第21話 リーナの婚約?
人が心配していることなど気付きもせず、帰ってきたウィルは上機嫌でリーナの話をしていた。
「次会う時には、昔よく作ってくれたネギ入りの卵焼きを作ってもらう約束をしたんだ。」
少し遅めの青春を堪能している様子の主を見て、ルーファスはホッとした半面、気の抜けた内容にムッとしながら話を聞いていた。
執務後ルーファスは、まず魔法の目で見張りを頼んでおいた魔術師長の元を訪れた。
「お二人で楽しそうにお菓子をつまんでおしゃべりしてただけですよ。結構な美少女で陛下はデレデレでしたし、お似合いなんじゃないですか。しかし、どうも森の魔女が過去に出入りを許可した人物は私の結界に引っかからないみたいなんですよ。やはり森の魔女って凄い方だったんですねえ。というわけで、あのお嬢さん、きっと本物ですよ。」
いつも軽いノリの魔術師長は軽ーい口調でそう述べた。
次に訪れた将軍にも似たようなことを言われた。
「森に配置した兵士によると礼儀正しいいいお嬢さんだったらしいぞ。森に入る時は”こんにちは。お勤めご苦労様です”、帰る時には”さようなら。ありがとうございました”と言って笑顔で帰っていったそうだ。」
フォレス将軍はこう報告した後、ルーファスを諭した。
「ショーンの結界が作動しなかったということは本物なんだろう。陛下は激務で疲れも溜まっているし、息抜きも必要だ。お前も暖かい目で見守ってやれ。」
※
こうして周囲の者たちの理解も得ることができ、ウィルとリーナの月一回の逢瀬は順調に続いていった。
そんな2人の交流も6回目が過ぎた頃、ルーファスが突然尋ねてきた。
「で、陛下。今後、フィリーナ嬢とはどうされるおつもりなんですか?」
「どうとは?」
「今年16歳になられたということは、次の新年の成人の儀に出られるでしょう?普通、貴族の令嬢は成人の儀を終えると婚約者を探し始め、婚約を結ぶじゃないですか。」
ルーファスの言葉にウィルは目が飛び出る程驚いた。
「リーナが婚約?」
可愛らしい印象のリーナはまだまだ少女といった様子だったし、そういったことはウィルの脳裏に浮かばなかったのだ。
「思いつきもしなかったが、年齢的には確かにそうだな・・・」
ショックを受けるウィルにルーファスが追い打ちをかけた。
「私がお調べしたところによると、フィリーナ嬢には母親同士が親友の幼馴染の男性がいて、その方との婚約が濃厚と言われているそうですよ。」
「なに!」
そんな話は初耳だ。
ウィルは思わずバンッと机を叩いた。
「落ち着いて下さい。あくまで、今の段階の噂です。」
「どこのどいつだ?」
ウィルの口調が険しい。
「ダグラス・アルテウス、20歳。アルテウス侯爵家の長男です。学業、人柄に問題はなく家柄を見てもラチェット伯爵家にとれば良縁でしょうね。」
「リーナが結婚・・・」
茫然とするウィルにルーファスが声をかけた。
「彼女を逃したくないのなら、陛下が動かれてはどうですか?ラチェット伯爵家なら、まあ王家に嫁いでも問題はないでしょう。」




