15 乙女の定義
やっぱりというか、お昼ご飯は昼食用のダイニングルームで美味しく頂きました。
でも、朝食用に比べると装飾は控えめだったかな。広さもそこまでじゃなくて、私にとっては心落ち着けるお部屋だった。
いや、正直に言うともう一つの理由があってね。
実は公爵様、お昼はお忙しいらしく、ダイニングルームに来られなかったの。
だから、お昼はヒューと二人でゆっくりのんびり過ごせたってわけ。
で、今は何してるかっていうと、ヒューの授業に参加させてもらってます。
「――ですから、リッツェンにも周辺国にも、それぞれ国を守護する女神が存在しています」
今日の授業はね、私のために地理に決まったんだ。
ゲラルド先生が広い机の上に地図を広げて、周辺国について解説してくれてます。
「この魔法大国リッツェンを守護するのは女神デメテルです。
豊穣の女神とも呼ばれ、母なる大地の神でもあります」
へー、女神デメテルは大地の神様なんだ。ってか、国ごとに神様が違うってことは……
「あの、女神様ごとに異なる宗教があるということですか?」
ゲラルド先生に質問してみる。
「いえ、女神様がそれぞれ異なっても、女神信仰というひとつの宗教なのです」
「それぞれの国で自分のところの女神様を信じてるってことだよ」
ヒューが可愛く笑って教えてくれた。
「じゃあ、聖フロイライン国は……」
「あそこは、乙女神アルテミスですね」
言いながら、ゲラルド先生は地図上の聖フロイライン国の位置を人差し指でクルクル囲って教えてくれた。
「あの国は乙女信仰が行き過ぎて……正直、ちょっと付き合いにくいのですよ」
乙女信仰って……
「ゲラルド、乙女信仰ってなんですか?」
あ、代わりにヒューが質問してくれた。
でもゲラルド先生は「あー……」と少し言いにくそう。
それからしばらく考えて、中指で眼鏡をくいっと上げたあと、勢いよく説明してくれた。
「乙女とは、まだ誰のものにもなってない若い女性のことです。
聖フロイライン国では、そんな女性を特別大事にするそうですよ」
……なるほどね。
若い女の子ってだけでなく、処女かどうかってことね。
ゲラルド先生、そりゃ言いにくいわ。
そっか。
だから非処女な私は、神官達にあんな目で見られたわけか……
「……つまり、未婚の女性ってこと?」
「まぁ、大抵はそうですね」
そうね、大抵はね。
ヒューにきちんと話すには、まだ十年くらい早いかな。
それにしても、さすがゲラルド先生。
「まだ誰のものにもなってない」って表現は適切だよね。だって、子供が聞いてもイヤらしくないもん。
なーんて呑気に考えてたら……
「じゃあ、リリーは乙女なの?」
……って、思わぬ火の粉が飛んできましたよ。
ねぇ、これ、なんて答えるのが正解?




