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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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21/32

いい感じの友達いたわ

 「はあ……本当に勘弁してくれよ」


 僕は屋上で柵に寄りかかりながら、焼きそばパンを食べていた。


 母さんの弁当は、もう食べ切っていたので追加で並んで買った焼きそばパンだ。


 「これから、あの殺気と戦いながら生きていかないといけないんだな」


 でも、三奈の護衛で住むって約束だから、一緒に登校しないといけないんだよな。


 初日から完全に失敗だった。


 そして焼きそばパンを食べ終え、袋のゴミを握りしめる。


 「クソが」


 とそのゴミを怒りに任せて地面に叩きつけた。


 「どうしたんですか?そんなに怒って」


 屋上の端っこから、誰かの声が聞こえてくる。


 そこを見てみると、ゲーム機に有線のイヤホンをつけて遊んでる一人の生徒がいた。


 「誰?」


 「1−Dの下石です」


 その下石と名乗る男は、僕のほうを見ることもなくずっとゲームの画面だけを見つめていた。


 いや、いたの全く気づかなかったわ。


 僕の探知に引っかからないって、どんだけ影が薄いんだよ。


 「ああ、気にしないでください。俺はゲームやるだけなんで」


 そう言いながら、下石は自分の世界へと入っていった。


 「そこだよ!やれよ!うわっ、ラグい!この学校の回線クソだな!……あっ、死んだ」


 下石は、ゲームで負けたのか、イラついた様子でイヤホンを引っ張って抜き、ゲーム機を地面に、


 「クソゲーが!……いや。ダメだ、壊しちゃ」


 焼きそばパンの袋のように叩きつけようとしたが、本能的に思いとどまったらしい。


 そして、一旦ゲーム機とイヤホンを地べたに置いてこちらへと駆け寄ってくる。


 「この学校の回線は、使わないほうがいいですよ、転校生くん。わざわざジャックして使ったのに……」


 と下石は、僕の耳元でボソッと呟いた。

 

 「ジャックしたの?」


 「そうなんですよ。俺がちょっとイジっただけなんですけどね」


 下石は、長い前髪に目の下のクマがあり、引きこもりのオタクという顔をしている。


 「転校生くん、いや高菜くんのほうがいいですかね。ここは僕の聖域です。軽々しく入らないでください」


 下石の目が急に、キリッとした目に変わる。


 「あっ、それはごめん」

 

 「でも、一つ条件を飲んでくれたら許します。俺と友達になってください」


 そう言いながら、彼は少し照れたような顔をしている。


 「いや、別に構わないけど」

 

 こいつ、なんか面白いし。三奈を狙うために、友達になってくれって言ってるわけでもないんだよな。


 「本当ですか?」


 「うん」


 「ありがとう、高菜。これから、よろしくな!」


 下石は、さっきの根暗な雰囲気が消えてしまった。


 「どうしたの?急にそんな」


 「ん?だって俺、二重人格だもん」


 今、下石、二重人格とか言わなかった?


 「!?」


 下石は、屋上の扉に寄っかかりながら説明をしようとしている。


 「だからな、友達になった瞬間に別人格に変わったんだよ。どっちが本物って聞かれたら、あの暗い方かな。『陰』のほう」


 「なんで、そんなことに?いつから?」


 「落ち着けよ。理由は、厨二病の最終形態っていうか?なんか、『陰』が二重人格に憧れすぎて、本当になっちゃったみたいな!面白いよな」


 その『陰』とは反対の、今喋っている『陽』が笑いながら言った。


 厨二病って、進化するとそうなるの?


 ていうか、最終形態ってなんだよ。


 「発症したのは、中学二年生の時かな?」


 「まんま、中ニ(厨二)じゃねえか!」


 本当にいるもんなんだな……二重人格とか。


 「『陰』と『陽』は、自由に入れ替えられるから今だって変わったら……ああ、どうも。『陰』の下石です」


 真っ直ぐな視線をしていた下石は、急に猫背になり死んだ目になった。


 いや、二重人格ってそういうもんなの!?


 「でも、普段は目立ちたくないから『陰』のほうが圧倒的に多いんです」


 「なるほどね。じゃあ、なんて呼べばいいの? その二つの人格のことを」


 「「下石」」


 根暗な声と元気な声が、ちょうど重なる。


 「えーー、じゃあ下石でいいけど」


 なんか、決めるのもめんどくさいからと、僕は下石ってことにしておいた。


 「あっ、あと下石はなんで僕に殺気を出さないの?」


 「いや、殺気って……別に良いんですよ。三奈さんは、高嶺の花っていう領域じゃないですし、見てるだけで良いんですよ俺は」


 下石は、悲しげに下を向きながら言った。


 キーン、コーン、カーン、コーンーー


 昼休みの終了のチャイムが鳴った。


 「ほら、チャイム鳴りましたよ行きましょう」


 下石は、ゲーム機とイヤホンをポケットにしまって走った。


 僕は、地面に投げつけた焼きそばパンの袋のゴミを下石が行ったあとに、こっそりと魔法で燃やした。


 うん、魔法は使えるね。


 それにしても、下石。


 良いやつだな。


ーーー


 「魔王ちゃん! アシュは、どこですか!」


 リーシュは、魔王様の玉座へと無理やり押しかける。


 「いや、知らないよ……」


 魔王様は、アシュが地球へと調査に行ったことをリーシュに伝えずにいた。


 「嘘、つかないでくださいよ!」


 「ついてないってば」

 

 リーシュの怒りっぷりに、魔王様も一歩後ろに下がっていた。


 「もう、二日間くらい見てないんです!」


 「ちょっと、旅行にでも行ってるんだよ……」


 魔王様が言い訳するにも、残念ながら嘘は下手だった。


 「わかりました!もう一回探します」


 とリーシュは、剣を構えながら玉座を後にした。


 「頼む!チビスケ帰って来てくれーーー!!」


 魔王様は、そう一人で叫んだ。

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