第31話 国王のプロポーズ
式典の後、リーナと父のエドワードは別室に連れて行かれた。
未だに茫然とするリーナに、エドワードも茫然としながら声をかけてきた。
「フィリー。いつ陛下に求婚されたんだ?そんな話は聞いてないぞ。」
「私もウィルが国王だったなんてさっき知ったばかりで、なにがなんだか・・・。」
「本当に王妃になるのか?」
エドワードが不安そうに尋ねてきた。
リーナはこの国の貴族の女性の美徳とされるしとやかさや夫を立てるような控えめさを持ち合わせていない。
父もそれを分かっているのだろう。
「えっ?今からでもお断り出来るのですか?」
リーナが父に尋ねた瞬間、別室の扉が開かれた。
「そんなわけないだろう。あれだけの観衆の中で発表されたんだぞ。」
礼服を着たままのウィルが入ってきた。
「リーナは俺と結婚したくないのか?」
ウィルが不満そうに尋ねてきた。
「そういうわけじゃないけど、こんなだまし討ちみたいに・・・。どうして前もって身分を教えてくれなかったの?」
「俺は国王だ。王妃になってくれとプロポーズして、リーナは受けてくれたか?」
その言葉にリーナは、はて?と考えた。
「受けてないわね。」
きっぱりと答えたリーナにウィルはハハハと可笑しそうに笑った。
国王と友達のように気安く会話をするリーナに、隣に座る父が目を剥いていた。
ああ、これは帰ったらお説教ね・・・
父の視線を受けリーナはうんざりした。
「俺があらかじめ身分を名乗ったらリーナが離れていくと思ったんだ。絶対逃したくなかったからリーナが断れない状況を作って受けてもらおうと考えたわけだ。」
絶対逃したくないという熱烈な告白を嬉しく思う気持ちと、よくも騙してくれたなという腹立たしい気持ちがせめぎ合った。
「・・・ふう。」
リーナは息をはいた。
なんだかんだ言って、リーナはウィルのことが好きなのだ。
「わかったわ。私も覚悟を決めるわ。」
「リーナ!」
ウィルは満面の笑みを浮かべ、リーナを抱きしめた。
おでこにキスされ、その唇が目元に下がってくる。
さらに下に来そうな雰囲気を察知し、リーナは両手でウィルの唇を押さえた。
横には父がいるのだ。
「ウィル!!」
「ああ、すまない。嬉しくて。」
こうしてこの日、リーナは正式にシュタインマルク国王の婚約者に内定したのだった。




