第1章 第15話 「蜃気楼の牙」
灰都アッシュベルクへ戻った時、太陽はすでに高く昇っていた。
砂漠の朝は短い。
冷たい夜風はあっという間に消え、街を囲む城壁には白く乾いた熱がまとわりつき始めている。
北東の観測塔から戻った五人は、誰の目にも分かるほど疲れていた。
レイラの肩には砂と瓦礫の傷跡。
イリスの外套はところどころ裂け、端末の一部は焦げている。
セレスは医療バッグを抱えたまま、何度もアステルの体温を確認していた。
アステルはほとんど歩くのもやっとだった。
そしてヴェスパーは、何も言わず最後尾を歩いている。
「……まず診療所です」
セレスが言った。
「異論は認めません」
レイラはすぐ頷いた。
「今回は私も賛成」
イリスも肩をすくめる。
「私も。さすがに寝たい」
ヴェスパーは黙っていた。
セレスが振り返る。
「ヴェスパーさん」
「分かっている」
「本当に?」
「診療所へ行く」
「よろしいです」
レイラがにやりと笑う。
「完全に管理されてるな」
「合理的判断だ」
「便利な言葉だな、それ」
五人は下層街へ向かった。
白砂診療所のある路地へ近付くにつれ、街の喧騒が少しずつ遠くなる。
普段なら、朝の診療所には患者が数人待っている。
薬を求める者。
傷を診てもらう者。
金がなく、他の病院に行けない者。
しかし、その日は違った。
診療所の前に、人がいなかった。
静かすぎる。
ヴェスパーが足を止めた。
レイラもすぐに戦斧へ手を伸ばす。
「……嫌な静けさだな」
イリスが端末を取り出す。
「私が置いた見張りの通信が切れてる」
セレスの顔色が変わった。
「ミロ君は」
ヴェスパーは剣に手をかけた。
「中だ」
診療所の扉は半開きになっていた。
風で揺れている。
きい、と小さく軋む音がした。
ヴェスパーは一歩踏み出した。
「レイラ、左」
「任せろ」
「イリス、裏口」
「了解」
「セレスはアステルを」
「分かっています」
アステルは弱々しくも、自分の足で立とうとした。
「私も……」
「今は無理をするな」
ヴェスパーが言う。
アステルは少しだけ唇を噛んだ。
「……はい」
診療所の中は荒らされていた。
薬棚が倒され、包帯が床に散らばり、診察台には血の跡がある。
だが、大量ではない。
殺すためではなく、制圧するための戦闘。
イリスが奥から声を上げた。
「見張りは生きてる! 気絶してるだけ!」
セレスはすぐに駆け寄り、倒れていた傭兵の脈を確認した。
「呼吸はあります。毒ではなく、麻痺薬です」
「ミロは?」
レイラが叫ぶ。
その答えは、奥の病室から聞こえた。
小さな物音。
ヴェスパーが走る。
病室の扉を開けると、ミロはベッドの上にいた。
だが、一人ではなかった。
黒い外套の刺客が、少年の腕を掴んでいる。
首筋には黒い翼の紋章。
「動くな」
刺客が短剣をミロの喉元へ当てた。
ミロは青ざめた顔で震えている。
「ヴェスパー……さん……」
ヴェスパーは剣を抜かなかった。
ただ、静かに刺客を見る。
「その子を離せ」
「これは回収対象だ」
刺客の声は仮面で歪んでいた。
「結晶反応を持つ被験体。黒翼の所有物だ」
セレスの瞳が、これまでになく冷たくなった。
「その子は患者です」
刺客は笑った。
「医者ごっこか」
次の瞬間。
床が沈んだ。
刺客の足元だけに重圧がかかる。
アステルだった。
壁に手をつき、息を乱しながらも、瞳に青紫の光を宿している。
「……その子を、道具みたいに言わないで」
刺客の膝が崩れる。
短剣の位置がわずかに下がった。
