4匹 蛇視点
宮廷にいる鳥族は、もっと翼の大きな者が多い。総じて彼らは大空を飛び回るために、体に無駄な脂肪が無い。シュッとした絞られた体つきだった。
しかし、ウララは違う。ふわふわした羽根と髪。締まりのない愛らしい顔立ち。
(なんだ、この、全体的に、緊張感の欠片もない砂糖菓子のような子供は……いくら子供といえど、蛇族は、もう少し知性の光る目をしている、まぁ、狡猾といえばそれまでだが。なぜ……こんなにも、阿呆っぽく見えるのだ)
屍蛇が難しい顔でウララを見ていると「ウララ!」と、壁の向こうから、エナガがやって来た。
「エナガー!」
「うわぁ……なにこれ、どういうこと……怖っ!ていうか、血、いっぱい出てるよ!」
「痛いよお」
(もう1羽増えた……鳥族の子供は、こんなものなのか?)
鳥族は、他の種族に比べて大きな問題を起こさない。比較的、平和主義で自然と共に生きる種族であり、屍蛇としても悪い印象を抱いたことが無かった。
(鳥族は子沢山と聞くが……こんなにも無謀ならば納得がいく。幼いうちに死ぬ個体が多いのか。今回は、この無謀さに救われたが……)
屍蛇は、ため息を付いて、懐から手巾を取り出し、ウララのおでこの擦り傷に当てた。
「いひゃいです……お兄さん」
「ウ、ウララ…………この方……皇族の皇子様だよ!」
今、気がついたとばかりに、エナガが跪いて頭を下げた。
「おうじさま……」
ウララのめが、ぱちぱちと何度も瞬いて「道理で王子様みたいにカッコいいんだ」とつぶやいた。
「……ばか」
エナガの心の声が口から漏れている。
「王子様、私はウララでこっちが、幼馴染のエナガです」
屍蛇の手巾を自分でおさえ、隣のエナガを紹介した。エナガの羽根がブルブルと震え、彼の肘が「やめろ、黙れ」とウララを突いている。
「皇子様のお名前は?」
「失礼にも程が……」といきり立つエナガを屍蛇が手で制した。
「私は、屍蛇。君のおかげで助かった。追って褒美を取らせよう」
「ご褒美?はい!はい、はーい!」
ウララは、目を輝かせ、手を上げた。褒美に目の色を変えない人間はいない。子供とてそうだ。屍蛇の周りにも、親に入れ知恵をされた子供が沢山やってくる。
「なんだ」
何が欲しいのだ。金銀か、上等な絹織物か、装飾品か、はたまた親の昇進か。屍蛇は、つまらないものを見る目で、ウララを見下ろした。
「今日の夜、皇子様が飛ばす天灯と一緒に空を飛んでもいい?」
「……かまわないが、そんな事でいいのか」
「えっ……じゃあ、天灯の中に入って飛ぶのは?」
「燃えたいなら止めないが」
屍蛇の言葉に、ウララは大きく首を振った。
それから、ウララは父親に、こっ酷く叱られた。しかし、夜には屍蛇に招待され、大きな天灯と共に空を飛び回り、大はしゃぎだった。
それから、毎年、天灯のお祭りの際には、屍蛇はウララとエナガを招待した。




