いや、そんな娘が彼氏連れてき時みたいな顔するのやめてよ
「で、なんの用かね?」
父さんは、目を光らせながら言った。
頭も光ることになるなんてね……
「うちの娘は、あげられないわよ」
母さんは、ピリついた雰囲気を作り出している。
いや、違うよ母さん。
「あの、僕が来た訳はーー」
そして、僕はこれまでの『嘘』を二人へと説明した。
「お父さん、いいんじゃない?可哀想だよこの人」
三奈が悲しげな顔で言うと、父さんが、
「確かに、可哀想だな。だが、赤の他人をうちに置いておくなんて、怖いじゃないか」
父さんは困ったような顔をしている。実際に、判断がつけられないらしい。
「そうに決まってるわ!そんな子を、妹と屋根の下で過ごさせることはできません!この全身黒のパッツッパツのスーツを着てるんですよ!」
母さんは、僕のスーツを指差しながらそう言った。
やばい、着替えるの忘れてた。
確かに、こんな人いたら怖いよね。
「母さん、やめてあげなさい。彼は、これを『ファッション』ってやつだと思ってるんだ」
父さんは、母さんの耳元で囁くように言ったが、周りに丸聞こえだ。
「こんなの、変態しか着なさそうじゃないですか」
「じゃあ、そういうプレイなんだよ」
二人は、コソコソとまた話し始める。
どうしたんだよ、母さん父さん。
様子が変だぞ。
「あの、少しいいですか?」
僕の困った顔を察したかのように、三奈は耳元で囁いてきた。
「大丈夫ですけど……」
「あの二人なんですけど、ついこないだまで普通だったんですよ。でも、ある時を境に……」
「何があったんですか?」
「簡潔に言うと、お兄ちゃんの死ですね。父さんがハゲたのは、そのストレスなんです」
三奈が『ハゲ』と言ったことに、反応したかのように父さんは、
「そうだ、洸平の死は私にとって一生消えない傷だよ」
いつもは見せない、悲しそうな顔で言った。
ストレス、か……
なんだか、悪いことをしている気分だな。
「母さんは、それで人間不信に陥ってしまったんです」
三奈は、下を向きながら無理をして笑うようにこっちを見る。
そういうことだったんだ……父さんは少し変わってたけど、母さんは普通で優しい人だった。
今、「僕が洸平です!」なんて言うことは絶対できないな。
なぜかは、わかる。
僕の死で、家族を変えてしまったのだから。
「私は、別にいいんです。でも洸平は、トラックに轢かれそうになっていた三奈と小学生の子を守って亡くなった。これは誇りに思っています」
母さんは、僕の仏壇を見つめながらそう言った。
そうだったよね……
三奈を助けて、トラックに轢かれたんだよね。
「私は、大丈夫ですよ!全然元気です!」
三奈は、ペラペラの笑顔で僕に向けて言った。
嘘つくんじゃねえよ、僕の部屋で泣いてたくせに。
でも、なんかやっぱり申し訳ないな。
「で、洸平くんがうちに住むという話だがーー」
父さんは、いきなり話を切り出してきた。
頼む!頼む!頼む!
「OKだ。ただし、条件付きでな」
「父さん、条件付きってなに?」
三奈も、興味津々に聞いている。
母さんは、なにも言わないけど。
「一つ目!一年間、三奈を守ること!」
は?
「二つ目!嘘発見器で、三奈が好きではないか確かめること!」
は?
父さんは、天井に指を向けながら、自信ありげに言った。
父さん……相変わらずだな。
「それが一番いいのよ。私は、洸平の頼みって時点で住むことは構わないけど、妹に手を出さないか心配なの」
母さんは、真面目そうな顔で言った。
悪かったよ?僕も、魔王軍のスーツで来たのは。
「わかりました。条件をのみましょう」
「いいだろう。三奈、嘘発見器を持ってきなさい」
父さんが、三奈にそう言うと急いで二階に取りに行ったようだ。
そして、三奈が息を切らしながら嘘発見器を持ってくる。
ただし、おもちゃの。
「あの、これで本当に測れるんですかね?」
つい、おもちゃの嘘発見器を見てしまい僕は聞いてしまった。
「ふっ、舐めるんじゃない。この嘘発見器の力を!私がこないだやった時に『私はハゲじゃないです』と聞いたら、軽い電流とブザーが鳴ったからな」
父さんは、自分の頭を触りながら虚しげに言った。
「わかりましたよ、やりますから」
「ポリグラフを買ったほうが良かったかしら?」
母さんがそんなことを呟く。
母さん、人間不信すぎるよ。
そして、僕は嘘発見器に手を乗せる。
こういうのはランダムだし、汗とかが関係してるからな。
まあ、あんまり当てにならないんだよね。
「さて、始めるぞ!『三奈のことが好きじゃない』と言ってみろ」
そう言って父さんは、電源をつけた。
もし鳴ったとしても、僕が内部に電流を通して壊せばいいだけの話。
焦る理由はない。
「えっ、わかりましたけど。僕は三奈のことが好きじゃーー」
ブーー!
嘘発見器は、僕が言葉を言い切る前にブザーを鳴らし電流を走らせてくる。
「っ!」
なんだよそれ!ずるいじゃないか。
「母さん、合格?」
父さんは、母さんに判断を委ねてしまった。
「まあ、いいでしょう。愛があれば守れることもあります」
母さんが、そう言うと僕も三奈もキョトンとした顔をしている。
いや、なんでもありかよ。
「じゃあ、高菜くんよろしく頼むよ」
「はい!ありがとうございます!」
と僕と父さんは、握手を交わした。
なかなかちょろかったな。
「三奈さんもお母様もよろしくお願いします!」
無理やり母さんと三奈と握手をした。
「じゃあ、高菜くん。君は明日から三奈と学校に通ってもらうから」
父さんは、笑顔でそう言った。
「え?」
学校!?