その一瞬で十分だった。
ヴェスパーが動く。
剣は抜かない。
踏み込み、刺客の手首を掴み、短剣を叩き落とす。
同時にレイラが横から入り、戦斧の柄で刺客の腹を打ち抜いた。
刺客は壁へ叩きつけられ、動かなくなる。
セレスはすぐにミロを抱きしめるようにして確認した。
「怪我は?」
ミロは震えながら首を横に振った。
「だ、大丈夫……です」
「大丈夫ではありません。怖かったですね」
セレスの声は優しかった。
ミロは小さく頷き、涙をこぼした。
イリスが倒れた刺客の仮面を外す。
「こいつ、ただの回収役じゃない。通信具を持ってる」
「仲間がいるな」
ヴェスパーが言った。
その瞬間、外から爆発音が響いた。
診療所の窓ガラスが震える。
下層街の方角から悲鳴が上がった。
レイラが戦斧を握る。
「今度は何だよ!」
イリスが端末を確認し、顔をしかめた。
「下層街の広場。黒い翼の反応が複数。しかも……結晶化した個体がいる」
セレスはミロをベッドに寝かせ、アステルを見る。
「ここは私が守ります」
「いや」
ヴェスパーは首を振った。
「狙いはミロとアステルだ。分断させるつもりだろう」
「じゃあどうする?」
レイラが問う。
ヴェスパーは短く答えた。
「全員で出る」
セレスが即座に言った。
「ミロ君は動かせません」
「診療所ごと狙われるよりいい。イリス、隠し通路は」
「あるよ。診療所の地下倉庫から裏路地に抜けられる」
「ミロをそこへ」
セレスは迷った。
だが、すぐに頷く。
「分かりました」
アステルが壁から手を離し、ふらつきながら立つ。
「私も……行きます」
セレスが止めようとする。
だが、アステルは静かに言った。
「私を狙っているなら、私がここに残る方が危険です」
その言葉は正しかった。
セレスは苦しそうに眉を寄せたが、反論しなかった。
ヴェスパーはアステルを見る。
「戦う必要はない。自分を守れ」
アステルは小さく首を振る。
「少しだけなら、できます」
「無理はするな」
「あなたも、です」
その返しに、レイラが小さく笑った。
「いいぞ。みんなヴェスパーの扱いが上手くなってきたな」
「黙れ」
⸻
下層街の広場は、混乱していた。
屋台は倒れ、商人たちは逃げ惑い、警備隊はまだ到着していない。
広場の中央に、黒い翼の刺客たちが立っている。
その数は十数人。
だが、問題はその奥にいた。
人型の結晶兵。
旧水路で見た異形ほど巨大ではない。
しかし、全身の一部が青白い結晶に侵され、腕や脚が不自然に変形している。
三体。
そして、その背後に黒い外套の男がいた。
旧水路と観測塔で何度も現れた、あの仮面の男。
「待っていた」
男は言った。
ヴェスパーは剣を抜く。
「診療所を襲わせたのはお前か」
「必要な回収だ」
「ミロも、アステルも物じゃない」
「まだそんなことを言うか」
仮面の男は楽しげに首を傾ける。
「黒陽炎の弟子。お前こそ、最も優れた器になり得るというのに」
レイラの目が鋭くなる。
「器、器ってうるさいな。人を皿みたいに言うな」
「野蛮な比喩だ」
「黙れ。ぶっ飛ばすぞ」
イリスが端末を構えながら言う。
「周囲に民間人がいる。派手にやると巻き込む」
セレスは逃げ遅れた親子を見つけた。
「まず避難を」
「俺が前を止める」
ヴェスパーが言った。
レイラが隣に並ぶ。
「私もな」
アステルが震える手を上げる。
「広場の端に……圧をかけます。人が入らないように」
「できるか?」
「短時間なら」
セレスがすぐに支えた。
