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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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16/32

二度目の地球帰還

 「また、帰ってきたな……」


 僕は、上空から地上の夜の景色を眺めながら、ポツリと呟いた。


 一回目に異世界から地球に来た時は、正直何が何だかわからなかった。


 次の調査先は、どんなところかなと思った途端に来ちゃったし。


 久しぶりに自分の家に行ったら、僕の部屋で妹が泣いてるし。


 まあ、そんなことはまずいいとして。


 「どうやって、一年の間に魔王様、いや魔王軍に侵略の価値がないことを示すかだ」


 そう言って、空中であぐらをかきながら、悩む。


 嘘をつくのは簡単なんだけど、その後にバレたら処刑確定だな。


 うーん、どうすればいいんだろ。


 難しいな……


 「うん、決めた!そんなことは、後で考えよう!」


 今、できることはそれしかない。


 「……で、どうすればいいんだ?」


 僕は、空中に一人だけ取り残されているような状況に、妙な疎外感を覚えていた。


 まずは、住居確保が最善だな。眠いし。


 野宿は、嫌だね。


 ホテル?いや、金ない。


 「あっ、あそこなら!いいこと思いついた……」


 そして、僕はある場所へと向かった。


ーーー


 数十分が経ち、着いたのは極々普通の一軒家だ。


 そこの家の前には、『渡辺』という名札とインターホンがある。


 そして、僕はそのインターホンを気軽にポチッと押す。


 ピンポーン!


 別にピンポンダッシュしたかったわけじゃない。


 ここはーー


 「僕の家なのだから」


 正確に言えば、前世の時だけどね。


 「はい、どちら様でしょうか?」


 インターホンから、若干高い女性の声が返ってくる。


 大丈夫……ちゃんと、シナリオ通りにやれば。


 「すみません、洸平くんの友達なんですけど。ちょっと、込み入った相談がありまして」


 「えっ……わかりました。伺います」


 若干、驚いたような声になる。


 無理もないけどね。


 洸平は、僕の前世の名前だから死んでるはずなんだから。


 その友達が、なんの用だって話だよ。


 急に、階段を降りてくるような音がして、こちらへと向かってきているようだ。


 「ふぅ……大丈夫。久しぶりの真正面からの再会だ、緊張なんてしたら失敗してしまう」


 その瞬間、ドアが開く。


 「すみません、遅れてしまって」


 そう頭を下げながら出てきたのはーー


 三奈だ。


 「「……」」


 僕と三奈は、お互いの顔を見つめたまま、どうしても無言になってしまった。


 「あっ、ジロジロと見てすみません。あまりにも顔がお兄ちゃんと似ていたから……」


 「いや、全然」


 「なんだか、似すぎてお兄ちゃんが蘇っちゃったのかと思いましたよ」

 

 三奈は、作ったような笑顔をするが、僕にはその裏に悲しみがあることが見えていた。


 「洸平くんとは、小学二年生の時に仲が良かったんですけど、引っ越しちゃって」


 「そうだったんですか……」


 「それから、ついこないだ両親が他界してしまったんです。僕は行く宛もなくなった時に、洸平くんが『もし、お互いになにかあったら一緒に住もうぜ!』って言われたんです」


 うん、胡散臭いね。


 「大変なんですね」


 「お願いです!この家に、一年間だけでいいので住まわせてください!」


 僕は、大きな声で言って深くお辞儀をした。


 頼む……通ってくれ。


 「……えー、お父さんとお母さんに聞かないとわからないですけど。そんな人を放っておくのも悪いですよね」


 三奈は、困ったような顔をしながらも、決めるのは結局親に託したらしい。


 いや、正解だよ、その判断。


 知らない人が急に兄の友達ですなんて、本当かどうかわからないのに。


 「では、家の中で待っててもらえますか?両親は、まだ仕事中です」


 ていうか、三奈って人前だとこんなに礼儀正しいんだ。


 僕に対しては、生意気で馬鹿にしてくるやつな印象だけど。


 「あっ、どうも」


 そう言って、僕は家の中へと入り、リビングの椅子へと座った。


 懐かしいな。この家の匂いというか、我が家っていうか。


 帰ってきたって感じするよな。


 わからないな……どんな、感情をしていれば良いのか。


 帰ってきたことを喜ぶべきなのか、それとも、ここが侵略されるかもしれないことを悲しむべきなのか。


 「……ん?仏壇?」


 リビングの少し奥の端に、立派な仏壇が置かれていた。


 あれ、僕のだよね……?


 嫌なもん、見たな。


 「あれは、お兄ちゃんの仏壇ですよ。お線香あげますか?」


 三奈は、机にお茶を置いていきながら、聞いてくる。


 自分の仏壇に線香あげるって、どういう気持ちでやればいいの?


 正直、やりたくない……縁起悪そうだし。


 「いや、後にします。話が済んだら」


 僕は、誤魔化すようにそう言った。


 「わかりました。そういえば、まだ名前聞いてませんでしたよね?私は、三奈です」


 「えっと……」


 やばい、名前考えてくるの忘れてた。


 ど、どうしよう。


 今すぐ、偽名を。


 「高菜翔平です……」


 「翔平さんですね!」


 三奈は、満面の笑顔で言った。


 高菜翔平さんって……実際に存在してそうで存在してなさそうだな。


 高菜って、野菜やん。


 台所にある、高菜を見てそれしか思い浮かばなかったわ。


 「「ただいまーー」」


 とドアが開いた途端に、大きな声が聞こえる。


 父さんと母さんが帰ってきた……


 どんな姿になってるかな。


 って、時差があったから大して経ってないのか。


 「翔平さん、両親が帰ってきましたよ」


 三奈は、出迎えるために玄関へと向かっていった。


 「誰か来ているのかね?」


 父さんの騒がしい声が、玄関から聞こえてくる。


 「まさか、三奈。彼氏なんて言わないわよね」


 母さんのいつも通りの冗談を言うような、声が聞こえてくる。


 そして、二人が玄関からリビングへと歩き、入ってくる。


 「お邪魔してます……っ!?」


 父さんと母さんが、入ってきた瞬間に驚いてしまった。


 その見た目に。


 父さんは、前まであった髪の毛がなくなって、ハゲになっている。


 母さんは、黒いサングラスに黒いマスク。


 「こちらが、両親です」


 三奈は手を、二人に向けて恥ずかしそうに出した。


 うえ!?


 どうして、そうなったんだよ……

 

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