第19話 2回目のお茶会
そうこうしているうちに一月経ちリーナとの約束の日が来た。
「陛下。そわそわしない!執務を片付けてからじゃないと行かせませんよ。」
気もそぞろなウィルにルーファスがカツを飛ばした。
「わかってるさ。」
ウィルはしぶしぶ目の前の書類に取り組み始めた。
そんなウィルを横目にルーファスは先月から着々と準備したウィルの警護について頭の中で確認していた。
浮かれているウィルには内緒だが、魔術師長は森に魔法の目を置き2人を監視することを、将軍は森の周りに兵士を多く配備することを約束してくれた。
何か起こればすぐに対処できる手配はしたはずだ・・・。
ルーファスは緊張した面持ちでウィルを送り出し、ハラハラした気分で主の帰りを待った。
※
「リーナ!」
先に小屋に来ていたウィルはリーナが入って来るなり、満面の笑みで出迎えた。
ウィルの笑顔につられるようにリーナも笑顔になった。
「早かったのね。今日は手でつまめるお菓子を持ってきたわ。」
そう言うとリーナは手に持っていた籠をテーブルに置き、中身を取り出し手慣れた様子でそれを広げていった。
普通の貴族令嬢は給仕される側で、このように給仕する側に回ることはないはずだ。
貴族と言ってもピンキリで男爵位などの中には平民に近い立場の者もいる。
リーナもそういう貴族なのかと思い尋ねた。
「すごく慣れてるね。家でもやってるの?」
「家族や友人との食事では流石にやらないけど、ウィルと2人のティータイムの時にはいつも私がやってるわ。」
「ウィル?」
突然リーナの口から飛び出した男の名前にウィルは何故か腹だたしい気分になった。
この文脈なら自分とは違うウィルだ。
「あ、ウィルっていうのは3つ下の弟なの。弟が生まれた時に私がウィルって付けたいって言ったら、なんと採用されちゃったのよ。本名はウィリアムね。」
なんだ弟か・・・。
ホッとしたのと同時に、今世の家族とは仲良く暮らしている様子が感じられた。
「そういえばリーナの今の本名って?」
リーナの本名を聞くことは、ウィルの今日一番の課題だ。
思い出せてよかったと思いながらリーナに尋ねた。
「フィリーナ・ラチェットと言うのよ。家族はフィリーって呼んでるんだけど、ウィルはリーナのままでいいわ。今もリーナといえばリーナだものね。」
ウィルは正直驚いた。
ラチェット伯爵家か・・・。
伯爵位のなかでも由緒ある名門の家柄だ。
しかしラチェット伯の顔を思い出そうとするが、全く思い出せない。
まあ良くも悪くも問題のない人物なのだろう。