「私が補助します。無理を感じたら止めます」
アステルは頷いた。
仮面の男が手を上げる。
「回収しろ」
結晶兵が動いた。
速い。
だが、旧水路の異形ほど不安定ではない。
制御されている。
ヴェスパーはその動きを見て悟る。
黒い翼は改良している。
人間を壊しながら、兵器として完成に近付けている。
「許せない」
セレスの声が聞こえた。
静かだが、強い怒りを帯びている。
ヴェスパーは剣を構えた。
「止める」
一体目が突進してくる。
レイラが正面から受けた。
戦斧と結晶の腕が激突する。
「重いな、こいつ!」
「右から二体目!」
イリスが叫ぶ。
ヴェスパーは横へ踏み込み、二体目の腕を剣で逸らす。
そのまま足元を払う。
だが、結晶兵は倒れない。
関節が軋み、無理やり体勢を戻す。
三体目がセレスとアステルを狙う。
アステルの瞳が光った。
「来ないで……!」
重圧が落ちる。
結晶兵の足が地面へ沈む。
動きが鈍る。
そこへイリスの銃弾が撃ち込まれた。
結晶の節を狙った正確な射撃。
「セレス、核の位置分かる?」
セレスは熱診で結晶兵を見る。
「胸部中央。ですが、旧水路のものより小さいです。壊せば停止しますが、暴走の危険があります」
「またそれかよ!」
レイラが唸る。
「壊し方を間違えるな、ってことだな」
ヴェスパーは静かに言った。
「セレス、位置を教えろ」
「三体同時は危険です」
「なら一体ずつ止める」
仮面の男が笑う。
「できるかな」
その時、刺客たちが周囲へ散った。
狙いは広場の人々。
人質を取るつもりだ。
ヴェスパーの目が動く。
右に逃げ遅れた老人。
左に子ども。
背後に倒れた商人。
守る対象が多すぎる。
一人では無理だ。
だが、今は一人ではない。
「イリス!」
「任せて」
イリスが小型ドローンを放つ。
広場の上空に浮かんだドローンが音を鳴らし、逃げ道を示す。
「左の路地へ! 走って! そっちは安全!」
「レイラ!」
「分かってる!」
レイラが戦斧を地面へ叩きつけ、刺客たちの進路を塞ぐ。
石畳が割れ、砂塵が舞う。
「弱いやつに手ぇ出すな!」
「セレス!」
「避難者の治療と誘導をします」
セレスは怪我人のもとへ走り、素早く止血しながら指示を飛ばす。
「動ける人は奥の路地へ。動けない人は壁際に。頭を守ってください」
「アステル!」
アステルは息を震わせながら頷いた。
「広場の外周を……押さえます」
彼女の重圧が、逃げる人々の背後に見えない壁を作った。
刺客たちの進路だけが重くなる。
民間人の通る道は軽くなる。
細かい制御。
今のアステルには負担が大きすぎる。
だが、それでも彼女は耐えた。
「私は……道具じゃない」
彼女は小さく呟く。
「守るために、使う」
ヴェスパーはその声を聞いた。
胸の奥で、何かが静かに熱を持つ。
ガルムが教えたのは、生き残ることだった。
だが、今、自分が選んでいるのはそれだけではない。
守ること。
共に戦うこと。
仲間の力を信じること。
「行くぞ」
ヴェスパーは剣を下げた。
仮面の男が言う。
「蜃気楼か。だが、この距離、この数、この混乱で何ができる」
「見ていろ」
ヴェスパーは息を吸う。
砂漠の熱。
人の体温。
屋台の火。
砕けた石畳に残る日差し。
広場にあるすべての熱を読む。
だが、無理に集めない。
熱を奪われればドラグニルのような相手には通じない。
ならば、今は違う使い方をする。
ほんの少しずつ。
視線をずらす。
距離感を狂わせる。
敵だけが間違える世界を作る。
イリスのドローンが位置情報を送る。
