第44話 森の小屋にて
「こちらがリビングですね。」
リーナはまずオストールからの客人3人に椅子を勧めた。
元々2人で暮らしていた家なので、客用の椅子を含めても4脚しかない。
この中で自分は一番若く身分が下なので立っておこうと思い、残りの椅子をウィルに勧めた。
「リーナが座ってくれ、女性を立たせるなんて・・・」
ウィルの言葉にギリアンが立ち上がった。
「レオンハルト陛下がこちらをお使い下さい。私はドアの辺りに立っておきますので。」
椅子の譲り合いにリーナは慌ててギリアンを引き留めた。
「先生の道具部屋に何か腰かけられる物があったと思うので持ってきます。」
そう言うとリーナは奥の部屋から古びた足台を運んできた。
丁度椅子になりそうなくらいの高さがあり、リーナはそれに布を掛け腰かけた。
「これで全員座れましたね。」
リーナは満足そうにそう言うと、持参した飲み物と菓子をテーブルに広げた。
その後、お菓子を摘まみつつ、マリーンとリーナの出会いやリーナとウィルの出会いなどをローランドに聞かれるまま答えていった。
それがひと段落した頃、リーナがポンっと手を打った。
「そうだ。さっき足台を持ってきた部屋は先生の魔道具部屋なんですけど、ケイオス様、一度中を見ていただけませんか?私が分かる範囲で仕分けしたんですが、ショーン様に伺ってもよく分らないものも多くて、手つかずの物が結構あるんです。」
「ほう?どれどれ見てやろう。」
「ケイオス様と奥の部屋に行ってくるので、ゆっくりされて下さいね。」
リーナはペコッと頭を下げケイオスを連れて奥の部屋へ移動した。
ケイオスは一つ一つ手に取り魔道具を見ていった。
「ああ、懐かしいな。これは150年程前に私があげたものだな。」
そんなつぶやきを漏らしつつ感慨深そうに道具を撫でている。
「よく分からないものはケイオス様から頂いた物が多いですね。」
「まあ、そのほとんどは私が父から譲り受けたエルフの里の一品ものだからな。」
「そんな貴重な品だったらご自身で使おうと思わなかったんですか?」
先生にあげても、この部屋にごちゃごちゃと置かれていただけで使っていたのかも怪しいのに。
整理が下手なマリーンによって雑然と物が置かれていた部屋の中を見回し、リーナがそんなことを考えていると、ケイオスがフワッと笑った。
「マリーンの喜ぶ顔が見たかったんだ。」
ああ、この人は本当に先生のことが好きだったのね。
リーナはしみじみとそう思った。
マリーンの方はケイオスを男性として愛していたわけではなかったかもしれないが、大切に思っていたのは間違いないはずだ。
愛する元恋人や家族、友人がみんな亡くなってからも先生が生き続けたのは、きっとこのハーフエルフの友人のためだったんだわ。
もはや本人に聞くことは出来ないが、引き継いだ記憶の一部や生前の彼女の言動から考えたらおそらくリーナの予想は当たっているだろう。
「ここに置いておいても使いこなせる者がいませんし、そんな貴重な物ならケイオス様がオストールに持って帰られますか?」
リーナの問いにケイオスは考え込んだ。
「そうだな、そうするか・・・。いや、だが、使い方を教えればリーナでも使える物もあるし、私が直々に伝授してやろう。」
「・・・」
私、今世では魔術師として生きてるわけじゃないんだけどな・・・。
そう思ったが、満面の笑みでケイオスにそう言われると反論できるはずもなく、引きつりながら頷いたのだった。




