三人の出会い 其の1
【ミリアの個人部屋にて】
ミリアは皆と別れ、一人寮に届いた荷物を片付けていた。そんな時、突然ドアがノックされ、ミリアは対応した
【コンッコンッ】
「はーい!少々お待ちください、今開けます!」
ミリアが扉を開けると、そこに立っていたのは先ほど別れたばかりのリナだった。
「あれ、リナじゃない?どうしたの?」
「あ、あの…………ちょっとよろしいでしょうか?少しお話ししたい事がありまして…………」
「いいよ、入って」
ミリアは訪ねてきたリナを部屋へと招き入れる。
「適当に座って?飲み物持ってくるから」
「あ、ありがとう…………」
「ごめんね、散らかってて。今丁度、荷解きしてたの」
「いえ、こちらこそお邪魔してしまいごめんなさい」
リナは、部屋の中を見渡す。辺りは、段ボールがあちらこちらに置かれている。そして、荷解きの途中の段ボールの中に、一枚の写真を見つける。その写真には、今よりも全然若いルークとミリア、それにセレスティアも写っていた。リナは、その写真を手に取りジッと見つめていると、飲み物を持ってきたミリアが、
「その写真は、私がルーク様と出会った時に撮った物よ」
「ルーク様?では、やっぱりミリアちゃんとルーク君の関係って…………」
「まぁ、気になるよね。いいわ、特別に話してあげる!でも、誰にも言っちゃダメだよ?」
「う、うん…………」
「まずね、大前提として私はリナやルーク様の一つ年下なの」
「えっ?」
「ちょっとわけあって、セレスティア姉様に無理を言ってここに編入させてもらったの。ルーク様の護衛としてね!」
「護衛?」
「じゃ、まず私達の出会いから話そうか…………」
「うん…………」
「あれは、ちょうど私が十一歳の時だったわ。その年にね、私の領地は帝国軍の侵略に遭っていたの…………」
【王国歴2021年10月】
「セレスティア、今すぐミリアを連れてアシュレイ領へと避難しろ。あそこにはザックが居る!きっと、力になってくれるはずだ。いずれここも戦場になる」
「嫌よ!私も一緒に戦う!」
「ダメだ、これは遊びじゃないんだ!お前達にもしもの事があったら俺は…………」
「セレスティア。お父さんの言う事を聞きなさい!」
「じゃ、お父様もお母様も一緒に逃げよう?このままじゃ、皆死んじゃうわ!」
「それは出来ない。我々は、領民を守る使命がある!わかってくれ…………」
セレスティアは、下を向き唇を噛みしめる。自分だってもう十五歳だ、十分戦える。ミリアの事は、従者にでも任せて自分は両親と共に戦いたいと…………。
「セレスティア。そんな顔しなくても大丈夫よ!お父さんも母さんも、強いのはセレスティアだって知っているでしょ?ちょっとやそっとじゃ死なないわ」
「お姉様…………」
ミリアがセレスティアの袖を掴む。
「わかりました、お父様、お母様。ミリアの事はお任せください。どうかご無事で…………」
「えぇ、頼んだわよ!」
「はい…………」
こうして父、フレリック・シルフィードと母の、エレナ・シルフィードは戦場へ、そしてセレスティア達は親交のあるアシュレイ領へと避難を開始した。ミリアを後ろに乗せ、馬に跨り数名の従者と共に…………。
「しっかり掴まってなさいミリア!」
「は、はい…………」
セレスティア達は、シルフィード領の下に位置するアシュレイ領を目指し、馬を走らせた。しかし、アシュレイ領まであと数時間という所で、追っ手に捕まってしまう。護衛についていた従者たちが、足を止め、セレスティア達を逃す。
「いたぞ!あいつらを逃すな!殺せ!」
「くっ!セレスティア様、ここは我々が食い止めます!その間に、ミリア様と共にお逃げ下さい!」
「で、でも…………」
「早く!」
「…………わかりました!どうかご無事で!」
「セレスティア様達も。行くぞお前等、少しでも長く足止めしろ!」
「「「おおお!」」」
遠い…………。フレリックとたまに行ったことのあるアシュレイ領。いつもだったら、あっという間のはずなのに。今日だけは何日かかっているのか?と錯覚するほど遠く感じるセレスティア。そして、時間を稼いでいたはずの従者達もやられてしまい、遂にセレスティア達に帝国兵の魔の手が迫る。
【ヒュッ】
【グサッ】
【ヒヒィィィィッン】
帝国兵の放った矢が、セレスティア達の乗る馬へと辺り、馬が転倒してしまう。
「きゃっ」
「痛っ」
セレスティア達姉妹は、地面に転がり着地がうまく取れなかったミリアは足を折ってしまう。
「………くっ。何でこんなことに」
「ミリア、大丈夫!?」
ミリアは、折れてしまった自分の足を見て言う。
「セレスティアお姉様……。すみません、足の感覚が無く立つことすら出来ません。ですので、私が時間を稼ぎますから姉様だけでも…………」
「ダメよ!あなたを置いて行くなんて私には出来ない。」
「でも…………」
「大丈夫!きっと誰か助けに来てくれるわ!それまで、何としてでも生き残るのよ」
