第38話 ケイオス達との対談
もの凄い殺気がリーナを襲い、そのままテーブルを乗り越え彼女に掴みかかろうとしたのを見て、ローランドが慌ててケイオスの腕を掴んだ。
相手はこの国の国王の婚約者だ。
「ケイオス。落ち着いてください。令嬢が怯えています。」
ローランドに諫められ、ケイオスは大きく息を吐き再びソファに腰かけた。
「説明しろ。まだ容量はあったはずだ。」
リーナはケイオスの言葉が示す意図を正確に読み取った。
「壺が割れたのです。」
「なんだと!」
ここにいるシュタインマルクの者たちはリーナの事情をあらかた知っているため、この会話からおおよその意味は理解できた。
しかし、ケイオス以外の帝国からの2人には意味不明な内容だった。
「ケイオス。申し訳ないが2人は何の話をしているんですか?」
ローランドの問いにはリーナが答えた。
「森の魔女。私の師匠も200余年を生きる魔女でしたが、自分の”老い”を魔法の壺に閉じ込めることで不老不死を保っていたのです。」
「そんなことが可能なのですか?」
ローランドが目を見開いた。
そのような禁断の魔術の存在が明らかになれば、それを求める権力者などが湧いて出るだろう。
後ろに立つギリアンもかなり驚いている。
「なぜ壺が壊れたんだ?」
リーナは当時の状況をかいつまんで説明した。
ケイオスは強張った表情で尋ねてきた。
「”老い”に襲われてマリーンはどうなった?」
「身体は骨も残さず全て砂になりました。」
「ああ・・・」
ケイオスは両手で顔を覆いマリーンの死を嘆いている。
私以外に、先生の死をこんなに悲しんでくれる人がいたのね。
リーナは不思議な気持ちで目の前のケイオスを見つめた。
「マリーンが亡くなったのはいつ頃だ?」
顔を覆ったまま、ケイオスは絞り出すように聞いてきた。
「17年前です。」
リーナの返答にケイオスを含めた帝国からの3人が訝し気な表情になった。
この少女も不老不死なのか?
「17年前?あなたはおいくつなんですか?」
3人の疑問を代表してローランドが尋ねてきた。
「16歳です。」
リーナの返答にケイオスは手を顔から放し、真顔で尋ねた。
「そこの事情も話せ。」
「先生が”老い”に襲われた時、私は16歳でした。先生の身体に吸収しきれなかった”老い”が私に襲い掛かり、私は90歳を超えるような老人になってしまいました。そして先生が亡くなった1年後、私も老衰で亡くなったのです。」
さすがのケイオスも予想だにしなかった内容に唖然としている。
「なぜ、お前は生きている?」
「死んだ直後、前世の記憶を持ったままこの国の貴族の娘に生まれ変わったのです。」
「前世の記憶?」
ケイオスが不思議そうにつぶやいた。




