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考えすぎ

 ルカは頭の整理ができないまま、冒険者ギルドを訪れる。

 ふと、話し声のする方に目をやると、こんな時間に珍しく村長がいた。

 まだ夕刻だが、ランツと酒を飲んでいる。

 そうだ、あの二人ならロザリーの事情を知っている。


「あの、よければ相談に乗ってもらいたいんですけど……」

「あ?

 なんだルカ、湿気たツラして。

 あの女にこき使われて、嫌気が差したか?」

「あー、お前さんに前もって確認取らずに仕事増やしちまったのは悪かったなぁ。

 不満があるなら改善するよう儂からもフォローしとくぞ」


 何やら勘違いしている二人。

 こき使われているのは事実だが、それ以上に世話になっているため、不満などない。

 それにしても、この間のミリィといい、何かとカティは勘違いされるようだ。

 あのような外面だし、中身を知らない村の人間が警戒するのも已む無しかもしれない。


「いえ、そうじゃなくて……」

「ん、他人に聞かれたらマズい話か?

 他の客が来るのはもうちょい後からだし、気を付けて話してくれれば大丈夫だ。

 まあ座ってくれ」


 無意識に周囲を伺っていたようだ。

 できれば二階で相談させてもらいたかったが、仕方がない。




「──はーん。

 魔術ってのは結構面倒臭えもんなんだな」


 先ほどの内容を一通り話し終える。

 村長とランツは酒が回ってきたのか赤ら顔で、受け答えも軽い。


「とりあえず、お前さんはちょいと重く考えすぎだな。

 カティだって、そこまでデリケートなもんってつもりで話したんじゃないと思うぞ」

「そもそも、俺らが本人に結構ネガティブなこと言っちまってるしな。

 その程度で魔術が使えなくなるわけねえだろ」


 言われてみればそうなのかもしれない。

 リミエヌルの事件解決時や、ここに来た初日に彼女の魔術について色々と話をした。

 それ以降も魔術は使えているようなので、過度な心配は不要だったか。

 どうにもルカ自身が魔術を使えなくなった経験から、過敏になっていたようだ。


「じゃあ、あの魔術の反動はどうなんでしょう」

「ランツ、話してなかったのか」

「……そりゃあな。

 言ったらこんな感じでしょぼくれるのがわかりきってたからよ」

「何か知ってるの?」


 村長に水を向けられ、ランツは頭を掻きながらため息を吐いた。


「お前、あいつの歳いくつだと思う?」

「は?」

「プライバシーとかそういうのはいらねえから」


 何を言い出すのか。

 ふざけているのかと文句を言おうと思ったが、表情を見るに真面目な質問らしい。


「……二十歳」

「正解は十六だ」

「じゅっ……!?」


 小声を心掛けてきたが、思わず大声が出てしまった。

 まだ周囲に誰もいなくて助かった。

 二十歳というのも、少々気を使っての答えだ。

 二十代前半と予想していたところが、ルカより年下とは。


「え、待って。

 まさか反動って」

「予想に過ぎねえが、老化が早まるとかそんな感じじゃねえか?

 他に似たようなリスクを負ってる奴を知ってるしな。

 いや、近頃の若いのはあれくらい育ってるのが平均なのかもしれねえが。

 そういや昔、色町でどう見ても四十超えの女が二十歳って言い張ってきた時はどうしようかと──」

「おい、少しは空気読めバカタレが」

「っと、悪い悪い」

「……そのこと、ロザリーには?」

「本人にゃ話しちゃいねえよ」


 ランツの予想が当たっているなら、腑に落ちる。

 外見に比べ、妙に明るく落ち着きのない性格。

 それが十六歳のものであるというのなら、納得できる。

 同時に、彼女に対する負い目を強く感じてしまう。


「お前が負い目を感じることはねえよ。

 大体、教会の時だってお前があいつらを庇わなけりゃ、全員ぺしゃんこだったんだ。

 それが一人治すだけで済んだんだから、最善に近い行動だったはずだ」

「それに、無茶して反動が来るのは魔術の専売特許じゃないしな。

 肉体労働でも頭脳労働でも、度が過ぎれば体や精神はぶっ壊れるもんさ」

「レジーナの奴が男日照りなのも、その反動とやらかもな」

「おまっ、それ本人に言うなよ?

 気にして氷室の氷作ってくれなくなったらどうすんだ」


 二人は大笑いしている。

 リミエヌルの件を気にするなと言われて、素直に頷けるわけでもない。

 ただ、自分の行動が間違っていたわけではないと言われて、気持ちが救われたのは事実だった。


「聞いてくれてありがとうございます。

 落ち着きました」

「そりゃよかった。

 一応儂からも診療所の二人には気を付けるよう、それとなく言っとくよ」


 ロザリーの件については、この二人も気にしてくれているようだし大丈夫だろう。

 ここで気になったのは、もう一人の件。


「そういえば、ジャック先生が無免許医師だったと聞いたんですけど」

「ああ、聞いちまったか……

 一応秘密扱いだから、他の連中には黙っててくれ」


 やはり、村長は知っていたようだ。

 反応を見るに、ランツも。


「詳しくは話せんが、あいつは免許を取れない理由があるんだ。

 だが、知識も腕も保証する。

 経験も……ちょいと特殊だが、並の医者とは比べ物にならんほど積んでるしな」


 腕が良いのはルカも身を以て知っている。

 カティとの話で疑われていたが、正しい知識も持っているというのなら何の心配もない。

 免許を持っていない理由は気になるが、村長がこう言うからには聞くべきではないだろう。


「しかし、ジャックとロザリーがあの女の道楽に付き合い終わったなら、次はあいつだろ?」

「ああ……」


 ランツの言に、村長が微妙な表情になる。


「なあ、ルカ。

 もしお前さんがナーシュとの話し合いにも参加する場合。

 あいつが何を話したか、後で儂に報告してくれんか。

 できれば、余計なこと言わんか注意してもらえると助かる」

「報告は構いませんけど。

 あの人相手に僕の注意が意味あるのかは疑問ですね」


 村長が何の心配をしているのか知らないが、気になるのなら本人に釘を刺しておけばいいのに。

 そして後から思えば、注意しておくべきはナーシュだけではなかったのだが。


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