4 迷子(非処女)
「そっかー、勝手に転移しちゃったんだ……」
結局、クマさんのパンの他に卵とベーコンのキッシュも出してあげた。
「こんなおいしいパンは食べたことないです!」ってすごく喜んでくれたよ。嬉しいなぁ。
あと、名前はヒューって言うんだって。
私ももちろん名乗ったよ。ウッシじゃなくてホントの名前、桜乃川りりってね。
私はヒューの頭を撫でながら、ずっと彼の話を聞いてあげた。
話しているうちにヒューの警戒もとけたのか、敬語がとれて、話し方も子どもらしくなったのが嬉しかった。
なんでも魔力量が多い子供は幼いうちに訓練が必要なんだって。
でも、今日はその最中に魔力が暴走しちゃって、こんな知らない街まで飛んでしまったんだそうな……
……ちょっと怖いな、この世界。
「今までもなんどかあってね、しばらく待ってるとゲラルドが見つけてくれるんだ。
あ、ゲラルドは僕の先生だよ。
だから、目くらましの魔法を自分にかけて、迎えが来るまで他の人からは見えないようにして待ってたんだけど……リリーには見つかっちゃった」
へへ、と照れ隠しのように笑うヒューが可愛くて、私はギュッと彼の肩を抱き寄せた。
りりと伝えたんだけど、ヒューはリリーって呼ぶんだよね。この国の人にはその方が呼びやすいのかな。
「でも、今日は待っても待ってもゲラルド来なくて……」
「うん」
ヒューの肩に添えた手でそっと撫でながら、話を聞いてあげる。
「もう帰れないのかもって……僕、こわかった」
「そっか……」
「だからリリーが見つけてくれてホッとしたんだ。それにリリーのくれたパンはとっても美味しかったし、食べるとすごく元気が出たんだよ! どうもありがとう」
私の目を見て、ヒューはきちんとお礼を伝えてくれる。
まだ四、五歳くらいなのに、なんてしっかりしたお子様なんだろう。
嬉しそうに私を見上げるヒューに、私も少し自分の話をしてみようと思った。
「実はね、私も今日、知らないうちにこの街へ飛ばされたんだ……」
「え、リリーも?」
「そう。だから、私たちおんなじだよ」
そう言って笑いかけると、ヒューはどこか照れたような笑みを返してくれた。
「じゃあ、リリーも迷子なんだね」
えっ、二十四歳で迷子……??
それはかなり恥ずかしいな。でもそうか……迷子というより、帰る場所がない……でも。
「うん、私も迷子なの」
そう言った時、私の頭の中で「ピロピローン」と珍妙な効果音が鳴った。
かと思ったら、目の前に文字情報を載せた白く発光するパネルがスライドしてきた。
==================
ステータス : ***、迷子 (非処女)
MP : ***
特記事項:***
==================
しばらくすると、その文字情報はまたシュッとスライドして消えた。
え、なにこれ……通知?
って、やっぱりステータス、おかしいよね!?
さっき「迷子」って、口にしたからこうなった?
でも迷子に(非処女)って……その情報、いる??
私が頭の中で盛大にひとりツッコミをかましてる間に、ヒューは私に寄りかかって眠りに落ちていた。




