第10話 マリーベルとエドウィン
マリーベルと夫の国王クラウハルトとは5歳年が離れている。
幼い頃、公爵だった父について王城を訪れた時も、一緒に遊ぶのは夫の弟エドウィンだった。
彼はマリーベルと同じ年で、王城内の庭園や小さな森でよく遊んだ。
「マリー」
「なあにエド?」
「大きくなったら僕のお嫁さんになってくれる?」
「うん。」
貴族のしがらみなど難しいことがわからない4,5歳くらいの時には、そんな約束をしたこともあった。
しかし、マリーベルが14歳になった時、彼女はクラウハルトの婚約者に選ばれた。
2人の婚約が発表された日、マリーベルはエドウィンに呼び出された。
「兄上を愛しているのか?それとも兄上が王位を継ぐから兄上と結婚するのか?」
エドウィンに聞かれ、マリーベルは首を振り否定した。
「クラウハルト様とは親しくなるほどお会いしてないわ。この婚約は陛下とお父さまがお決めになったのよ。」
王族の結婚など、自分の意思は関係ない。
そのことはエドウィンも分かっているはずだ。
マリーベルの答えに、エドウィンは唇を噛みしめ、きびすを返し部屋を出て行った。
それ以降、エドウィンと2人で会うことは無くなり疎遠になっていった。
王城で会った時は礼儀正しく挨拶はしてくれるが、いつもよそよそしい態度で寂しく思っていた。
その後エドウィンは女遊びが激しくなり、素行の悪さを重臣に咎められることもあったと聞いている。
そして女性との噂が多いわりに、いまだ独身だった。
エドは私に未練があるのかもしれない・・・。
兵士の言葉を聞きマリーベルがそう思った瞬間、馬車に片足をかけた兵士が剣を振り上げるのが目に入った。
「王子、死ね!」
兵士の言葉にマリーベルは咄嗟に息子に覆いかぶさり、ネックレスにむかって叫んだ。
「お願い。ウィルを助けて!この子をどこか安全な場所へ!」
右肩から背中に激しい痛みを感じるのと同時に、目を見開き自分を見上げる息子の姿が腕の中から消えて行くのが見えた。
ホッと安心したように息をつき、マリーベルは意識を失った。




