リリィ=メディウス
「この方は…」
「私からお答えしますね。
その前に馬車を地面に下ろしてもらえますか?」
馬車から女性の声が聞こえたのでトキは
浮遊魔法を解いて馬車を地面に着ける。
豪華な馬車から扉が開き出てきた女性は
ヴァイスぐらいの年の女の子だった。
「はじめまして、冒険者様。
私の名はリリィ=メディウスと申します。
護衛の援助及び治療していただき
ありがとうございます」
リリィ=メディウスと名乗った女の子は
青色のウェーブした髪、
背丈はヴァイスと同じ高さ、
桃色のドレスを身に纏っていた。
「自分はトキと申します。
現在フェン商人の護衛依頼を受注中でして
フェン商人からの援護の指示の下、
動いた次第でございます」
トキは物怖じせず自己紹介及び現状を伝える。
「冒険者よ!
お前の事など知った事ではないわ!
リリィ様が発せられておられるのだから
跪いて傾聴せよ!」
1人の護衛がリリィの前に立ち、
跪けと命ずる。
…なんだコイツ…
トキは内心思いながらも仕方なく跪く。
フェン商人達も言われるまま
馬車から降りて膝を地面に着ける。
「ラッセル?私はその様な事好きではないと
何度も言ってるはずよ?
貴族だからと言って跪かせるのは良くないわ」
「しかし…」
「それに貴方はトキさんに怪我の治療を
受けていらしてましたよね?
治療していただいた方に対して失礼でなくて?」
リリィはラッセルと呼んだ護衛の前に立ち
言い伏せる。
ラッセルは「分かりました…」と告げると
豪華な馬車の近くへと戻る。
「トキさん、フェンさん申し訳ありません。
彼は昔から貴族は立場が上と思っていて…
私は民が居てこその貴族だと思っています。
どうかご了承願います」
リリィは告げると頭を下げて申し開きした。
「分かりました。
では、我らは普段の姿勢に
戻させていただきますね。
リリィ様も頭をおあげください」
トキは告げると立ち上り、フェン商人達にも
立ち上がる様に指示した。
フェン商人達はおどろおどろしく立ち上がる。
「所で…リリィ様はどうして襲撃されたのですか?」
「私も分かりません…
何処かの派閥が差し出した追っ手かもしれません」
「追っ手ねぇ…」
トキは顎を擦りながら疑問に思う。
「トキさん!素が出てますよ!」
フェンにトキは指摘される。
「ああ、すいません」
トキは頭を下げて謝る。
「いえ、その様に対応されるのは初めてなので
驚いてますが気にしてないですよ」
リリィは手で口元を隠し少し微笑む。
「しかし…トキさんって聞いた事ある名前ですね?
冒険者とお聞きしましたが
何処に拠点として働いてるのですか?」
「自分はベラムの街を拠点として働いてますよ。
ベラムに知り合いがいるので
誰か呼んできましょうか?
私はフェン商人の護衛がありますので
一緒に行く事は出来ないですけど…」
「ベラムは私達の目的地なのです!
フェンさん戻る事可能でしょうか?」
リリィがフェンに近づいて話す。
「私は問題無いですよ?」
「フェンさん!?今から戻って次の街まで行くのに
まだ時間が掛かりますよ?」
「いや、トキさんが馬の速度に合わせた
お陰でもう少しで着くんですよ」
フェンが街道を指差すとそこには
目的地の街ガエラが有った。
「ん?自分は馬に合わせて歩いただけですよ?
だからそんなに…」
トキは疑問に思いながら話すとベラムの姿は
後ろには無かった。
「意外と近い街ですしね。
それに馬に合わせて歩いたと言いますけど、
ある程度速度があるんですよ。
ちなみにトキさんが歩いていた速度は
馬が持つ実力の半分の速度で走ってたので
早めに着いちゃいました」
フェンさんはトキがどんだけの実力があるのか
確認する為に馬を急がせていた。
それに難なく付いていくトキの実力の一端を知り
驚きを隠せずにいた。
「それじゃ…護衛依頼終了ですか?」
「そうなりますね」
「マジか…久しぶりに働いたのに…」
「いや、普通なら朝から出て
休憩しながら行って夜に着くんですよ?
それを休憩無しでしたらこうなりますよ」
トキががっかりしているのを見て
励ますように告げるフェン。
「って事は…」
「はい。後で私の方で手続きしますので
リリィ様の手伝いお願いします」
「ですよね~」
トキはフェンの言葉に手で目を隠して頭を上げた。
「分かりました。
ベラムまで案内及び護衛しますよ」
トキは立ち上りリリィへと告げる。
現在昼過ぎ。
トキはフェン達と挨拶を交わして
フェン達を乗せた馬車は走って行った。
トキは見送り終えるとリリィの馬車を浮かして
シルとリリィの護衛10人と共に歩いて
ベラムへと向かった。
リリィは馬車の中に入っており窓を開けて
景色を見ていた。
「リリィ様は何しにベラムへ?」
「遅くなりましたが用件が2つ程ありまして
1つはスーサ辺境伯の末子スフィア様のお祝い、
もう一つはベラムに居られる筈の
サミン=ラジュマ王子への拝顔ですね」
「…そうですか…」
…マジか!?俺の関係者兼雑用係じゃねえか!!…
トキはベラムに戻るのが億劫になりながらも
街道を進んでいった。




