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魔王軍の雑兵A、地球侵略を阻止します!  作者: 酒田 恵
一章

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13/32

初任務だけど緊張するな……

 あれから、何年経ったのだろうか。


 十数年かな?まあ、そんなことはどうでもいい。


 今、僕は魔王様直々に外務任務を任されました。


 「チビスケのことも、もうチビスケって呼べなくなりそうだよー。身長もこされちゃったし」


 「なに言ってるんですか、身長は伸びてもまだまだチビスケですよ」


 「外務任務の件、頼んだよ」


 外務任務、それはリーシュと僕が合同で人族の調査をしてきてほしいとのことだ。


 「リーシュのこと、ちゃんと守ってあげてね」


 「わかってますよ」


 今回は、魔王城に来てから初めて、ここを出ることになる。


 少しの恐怖と緊張感が僕には走っていた。


 「じゃあ、いってきます」


 「うん、頑張って!」


 そして、魔王様に背を向けながら手を上に上げて、玉座を後にした。


 雑兵Aなんて呼ばれるのは当たり前になってしまっている。


 これまでのことを話すと言われても特にないな。


 数十回ほど戦場に出て、シルヴァに修行をつけてもらって、リーシュとも仲良く話す。


 ただ、いつもと変わらない日常を過ごしているだけだった。


 そこでついに、魔王様に任務を任せられた。


 頑張るしかないんだよね。


ーーー


 「リーシュ、そろそろ行くぞ」


 僕は、魔王軍に配布されている黒いスーツを身に纏い、首には魔王様の赤いスカーフを巻いている。


 「うん、わかったわ」


 リーシュは僕には敵わないけど、生まれつき魔力量が多いから、結構強い。


 いつの間にか、上級魔法をポンポンと撃ってたし。


 「このスーツ、きついかも……」


 リーシュは、僕と同じくらいの年齢だ。


 その透き通るような薄緑色の長い髪。


 そして豊かな胸が、スーツによって浮き出ているのがなんというか。


 うん、アウトだね。


 シルヴァには、見せたくない。


 「じゃあ、いこっか。ここから、目的の場所ってどれくらい離れてるっけ?」


 「確か、5000リイじゃなかった?」


 リイとは、長さの単位で1キロメートルで1リイだ。


 単純だよな、この世界の単位。


 「うん、じゃあ飛んでいけばいいか」


 あっ、そういえば僕たちは、もう当たり前のように魔法で飛んでいる。


 風魔法とかで、ちょちょいのちょいだよ。


 「出発!」


 そして、僕たちは部屋のベランダから外へと出た。


ーーー


 「今回の任務は、魔王軍の評判を調査しろって話だよな」


 「そうね」


 僕とリーシュは、上空で飛びながら会話をしている。


 まあ、今回任されたのは、人族ってこともあるからだろうな。


 街中に魔人なんていたら、捕まっちゃうしね。


 でも、一つ弱点を挙げるとしたらーー


 「魔物臭だね」


 「そうね……私たちは、普段魔人たちのそばで生活しているから」


 魔物臭とは、魔人とかそういうモンスターの匂いってことだ。


 その匂いを、僕たちは身に纏っている。


 だが、その匂いは人間にはすぐ気づかれてしまう。


 「厄介なのは、裏切りものって罵られることよね。本で読んだわ」


 リーシュは、考え込むような声でそう言った。


 「うん、それが嫌なところだね」


 魔物臭は、周りの人間からしたら「私は裏切り者です」と名乗っているようなものだからね。


 「アシュ、怖がらないで。そんな目を向けてくるやつは私が殺すから」


 リーシュは、拳を握りしめながら言った。


 その感じ、本当にやりそうだな。


 「なあ、リーシュ。殺しちゃダメは、第一だ。そのために、このスーツがあるんじゃないか」


 「……魔王ちゃんは確かにそう言ってたわね」


 このリーシュは、魔王様のことを相変わらず魔王ちゃんと呼んでるらしい。


 まあ、いいけども。


 「ほら、そろそろ着くよ」


 魔法の力を使えば5000リイなんて一瞬だ。


 「じゃあ、スーツはどうする?」


 「えっと、確か自分の匂いを消すやつがあったはず」


 「あっ、あったわ」


 二人で、手首に付いた端末を操作する。


 「多分、これで魔物臭が99%消えてるはずだね」


 「透明化にはしないのね」


 「まあ、聞き込みとかできなくなるからね」


 リーシュは、頷いた。


 「ここは、魔王国から隣国のカタティア王国だ」


 そこは、夜になり明るい街の賑わいが見える。


 正直、期待もしていたが恐怖もある。


 同族や仲間たちがたくさんいるという期待と、差別されるのではないかという恐怖。 


 だが、このスーツがあれば、少なくとも魔物だと気づかれる心配はない。


 「どうするの?情報と言ってもどこがいいのかわからないわ」


 「こういうのは、酒場がいいってよく聞くぞ。冒険者たちが集まるらしい」


 「ふーん、物知りね」


 「で、早速悪いんだが酒場ってどこだ」


 リーシュは、やれやれと言わんばかりに、歩いているお爺さんに、声をかけて聞き込みをしている。


 「よし、行きましょ」


 リーシュは指を指しながらそう言った。


 本当に、頼りになる子だ。


 僕は、嬉しいよ。


 「ここは、街の中で一番大きいらしいわよ。入ってみましょ」


 ついた先には、酒の看板が立てられているなかなかに大きな店だ。


 すでに、入る前から中の騒いでる様子が窺える。


 「僕たち……まだ、未成年だよ」


 あまり、こういう所には近寄りたくないし入りたくもない。


 いかにも、荒くれ者の集まりという感じの奴らがいるんだ。


 「いいから、入るわよ」


 僕は、無理やりリーシュに連れ込まれた。


 ドアを開けた瞬間――


 騒がしかった酒場は、一瞬静まり返る。


 「あっ、バレた?」


 

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