セレスが核の位置を叫ぶ。
レイラが敵の動きを止める。
アステルが重圧で足場を縛る。
そして、ヴェスパーが動く。
広場に、複数のヴェスパーが現れた。
一人ではない。
五人。
十人。
だが、以前の蜃気楼とは違う。
幻影はただ敵を惑わせるだけではない。
レイラの攻撃へ敵を誘導し、イリスの射線を隠し、セレスの避難経路を守り、アステルの重圧範囲へ結晶兵を導く。
仲間のための蜃気楼。
仮面の男が初めて黙った。
「これは……」
一体目の結晶兵が幻影を追って踏み込む。
その足元にアステルの重圧。
動きが止まる。
「今!」
セレスが叫ぶ。
「胸部中央、やや右!」
ヴェスパーが懐へ入る。
刃が青く揺れる。
「蜃気楼の牙」
一閃。
核だけを断つ。
結晶兵は崩れた。
暴走はしない。
二体目がレイラへ向かう。
レイラは笑った。
「遅い!」
戦斧で結晶の腕を弾き、体勢を崩す。
イリスの銃弾が膝の結晶を砕く。
セレスの声。
「左胸下!」
ヴェスパーの幻影が三方向から迫る。
本物は真下。
低く潜り込み、刃を突き上げる。
二体目が停止する。
三体目はアステルへ向かった。
アステルの体力は限界だった。
足が震え、重圧が乱れる。
「アステル!」
セレスが支える。
結晶兵の腕が迫る。
ヴェスパーは間に合わない。
レイラも遠い。
その瞬間、アステルは目を閉じた。
怖い。
けれど、もう支配される恐怖ではない。
誰かを失う恐怖。
自分が何もできない恐怖。
だから、彼女は力を使った。
「落ちて」
重圧が一点に落ちる。
結晶兵の腕が床へ叩きつけられた。
石畳が砕ける。
だが、アステルの身体も崩れた。
セレスが抱き止める。
「もう限界です!」
「十分だ」
ヴェスパーが三体目の前に立つ。
結晶兵はまだ動く。
核は胸の奥。
硬い結晶に守られている。
ヴェスパーは剣を構えた。
その背後で、レイラが戦斧を振りかぶる。
「道、開けるぞ!」
戦斧が結晶の装甲を砕く。
イリスの弾丸が破片を弾く。
セレスの声が響く。
「中心です!」
ヴェスパーの姿が揺れる。
幻影が一つに重なる。
仲間が作った道。
守るべき命。
燃える故郷。
ガルムの声。
生きろ。
それだけでは足りない。
今は、生かす。
「蜃気楼の牙」
刃が走った。
三体目の核が断たれる。
青白い光が弾け、結晶兵は静かに崩れ落ちた。
広場に沈黙が落ちる。
逃げ惑っていた人々も、遠巻きにそれを見ていた。
レイラが息を吐く。
「終わりか?」
「まだだ」
ヴェスパーは仮面の男を見る。
仮面の男は、ゆっくりと拍手した。
「見事だ。黒陽炎とは違う形に進化したか」
「お前を逃がすつもりはない」
「それは無理だ」
男の足元に黒い術式陣が浮かぶ。
イリスが叫ぶ。
「転移術式!」
ヴェスパーが踏み込む。
だが、あと一歩届かない。
仮面の男は言った。
「北の廃坑都市跡で待つ。そこで、お前は知る」
「ガルムのことか」
「お前自身のことだ」
男の姿が薄れていく。
「そして、その牙が誰を喰らうためのものなのかもな」
術式が弾けた。
仮面の男は消えた。
残ったのは、黒い翼の紋章が刻まれた小さな結晶片だけ。
ヴェスパーはそれを拾い上げた。
冷たい。
だが、奥にわずかに黒い熱がある。
黒陽炎の残滓に似た、嫌な熱。
「逃げられたな」
レイラが隣に来る。
「ああ」
「でも、守れた」
ヴェスパーは広場を見た。
怪我人はいる。
壊れた屋台もある。
だが、死者はいない。
セレスが治療に走り、イリスが警備隊を呼び、アステルは倒れそうになりながらも座っている。
