12羽
そんな出来事があり、ウララは歌を盗み聞きさせてくれた、おじさんたちに会いに行った。
おじさんたちは、歌の中で待ち合わせの場所として出て来た、鉱山の向かいの森に居た。
(今日は見たことない人たちと一緒だなぁ。あの服装、お隣の国の人っぽいけど、お友達かな?)
おーい、と声をかけ、降りて行ったウララは、捕獲され籠の鳥となった。
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(なんで⁉ どういうこと⁉)
鳥かごなんてお洒落なものではなく、獣を入れる檻のなかで、ウララは嘆いた。
「この頭の悪そうな鳥のせいで、俺たちの活動はやりにくくなった」
「殺しちまうか?」
檻の前では、不穏なやりとりがなされる。
ウララの檻は、洞窟のような暗い場所に、置かれていた。
周囲には、真新しい銅銭が転がっている。
「まぁ、待て。あの皇族の嫁だ、切り札になるかもしれねぇ」
「そうだな。しばらく、鳴りを潜めよう、探したって見つからねぇよ、秘密の坑道なんだからよ」
男たちは、ゲラゲラ笑い、酒を飲み、所狭しと並ぶ食事を楽しんでいる。
ウララたち鳥族は、基本的に質素な暮らしを好む。
飛べなくなるので、酒も飲まないし、必要以上の食事をとらない。
ウララは、彼らを見て不思議に思った。
(この人たち、よく見ると、とても肥えてる。他の人足は結構、しゅっとしてるのに。変なの……そういえば、娼館に出入りしてた男の人たちって、周りの人より、良い恰好してた。同じ場所で働いてても、貰えるお金ちがうのかなぁ)
檻の中で、小さくなって座り、彼らを観察した。
「よぉ、鳥さん、飛んでみろよ」
酒に酔った男が、鞘に収まっている剣で、檻の外からウララを突いた。
「やめて、こんな檻に入ってたら飛べないわ」
「馬鹿か、お前。そんなの知ってて言ってんだよ」
ゲラゲラ笑う男が、ウララに酒を浴びせた。
「ちょ、やめなさいよ!大体、勿体ないと思わないの⁉」
「あー?こんな安っちい酒がか?はははは」
「お酒は高いって、みんな言ってた」
渡りの際に、エナガはよく、酒を抱いて運んで小遣い稼ぎをしてた。
酒飲みは、普段手に入らない味に大金をはらうとかなんとか。
「いいか、俺たちには、無限に金があるんだよ」
「お前のダンナよりも、もっとだぞ」
「なんせ、作ってるからなぁ」
「おい、余計なことをしゃべるな」
男たちは、上機嫌で、時よりウララを酒の肴として、いじめては喜んでいた。
(私、なんで捕まったんだろう? 今、どういう状況? このおじさんたち、鉱山で働く中元の民でしょ? 屍蛇さまに恨みでもあるのかな?なら、何か私も、こいつらをやっつける方法を考えないと)
ウララは最初のうちは、気丈に過ごしたが、事態は何も変わらなかった。
ただ、ひたすら、閉じ込められて、粗末な食事と水を与えられる不安な時間が過ぎる。
(な、何にもない。できること、何もない。檻から出られるの用を足すときだけだし、首輪つけられて逃げられない。屍蛇さまと、エナガ……私の事探してるかなぁ。心配してるだろうな)
一日、二日、時が進むごとに、男たちの表情が変わって来た。洞窟に集まってくる人数も減った。
「くそぉ、裏切りものどもめ!」
「どうして、あそこがバレたんだ?」
目の前の男たちが憔悴して仲間割れをはじめ「もうお終いだ」と自暴自棄になっていくのを、ウララは、恐ろしく見ていた。空気がピリピリしている。積まれていた銭も、皆がこぞって懐にいれた。
「もう、ここに奴らがくるのも時間の問題だ」
「この国から逃げよう」と一人の男が言い出して、ならば自分は解放されると、ウララが喜んだのも束の間。
人質として連れまわされることになった。
乗せられた荷馬車が揺れるたびに、体が檻の柵にぶつかる。
檻に布が掛けられているために、ウララには外の様子が分からず、衝撃に備えることもできなかった。
「痛い……うっ……気持ちわるい」
「うるせぇ、喋るな!」
永遠と思われる時間だったが、まだ日が陰るようすもない。
「やべぇぞ、山んなか、兵士だらけになってやがる!!」
「もう、コイツは捨てようぜ、邪魔にしかならない」
勢いよく、檻の布が外された。
「ここで斬り殺せば、匂いに敏感な狼獣人どもにバレるかもしれねぇ」
「そこから落とそうぜ」
男が顎をしゃくったのは、崖だった。
「……う、嘘でしょう……だ、出して! お願い出して!」
ウララは、檻からかろうじて出る腕を伸ばして訴えた。




