのに……
「残念だな下石。唐揚げをやることはできない」
これで大人しく手を引くんだな。
「じゃあ、これと交換はどうですか?」
下石は、さりげない顔でプリンを手元に出してくる。
ふっ、笑わせてくれるな。プリンなんて、冷えてなかったら価値がないようなものじゃないか。
だが、僕がプリン好きだということをついたのは惜しいな。
「これさっき手に入ったんですよ。購買の数量限定プリン」
そのプリンの容器を触ってみると、まだ冷蔵庫から出したてのような冷たさだ。
なに!?そんなバカな……数量限定って言っても十個しかないんだぞ!?
前世で三年間で数回しか食べたことがないんだぞ。
ここでプリンを捨てるか?
そんな勿体無いことしていいのか?
「高菜くん、どうしたんですか?」
僕の耳には残念ながら下石の声は入ってこなかった。
頭の中でプリンと唐揚げが戦っているからだ。
下石は唐揚げを一個欲しいと言ったんだ。別に全部食べると言ったわけじゃない。
そうだ、唐揚げ一個とプリン一個ではイコールの関係にはならない。
逆にこの交渉はこっちが得をしてるんだ。
勝ってるんだ!唐揚げ二個と数量限定プリンで。
残念だったな下石。
「わかった……交換だ」
僕は、余裕の笑みを見せながらプリンを手にする。
いやー、得するっていいものだな。
だが!
「ありがとーございまーす」
下石は、割り箸で唐揚げを見えない速さで口に運ぶ。
「まさか!?やめろ、下石!」
そして、二つ目も三つ目も。
そんな、僕の……唐揚げ。奪われた。唐揚げが。
どうやら気づくのが遅かったようだった……最初から、こいつの作戦だったのだ。
「甘いですよ、高菜くん。この世界は弱肉強食!そのプリンもよく見てください!」
下石は、唐揚げをもぐもぐとしながらそう言う。
そう言われて見てみると、そこにあったのはただのプッ◯ンプリンだった。
「おい、ふざけんなぁぁ!」
「ははは、唐揚げ美味しく頂きましたよ。高菜くんのお母さんが作る唐揚げは絶品です!」
下石は、パンのゴミと割り箸を握りしめて屋上を逃げて行った。
そうだったんだ……この世界は弱肉強食。
いや、そんなわけないけどね。
やられちったな、まあプリンは好きってのも本当だしこのプッ◯ンプリンで我慢しますけどね。
僕は、そのプリンを食べながら弁当の中を確認する。
その中に残ったスパゲッティと白米と野菜の炒め物を、じーっと見つめる。
なぜか、このおかずたちがしょんぼりとした様子に見える。
「なんだよ、こっち見てくるなよ……しょうがねえじゃねえか主役がいなくなったんだよ」
僕は、弁当の中に一人喋りかけていた。
結局、母さんの弁当を残すわけにもいかないので最終的に美味しくいただきました。
ーーー
「いや、だから侵略する必要もないんじゃね」
いろんな種族が集まり緊張が走る中、一人の人族の男が鼻をほじりながらそう言う。
今、ここで行われてるのは九魔王兵で開かれた緊急会議だ。
九魔王兵は、エルフ、ドワーフ、人、ドラゴニュート、ヴァンパイア、オーガ、デーモン、ファールン、獣人の九つの種族の最強が集う。
その中でも、いくつかの種族は「魔人」と呼ばれる上位種へと進化する。
暗い部屋の中央には、一つだけ灯りが灯っている。
丸机を囲み、九人がお互いを睨み合っていた。
「人族代表、シルヴァ殿!発言は手を上げてからでお願いします」
九魔王兵をまとめ上げる魔王。
いつもならだらしない様子の魔王でも、今日はきちんとした姿だ。
「へいへい、わかってますよ魔王さん」
シルヴァは、この他の種族に萎縮することなく気を抜いて座っていた。
「話しましょう、次の侵略場所。『地球』という星について」
魔王は、思い切ったような表情で言った。




