学校かぁ……
朝、僕は当たり前のようにパンを齧っていた。
「あっ、今日星座占い七位だ。微妙だな……」
「高菜くん、パンに何かつける?」
母さんは、そう朗らかな様子で聞いてくる。
「大丈夫です」
「わかったわ」
昨日まで、僕のことを警戒しまくっていた母さんだが、今日は普段通りというか前と同じだ。
「高菜くん、三奈のこと起こしてくれないかしら?」
母さんにそう言われて、僕は二階へと上がった。
「三奈ーー!起きてくださいーー!」
僕はドアをノックしながら、三奈の部屋の前で呼びかけた。
昔だったら普通に部屋の中に入って、布団を投げ捨てて起こすところだ。
でも、今は人畜無害な『高菜翔平くん』を演じなければいけない。
急に、タメ語になったら引かれるかもしれないしな。
「翔平、まだ寝れるから大丈夫だよーー」
三奈が、寝ぼけているような返事が聞こえてくる。
「今日、僕転校するんですよ。三奈の学校に」
そう。
父さんと母さんが偽造をして、僕は三奈と同じ高校一年生として転校するのだ。
実際のところ、この家族の三人には洸平の元クラスメイトの親友という設定だから、僕は高校三年生ということになる。
でも、正直自分の年齢があやふやで把握してないのでわからないけども。
「あっ……そうじゃん!案内しなきゃだよね!」
と三奈は思いっきりドアを開けると途端に僕とドアが衝突する。
「なんなんですか!?」
「ごめん、ごめん!」
三奈は、一瞬で謝って、下へと降りていった。
「お母さん!今日の星座占い!」
「二位よ」
「微妙ね!」
階段を降りてる間にも、その騒がしい声が聞こえてくる。
「これがマイホームってやつだよね。ふぁーー」
僕は、あくびをしながら寝癖を直しながら歯磨きをする。
普通の居候なら、萎縮するだけだろうけどここは我が家だから、安心して歯を磨けるな。
歯を磨くといえば、シルヴァが歯ブラシを三十キロくらいの重さに変えられたんだよな。
そして、パンをもぐもぐとさせながら、洗面所へと三奈が向かってくる。
「歯磨きしないと、ちょっとそこどいて翔平」
僕は、横にそれる。
「三奈、昨日はあんなに大人しかったのに今日は雰囲気が違いますね」
僕からしたら、今が平常運転なんだけどね。
「ん?仲良くなれそうだからかな?」
三奈は、『なんでそんなこと聞くの?』みたいな顔をしながら言った。
二文字で表すと、『純粋』いや『鈍感』というほうが正しいのか。
僕は、歯磨きを終えて自分の部屋へと戻って行った。
「制服なんて、久しぶりに着るな……」
魔王軍では、調査の時は黒スーツだけど、それ以外は自由だったし。
その制服に袖を通していく。
うん、正直転校とかしたくない。
怖いし。
「入るよーー」
三奈は、ノックもせずドアを開けて入ってきた。
「!?」
「どうしたの、そんな驚いた顔して」
「いや、急に部屋に入ってきたから」
「見られて、まずいことでもしてたの?」
三奈は、ニマニマと笑いながら僕に近づいてきた。
マジで、いきなり警戒心解きすぎだろ。
「もう、そろそろ行かないと遅刻するよ」
「わかりましたよ。行きましょう」
と下へ降りていき、玄関で靴を履く。
「二人とも、気をつけてね。高菜くん、学校頑張って!人に騙されちゃダメだよ。あと三奈を守ってね!」
母さんは、僕にお弁当を渡しながら、心配そうに言った。
出てるよ、人間不信……
「ありがとうございます」
「ほら、翔平行くよ」
と三奈が外に出て、踵をトントンとさせながら待っていた。
「うん。それじゃあ、行ってきます!」
さて、一応調査っていう程できてるんだ、くれぐれもサボらないようにしないとね。
学校生活スタート!
ーーー
「聞いてもいいですか?三奈」
「ん?どうしたの」
「僕は、高校一年生っていう程で転校して、三奈を守るってことだよね?」
僕と三奈は、肩を並べて歩きながら会話をしている。
「表面上は、そうだけどね。本当は、お父さんとお母さんがあなたを見捨てられなかっただけよ」
「そうなんだね」
やっぱり母さんと父さんは、いい人だ。
僕のことを、悪い人じゃないと認めてくれたっぽいしね。
しばらく、歩いているとある違和感に気づいた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「道、これじゃあ遠回りじゃない?」
僕が、そう言うと三奈は答えづらそうにしていた。
「……」
どうして、なにも言わないんだ?
もしかしてだけど、ここを真っ直ぐ行くと僕がトラックに轢かれた場所に辿り着く。
それを避けるために、こっちを通ったのか?
「あっ、ナビではこっちの道にコンビニあるらしいから、そこ寄りたいから行こ……」
三奈が言い訳をするような様子を察して、事故現場を回避したのだ。
車に轢かれた僕、グロかったんだろうな。
「うん、そうだね。早く行こ!」
三奈も元気を取り戻したように言って、走って学校へと向かった。
ーーー
僕は、『1−D』と書いてある教室へと入っていった。
「みなさん、席についてください。転校生が来てくれましたよー」
そう言って、僕より小さい弱気な先生が前をいく。
その声が、聞こえていないような様子だったが『転校生』というワードを聞いた瞬間に静まり返る。
「あの……転校生くん。自己紹介、お願いします」
先生に、そう言われて僕はーー
深呼吸をする。
「僕は、高菜翔平です。好きなのは、ゲームです。お願いします」
みんな、見たか!?
このテンプレに沿ったままのおもんな〜い自己紹介。
学校生活において、最善なことは目立たないことだ!
ここでは、雑兵Aのような立場でも許してやろうじゃないか!