しかし、無情にも誰も助けに来る気配など全くなかった。
「やっと追いついたぜ!手間かけさせやがって!」
「「!!!」」
「こいつらが例のお嬢さん方だろ?いい手土産が出来そうだぜ!これで、俺らも出世が出来るぜ!」
「私が、簡単にはやられてあげると思う?」
「フンッ、減らず口が!お前など、すぐに拘束してやる。者共、かかれ!」
「「「うおぉぉぉぉ」」」
帝国兵が迫る中、セレスティアは瞬時に、自分の指先から糸を出し、近づいて来た男の腕に巻き付け、切断した。
【シュルルルルッ】
【ザシュ】
「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
男は、自分の切断された腕を押さえ地面に転がりもがき苦しむ。
「クソッ!このアマ、よくもやったな!許さねーぞ!」
腕を切られた男が激昂し、魔法を放つ。他の仲間もそれに合わせ魔法を放つ。
【炎の弾】
「石の弾」
【ボ―ッン】
ミリアもすかさず応戦し、ファイアーボールに自身の放ったストーンバレットを当てて相殺させる。セレスティアも、近くの木に糸を巻き付け、そのまま引っこ抜き帝国軍へと投げつける。
【ドゴ―ッン】
「「ぐあぁぁぁぁぁぁ」」
その後も、お互いの攻防が続くが、やがてセレスティア姉妹の魔力が尽きる。この世界では、自身のスタミナが魔力と依存し、使えば使うほど、体力が減っていく。男性より女性の方が体力が少ないのは、この世界でも例外ではなく、
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…………」
「中々やるようだが、どうやら魔力切れの様だな。惜しかったな、もう少しで俺達を殺せたのによ」
「クッ…………あともう少しなのに…………」
「お姉様…………」
「大丈夫よミリア、あなたはあたしが守るから。あなた達、私が何でも言うこときくから、ミリアには手を出さないでちょうだい」
「ほう………。いいのか?妹の前で自分だけが辱めに遭うんだぜ?」
「構わないわ。それでミリアが助かるなら」
「なら、黙って両手を上に上げこっちに来い」
セレスティアは、両手を上げ男達の方へと歩いていく。
「お姉様!」
そして、男達はセレスティアを押さえ、身動きを取れないようにする。
「お前等、妹と遊んでやれ!」
「なっ!話が違うじゃない!妹には手を出さないはずじゃ!?」
「あぁん?そんな約束してないぞ?俺はただ、『黙ってこっちへ来い』と言っただけだ。決してわかったとは言っていない」
「クッ、下衆が…………」
「何とでも言え。よく見ているがいい、今からお前の大切な妹が辱めに遭うんだからな。くくくくっ」
「ミリア、逃げて!」
ミリアに二人の男が近づく。そして、一人がミリアを後ろから抱え立たせ、もう一人の男がミリアの服を破る。
【ビリッビリッビリッ…………】
「いやぁぁぁぁぁ!お姉様ぁぁぁぁ!」
「ミリアァァァァァ!くっ、放しなさい!」
「嫌だね…………。続けろ…………」
「お姉ちゃゃゃゃん!助けてぇぇぇぇぇ!」
「ミリア――――――」
「んじゃ、いただきます」
男が、ミリアの下着に手をかけたその時だった。
「物質変化・鉄の弾」
【ボコッ】
突如、ミリアを後ろで押さえている帝国兵と前でミリアの身体に触れようとした男の顔に鉄の弾がめり込み、横へと吹き飛んでいく。そして、木の影から一人の少年が姿を現しミリアの元へとやってくる。
「あれ?おかしいな…………。今ので頭ぐらい吹っ飛ぶはずだったんだが、まだまだ親父のようにはいかないか…………」
「あ、あなたは…………?」
「大丈夫か?」
「は、はい。おかげさまで」
「それにしても、ひでー事をするなぁ。女の子に寄ってたかって………。しかも、エッチな事しようとするなんて」
少年は、ミリアに自分の着ている上着をかける。
「あ、ありがとうございます」
「誰だテメー、死にて…………グヘ」
セレスティアを押さえている男が言い切る前に、再び少年の放った鉄の弾が顔面に当たり、後ろへ吹き飛ぶ。
「ミリア!」
拘束を解かれたセレスティアが、急ぎミリアの元へと走って行く。その様子を黙って見る少年。
「大丈夫、ミリア!怪我は無い?」
「うん、大丈夫だよ。それより、この男の子は…………」
「ありがとうございます。何てお礼を申し上げればよいか」
「ん?あぁ、気にすんな!それより俺の方こそ悪かったな、もうちょっと早く見つけられていれば、妹さんがこんな姿にならずに済んだのに」
少年は、セレスティアに抱き着いているミリアの頭を撫でる。そして、頭を撫でられたミリアは、茹蛸みたく顔が真っ赤になる。
「う…………うぅ…………恥ずかしいです」
「おっと、ごめんごめん。そんなつもりじゃなかったんだが」
そして、吹き飛んだ男達が立ち上がり、
「テメー、一体何者だ!」
「俺か?俺の名前は、ルーク・アシュレイ!いずれこの国の王となる男だ!」




