【最悪の厄災】 其の1
「そんな事があったんですね…………」
リナは渡された飲み物をジッと見つめ、ルークとミリアがこうして出会ったのだと考えていた。自分とは、全く違う境遇の二人の出会い…………
「えぇ。でもこの話しにはまだ続きがあるの…………」
「え?今ので終わりじゃないんですか?」
「違うわ。ここからが、私とセレスティア姉様がルーク様の従者になると聞けた出来事が起こるの…………そう、あの忌々しい事件…………【最悪の厄災】がね。ここからは、私がルーク様に聞いた話になるけど…………」
「最悪の厄災…………。帝国軍による二つの領地からのアシュレイ領への同時侵攻…………」
「そう……。ルーク様にとって最悪の出来事。聞く覚悟はある?」
「………………はい」
「そう、わかったわ…………。あれは今から三年前…………」
【ルークがセレスティア姉妹を助けてから二年後】
「ヴィクトール、息子達を連れて逃げろ!」
「ザック様はいかがなさるおつもりですか?」
「俺とオリビアは前線へと向かう」
「なっ!待てよ親父、俺も一緒に戦うぞ!」
「ダメだ、危険すぎる。お前はヴィクトールと一緒にラムザとマリーを連れてアーデルハイド領へ向かうのだ」
「けど、いくら何でも親父と母さん達だけじゃ………」
「大丈夫よ、ルーク。お母さんだって強いのは知ってるでしょ?絶対に死なないわ!」
「母さん…………」
「ルーク兄様…………怖いよぉ…………」
マリーが顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら、ルークにしがみついている。その隣で、震えながらもマリーをなだめるラムザ…………。
「わかった。親父、くれぐれも死ぬんじゃねーぞ!」
「当たり前だ!俺を誰だと思っている。それに俺には母さんだってついてるからなっ!」
そう言うと、ザックはニカッと笑いルークの頭を撫でる。
「さぁ、もたもたするな!早く行け!」
「………わかった」
「では、旦那様、奥様……どうかご無事で」
「息子達を任せたぞ、ヴィクトール!」
「御意」
こうして、執事のヴィクトールに連れられルーク達はアーデルハイド領へと向かうのだった。しかし、敵の軍勢もかなりの人数だ。ザック達が討ち漏らした帝国兵が次々とルーク達の後を追う。
「中々しつこい奴らですなぁ。ルーク様、ここは私が引き付けますので、先にアーデルハイド領へとお向かい下さい。私も直に追いつきます」
「しかし、いくらヴィクトールとはいえ、あの量の帝国兵が相手じゃ………」
「心配は無用ですぞ!このヴィクトール、あの数の帝国兵などあっという間に倒して見せます」
「わかった、死なないでくれよ」
「はい!」
「よし、ラムザ、マリー、飛ばすぞ!しっかり掴まってろよ!」
「「うん」」
こうして、ルークは、ラムザとマリーの保護をアーデルハイド領にお願いするため、急ぎ向かうのであった。そして、三人はアシュレイ領に一番近いアーデルハイド領の村へとやって来て、ルークはその村の門番に事情を説明し、ラムザとマリーと保護してもらうようお願いした。すると門番は、快く引き受ける。そして、
「よし!ラムザ、お姉ちゃんを頼んだぞ!」
「ルーク兄ちゃんはどうすんのさっ?」
「俺は、アシュレイ領に戻りヴィクトールの救出に向かう」
「い…………嫌だよ。ルーク兄様も一緒に居て…………」
マリーが顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら、ルークにここに居るようお願いした。しかし、すでにルークは決めていたのだ。
「大丈夫だ。マリーだって兄ちゃんが強いことは知ってるよな?俺は、あんな奴等には負けはしない!必ず、親父たちも連れてお前達を迎えに来る」
「う…………うぅ…………うぅぅ…………」
「帰って来たら、兄ちゃんが好きなだけ遊んでやる!何なら、マリーが欲しいもんだって買ってやるぞ?」
「……………本当に?」
「あぁ、約束だ!」
「…………絶対だよ?」
「おう、絶対だ!だから、泣かずに待っていられるな?」
「…………うん」
「よし、いい子だ!」
ルークはマリーの頭を優しく撫で落ち着かせる。すると、先程まで泣いていたマリーは泣くことを止め、ルークに笑顔を見せる。
「じゃ、行ってくる!」
「兄ちゃん、必ずお父様たちと無事に帰って来てください」
「ルーク兄様、死なないでね」
「あぁ、任せろ!」
こうして、ルークは再びヴィクトールの元へと馬を走らせる。そして二十分後、ヴィクトールと別れた場所までやって来たのだが、そこには帝国兵の屍だけが残っておりヴィクトールの姿は無かった。
「これは……………………」
ルークは考える。ヴィクトールは何処に居る?と…………。俺と行き違いでアーデルハイド領に向かったのなら良し。しかし、ここが片付いたので親父たちの元に向かったのか?はたまた、やられて死んでしまったのか?しかし、ヴィクトールの強さはルークも知っている。父親の右腕として、いくつもの戦を生き抜いてきた強さを…………。そして、ルークの出した答えは、ザック達の元へと向かったと考えた。
アーデルハイド領からここに来るまで、帝国兵の姿はおろか、屍すら見ていない。すなわち、ここで全ての帝国兵を倒し、ここからアーデルハイド領までの安全は確保したと。
ルークは急ぎ、父親たちの居る自分の村へと馬を走らせた。しかし、そこで見た光景にルークは絶望するのであった。




