第49話 二国間会議
ざわめきが治まらない中、一番初めに我に返ったのはローランドだった。
「フィリーナ嬢。申し訳なかった。」
そういえば、公衆の面前で突然プロポーズされた直後だった。
「いいえ。ケイオス様に言えと強要されたんですよね。ローランド殿下の本心でないことは分かっています。」
ローランドは本当にすまなさそうに頭を下げ、ウィルにも詫びを入れた。
ウィルは謝罪を受け入れつつ、まだ怒りが収まらないのか不機嫌そうだった。
「オストールはあのエルフに甘すぎるのではないですか?」
ウィルの言葉にローランドはバツが悪そうに頷いた。
「そうですね。言うべき時はこちらの意見をもっとはっきりお伝えした方がいいのかもしれませんね。フィリーナ嬢を見て、そう思いました。」
「変わってらっしゃるけど、言えば道理のわからない方ではないですよ。」
これはリーナの本心だ。
「まあ、彼にとってあなたが特別な存在だということは大きいと思います。私が同じ態度を取って許されるかは分かりません。」
ローランドの言葉にギリアンも後ろで頷いている。
「今回のお詫びの気持ちも込めて、魔鉱石を融通するという件は、そのまま話を進めていきましょう。」
「本当ですか?」
ローランドとの結婚がなくなれば、その話も無くなるだろうと思っていた。
「ええ、あなたがこの国の王妃として彼の機嫌を取って下さる限り、オストールはシュタインマルクを最重要友好国家として扱わせていただきます。」
ローランドはシュタインマルク滞在中に、無名の伯爵令嬢から突然王妃に選ばれたリーナの微妙な立場について聞くことがあったのだろう。
リーナがいることで魔鉱石の取引を融通するとオストールが宣言してくれれば、彼女の地位は盤石だ。
「ローランド皇子。感謝する。」
ウィルがにこやかにローランドに右手を差し出した。
笑顔で握手を交わす2人に、周囲は再びざわついた。
”あの文官がエルフだったとは・・・。”
”皇太子が敬語で話されてたぞ。”
”彼の接待はずっとラチェット伯爵令嬢がされていたんじゃ・・・。”
”最重要友好国家・・・。”
"魔鉱石の取引・・・”
驚きの声、魔鉱石の取引に関する喜びの声、そしてリーナを賞賛する声・・・。
※
そして会議から3日後。
「ケイオスの相手は大変だと思いますが、彼がこちらに来られた折にはよろしくお願い致します。」
ローランドは、そう言い残してシュタインマルクを去って行ったのだった。