ミロも診療所の地下で無事だ。
守れた。
その事実が、ヴェスパーの胸に静かに残った。
「……そうだな」
レイラが笑った。
「珍しく素直だ」
「うるさい」
⸻
夕暮れ。
下層街の広場は、まだ片付けの途中だった。
警備隊が黒い翼の痕跡を調べ、商人たちは壊れた屋台を直し、セレスは怪我人の処置を終えてようやく診療所へ戻った。
アステルは診療所のベッドに座っていた。
顔色は悪い。
だが、目はしっかりしている。
「私……残ってもいいんでしょうか」
彼女は小さく言った。
レイラが肉入りのスープをかき込みながら答える。
「いいに決まってるだろ」
イリスも頷く。
「むしろ今、一人にする方が危ないしね」
セレスは薬を並べながら言う。
「治療が必要です。最低でもしばらくは診療所にいてください」
アステルはヴェスパーを見た。
「あなたは……どう思いますか」
ヴェスパーは少しだけ考えた。
「自分で決めろ」
アステルは不安そうに目を伏せた。
「私は、決めるのが苦手です」
「なら練習すればいい」
「練習……」
「ああ」
ヴェスパーは静かに言った。
「最初は、明日の朝に何を食べるかでもいい」
レイラが即座に口を挟む。
「肉だな」
セレスが淡々と返す。
「消化に良いものです」
イリスが笑う。
「じゃあ、お粥に肉を少し」
レイラが真剣に頷いた。
「それなら許す」
アステルはそのやり取りを見て、ほんの少しだけ笑った。
「では……それにします」
それは小さな選択だった。
けれど、アステルにとっては初めて自分で選んだ一歩だった。
ヴェスパーは窓の外を見た。
灰都の空が赤く染まっている。
黒い翼は逃げた。
ドラグニルにも届かなかった。
ガルムの真実もまだ遠い。
だが、今日、守れたものがある。
仲間が増えた。
そして、自分の蜃気楼は変わった。
一人で生き残るための牙ではなく。
誰かと共に生きるための牙へ。
ヴェスパーは静かに剣の柄に触れた。
「北の廃坑都市跡へ行く」
その言葉に、全員の視線が向く。
「ただし、準備をしてからだ」
レイラがにやりと笑う。
「お、成長したな」
イリスが頷く。
「それなら賛成」
セレスも言う。
「治療計画を組みます」
アステルは少し迷い、それから小さく手を握った。
「私も……行きます」
ヴェスパーは彼女を見る。
「危険だぞ」
「知っています」
「無理に来る必要はない」
「無理では、ありません」
アステルは静かに言った。
「あなたたちと行けば……私の術式が、何のためにあるのか分かる気がします」
部屋に、穏やかな沈黙が落ちた。
レイラが笑う。
「決まりだな」
イリスが飴を噛み砕く。
「五人旅か。騒がしくなりそう」
セレスが薬瓶を棚に戻しながら言った。
「まず全員、休養です」
ヴェスパーは小さく息を吐く。
「分かった」
レイラが驚いた顔をする。
「今、素直に分かったって言ったか?」
イリスも目を丸くする。
「記録しておけばよかった」
セレスは真顔で頷いた。
「良い傾向です」
アステルはまた小さく笑った。
その笑みを見て、ヴェスパーはほんの少しだけ目を細めた。
灰都の夜が始まる。
黒い翼の影はまだ消えない。
ガルムの謎も、ドラグニルの脅威も、北の廃坑都市跡で待っている。
だが、今はこの診療所に灯る小さな明かりがあった。
仲間の声があった。
明日を選ぶ理由があった。
燃える故郷から始まった道は、灰の中を進み続ける。
その先に何が待っていようと。
ヴェスパーはもう、一人ではない。




