第8話 謀反
レオンハルト・ウィルフレッド・シュタインマルクは8歳の少年で、シュタインマルク王国国王の一人息子だった。
国民や貴族にはにはレオンハルト王子という名で認識されていたが、母や親しい者からはミドルネームから取ってウィルと呼ばれていた。
王である父と王弟である叔父のエドウィンの関係があまり良くなく、2人のそれぞれの派閥間でしばしばトラブルが発生していることは幼いウィルも知っていた。
兄弟なんだから仲良くすればいいのに・・・。
あの時までは、そんな軽い気持ちでしか捉えていなかった。
※
ある日の深夜、母のマリーベルがウィルの寝室に飛び込んできた。
「ウィル!お父さまがエドウィンに殺されたわ。あなたも逃げて!」
ぐっすり眠っていたウィルは母が夢でも見たのかとクスっと笑った。
「母上。何の冗談を・・・」
「冗談じゃないの!早く起きて!」
その切羽詰まった口調につられ母を見ると、いつも美しい母は髪を振り乱し、夜着には血がついていた。
母の後ろにはウィルの剣の師匠を務めているクロード・フォレス将軍の姿もあった。
クロードは母マリーベルの実兄で、公爵位も持っている。
流石にただ事ではないと感じ、慌てて起き上がり母とクロードに続いて部屋を出た。
人気のない裏の通路から城の裏手に抜け、飾り気のない地味な馬車に乗せられた。
「殿下。町に潜入しますので、これに着替えて下さい。」
クロードに町民の子供が着るような質素な子供服を渡され、ウィルは言われるがままそれに着替えた。
「父上は殺されたのか?」
ウィルはクロードに尋ねた。
「陛下は寝込みを襲われたようです。マリーベルはたまたま公爵家の用事で相談事が有り私と一緒にいましたので、難を逃れることが出来ました。まさか、エドウィン殿下がこの様な暴挙に出るとは予想しておらず、碌な抵抗も出来ないまま・・・」
「そんな・・・」
泣きそうな顔でうつむいたウィルにクロードが追い打ちをかけた。
「陛下亡き後、エドウィン殿下は王位継承権1位のあなたを必ず殺しに来るでしょう。」
父が殺されたことで頭がいっぱいだったが、確かにそうだ。
青ざめたウィルを励ますようにクロードは優しく声をかけてきた。
「王都の外れに隠れ家があります。まずは、そこでこちらの態勢を整えましょう。不意打ちで今回はやられましたが、しっかり準備をすれば我々は負けません。」
その言葉にウィルは頷いた。
馬車が郊外まで来た時、急に大きく傾いた。
「どうした?」
クロードが小窓から御者に尋ねた。
「敵襲です!」
その言葉にクロードは剣を握った。
「殿下は馬車の中にいて下さい。マリーベル、俺が外に出たら中から鍵をかけてくれ。」
「お兄さま、気を付けて・・・」
不安そうなマリーベルとウィルにクロードは笑顔で頷いた後、馬車の外へ出て行った。




