第7話 森での一人暮らし
それで、私こんなおばあちゃんになっちゃったのね・・・。
鏡に映るしわしわの顔を見て、リーナは思った。
栗色だった髪も白くなり、艶もなくパサパサになっている。
先生ったら、有能な魔女なのにドジなんだから・・・
砂になるなら、リーナも砂にして一緒に連れて行って欲しかった。
こんな中途半端な状態で残されたら生き地獄じゃない!
「はあー」
深くため息をつき、もう一度鏡を見た。
目も霞んでくっきり見えないけど、90歳くらいかなあ・・・?
あと何年生きられるかわからないけど、先生が一生懸命助けてくれた命だし・・・。
必死の形相でリーナに覆いかぶさってきたマリーンの表情が思い出された。
「リーナ!危ない!」
マリーンの最期の言葉が耳に蘇る。
豊満な胸の感触も・・・。
先生ったら、出会った日も最期の日も人のことを胸で押し殺そうとして・・・。
泣きそうになる自分を、マリーンとの記憶を呼び起こすことで奮い立たせた。
「・・・先生のお墓を作ってあげなきゃ。」
床に散らばった砂をかき集め布袋に収めた。
マリーンがずっとはめていた金色の指輪だけ形見に残し、身に付けていた装飾品も袋に入れた。
家の横の日当たりのいい場所に穴を掘り、袋を入れ土をかけた。
墓標には『偉大な森の魔女マリーン・モロー ここに眠る』と記した。
”老い”と共にマリーンの記憶と魔女の力の一部を受け継いだリーナは、前より動かなくなった身体を魔法で補いながら、なんとか日常生活を送っていた。
食べ物は畑や森の恵みで賄った。
他に必要な物はシスター・エリーに連絡を取り、月に一度届けてもらった。
そうして、師匠の墓を守りながら迫りくる死期をゆっくりと待っていた。
そんな生活が半年ほど続いたある日、リーナは懐かしいマリーンの魔力と森の結界が破られる衝撃を感じた。
「何かしら?」
もしかしてマリーンがどこかで生きていて戻ってきたのかもしれない。
あり得ないと思いつつ、痛む腰を叱咤し結界が破られた方角へと急いだ。
そこには7,8歳の少年が倒れていた。
粗末な町民服を着ており、所々に血の跡が付いている。
頬はぶたれたのか右側が赤く腫れていた。
厄介ごとの予感しかしなかったが、ボロボロの子供を見てリーナは昔の自分を思い出し唇を噛みしめたのだった。




