第5話 マリーンとの再会
マリーンの言葉にデイビッドはニヤッと笑った。
「じゃあ、この話はお終いだな。さあ、早く帰ってくれ。」
「虐待の証拠はないけど、あなたが代理保護者として不適格だという証拠はあるわ。デイビッド・ケーレス。」
「なにい!」
デイビッドはマリーンを睨みつけた。
「南都ニーズでの強盗殺人事件で、まだ容疑者が捕まってない事件があったわね。」
それを聞いてデイビッドは顔色を変えた。
「このアマ!」
すっかりいい人の仮面を脱ぎ捨て、ガラの悪いチンピラのような口調でデイビッドはマリーンに掴みかかろうとした。
あの優しいお姉さんが叔父さんに殴られる!
奥の台所から顔を覗かせ、途中から様子を見ていたリーナはギュッと目をつぶった。
ドンッ
大きな音がして、リーナが恐る恐る目を開けるとデイビッドが床に倒れ込んでいた。
「あなた。せっかく本名を名乗ってあげたのに、私に掴みかかろうとするなんていい度胸ね。」
その言葉にデイビッドはハッとした。
マリーン・モロー・・・
「森の魔女・・・」
「今ごろ気付いたの?」
マリンは呆れたような表情を浮かべると”認識阻害解除”とつぶやき、指をパチンと鳴らした。
すると、いきなり家の前に3人の警備隊員が現れた。
「ニーズの強盗殺人事件の容疑者よ。あとは頼むわね。」
暴れるデイビッドを押さえつけ、警備隊員たちは彼を縛り上げ、外に停めていた馬車に乗せ去って行った。
叔父がいなくなり、いきなり家は静かになった。
「あなた達もここから出る用意をした方がいいんじゃない?明日にはきっと噂になってるわよ。ここの主人が強盗殺人事件の容疑者として捕まったって。」
スカリーとスージーは青ざめたまま動けなかった。
「さて、リーナ。話は聞いていたでしょう?私の所にくるかどうかはあなたが決めなさい。」
マリーンの言葉にリーナは顔をくしゃくしゃにして、涙を流した。
「お姉さんの所に行きたい・・・」
「決まりね。」
マリーンはリーナをギュウっと抱きしめた。
く、苦しい・・・
マリーンの豊満な胸に顔を埋められ呼吸が苦しくなったものの、1年ぶりに心は晴れやかだった。
※
その後のマリーンとの生活は明るく笑いにあふれ、幸せなものだった。
リーナにも魔力が少しあったらしく、魔女の弟子としての修行の他、掃除、洗濯、食事の支度・・・。
基本的にはやっていることはデイビッドの家にいた時と変わりない。
しかし。
”このご飯美味しい~”
”洗濯物にしわがない!”
”家がこんなに綺麗になったの初めてだわ。ありがとう!”
有能なのに家事力の低かったマリーンは、ことあるごとにリーナの仕事を褒め、喜んでくれた。
こうして傷ついたリーナの心は癒され、穏やかに6年の月日が流れた。




