13羽
檻は、ウララが膝立ち出来るくらいの高さと、丸まって横になれる程度の広さがあった。
質の悪い鉛でできているのか、錆が目立つ。四方と上部は平行の棒が走る柵状で、床面は鉛の板状だ。
寝転ぶと肌がザリザリして痛むため、今日までウララは膝を抱えて座ることが多かった。
「くっそ、重いな」
「おらっ」
「いやああ!」
馬車から蹴り落とされ、ウララが痛みにうめいた。なんとかして中で体を起こすと、男たちが檻を取り囲んだ。
「騒がれて見つかったら、すぐに追いつかれる。くそぉ、仲間だと思ってた時は頼もしいが、敵に回ると厄介な奴らばっかりだ!」
男たちは、ウララの檻を崖から落とそうと、押したり蹴ったりしている。
ウララは恐怖で怯え、泣きながら「やめてっ……お願い……落とさないで」と訴えているが、男たちは目もくれない。
「一体、何人、仕込んでたんだよ。いつからなんだよ。まさか、お前らも皇子の手のものか」
1人の男が剣に手をかけた。
「お前こそ怪しいだろ!」
彼らは皆、疑心暗鬼に陥っていた。
今まで鉱山の人足として働き、隣国へ鉱物を横流ししていた。
その資材は、別の場所で偽金づくりに利用されていた。
「もう誰も信じられねぇ……銭は何処に消えたんだよ、貯まってたのは嘘だったのか」
お前たちの取り分は、我々が保管している。隣国の大臣は彼らに、そう言っていた。一生遊んで暮らせる程貯まったら、呼び寄せてやる。そう唆されたのだ。
しかし、彼らとて嘘がなかったわけではない。出来た銭を少しづつくすねていた。
「馬鹿野郎、一銭もねぇだろうよ。ちくしょう!金が手に入ると思って女房子供捨てて来たっていうのによぉ」
「俺は、反乱軍に参加して、この国に復讐するために来たのに……何が銭を作れば武器を用立てるだ……あいつらの剣を見たか?鉱山のツルハシのほうがよほど立派だ。俺はなんの為に5年もここで働いたんだっ」
男たちの蹴りで、ウララの檻は、崖の先端まで近づいて来た。
「あっ……そんな、やだっ、出して!ここから出して!」
男二人でも持ち上がらない檻だ。
こんな窮屈な空間で檻ごと飛ぶなんて不可能だった。見えてきた景色に絶望する。
高い崖の下は鋭い形状の岩場だ。
落ちたら、確実に死ぬ。
(はじめて高いところを怖いって思った……飛べないと、こんなに怖いんだっ)
ウララは、少しでも崖から離れようと、檻の端に寄ったが、その背中ごと蹴られ、一瞬呼吸ができなくなった。
「さま……しじゃ、さまぁ……怖いよぉ…………助けてぇ……しじゃ、さま」
「うるせぇ、お前のせいで、受け渡しの現場を押さえられたんだぞ、このくそ鳥が!」
字が読めない彼らは、順番に変わる受け渡し場所を、歌のように拍子をつけて覚えていた。
それを、たまたま木の上で休んでいたウララが聞いた。彼女は歌を覚えるのだけは上手だった。
「せいぜい、お前が岩場でぐしゃぐしゃになるのを楽しませてもらうぜ」
「とにかくここを離れるぞ。俺達は、この国からも、隣国からも追われるお尋ね者だ」
「そうだな、一気に押すぞ」
「あぁ!」
男たちが一斉に檻を掴んだ。




