第30話 国王のプロポーズ
リーナは訳が分からず、目を白黒させた。
「えっと?あの?」
「リーナ。父上が許可してくれたら私と結婚してくれると言っただろう?」
目の前の国王にそう言われ、リーナはハッとした。
「え?あっ、えっ、ウィル?ああ、それは言ったけど・・・」
動揺するリーナから衆人の中で望む返答を得て、ウィルはニッコリ笑った。
「ラチェット伯!」
ウィルの呼び声と共に、国王の側近のような人に背を押され父であるラチェット伯爵がウィルの前に連れてこられた。
父のエドワードは可哀想なくらい青ざめ震えていた。
「ラチェット伯。私が以前ご息女に求婚した時、父上が許可してくれるなら私と結婚してもいいと返事を貰ったんだ。あなたは私とフィリーナ嬢との結婚を許可してくれるだろうか?」
国王からそう言われ、父に否といえるはずもない。
コクコク頷くラチェット伯を見て、ウィルは満面の笑みを浮かべた。
その時、一人の中年男性がウィルの前に現れた。
「お待ちください!」
「なんだ?ジェラルディ公爵。」
ウィルは不機嫌そうに男性の名前を呼んだ。
「陛下、その女性はいったい?我が家のアイシャとの婚約は秒読みだったはずです。」
「アイシャは有力候補として名前が挙がっていただけで、特に話が進んでいたわけではないだろう?」
「ラチェット伯爵令嬢の名前など候補者として聞いたことがありません!」
ジェラルディ公爵も必死で反論してきた。
「それはそうだろう。私が身分を隠して城外で行動していた時に怪我を負って困っていたところを彼女に助けてもらったのだ。優しい彼女に私が一目ぼれしたのだからな。」
会場がざわついた。
若い女性からは、なんてロマンチックな出会いなの、という声が聞こえてきた。
「後から彼女が王妃に迎えることが出来る身分だと知って、ぜひ将来を共にして欲しいと願ったのだよ。」
ウィルのこの言葉を聞いて、銀髪の側近らしい男性が拍手をしたのを皮切りに会場全体に大きな拍手が沸き起こった。
嘘でしょう?
茫然とするリーナを引き寄せ、ウィルは大きな声で宣言した。
「今日の良き日をもって、私とフィリーナ・ラチェット伯爵令嬢との婚約が結ばれた。皆の者も祝福してくれ!」
拍手と歓声がさらに盛大なものとなり、やっと将来の伴侶を決めた国王の婚約を城中の者が祝ったのであった。




