無属性男爵の後ろに、最強の後ろ盾
【次の日の朝】
「う…………うぅ…………うーん」
【ジ―――ッ】
昨日、あのまま気を失ってしまったルークは見知らぬ部屋で目を覚ました。昨日、ジョニーに痛めつけられたはずの全身は、驚くほどすっきりと痛みが引いていた。丁寧に巻かれた包帯と、ほのかに香る薬草の匂い。
感謝しつつ身体を起こそうとしたルークは、すぐ隣から注がれる熱い視線に気づいた。
「ミリア、そこで何している?」
「お気になさらず」
「いや、気になってしょうがないんだが…………」
「私は気にしません」
「あの………そうじゃなくてだな」
「何か問題でも?」
「この状況、問題あり過ぎだろ…………」
「この状況?私がルーク様のすぐ隣で一緒に横になっている状況が何の問題で?」
「……………質問を変えよう。いつからそこに居る?」
「昨日の晩からです」
「この事をセレスは知っているのか?」
「はい勿論です。ルーク様の側にいるようにと言われています」
「側に?近すぎやしないか?」
「全然」
「セレスの言う、側に居るっていうのは、椅子に座ってとか、ドアの前にいるとかじゃないか?」
「違います」
「違うのか…………」
「はい。全くもって違います」
「そうか…………」
「はい」
「んで、何か変わったことはあったか?」
「特には。しいて言うなら、ルーク様の寝顔が可愛かったって事です!」
「まさかとは思うが…………」
「はい、寝ずに見ていました」
「お、お疲れ様」
「いえ!問題ありません。むしろ、私にとってはご褒美でした」
「そ、そうか…………。それならよかったが」
「はい!」
「ところでミリア、ここはどこだ?」
「ここは、私とセレスティア姉様が借りている宿です」
「なるほど。どおりで見たことない部屋だと思った」
「ルーク様、今日はいかがなさいますか?時刻は午前11時ですが、学校へは行きますか?」
「そのつもりだ」
「わかりました。では、急ぎ支度をします」
「支度?何の?」
「何の?学校へ行く支度に決まってるじゃないですか!」
「誰が?」
「私がです!」
「なぜ?」
「ルーク様の護衛です!昨日手続きは済ませ、無事ルーク様と同じクラスへと編入です!」
「ちょっと待て、ミリアは俺の1つ年下だよな?」
「はい!けど、その辺も平気です!セレスティア姉様がうまくやってくれましたから」
「あぁ…………。そう言うことか」
「はい!なので、何の気にもせず学校へと向かいましょう!セレスティア姉様が階下で昼食を準備して待っています」
「そうか、なら行くとするか」
「はい!」
ミリアは制服に着替える為、ルークは一足早くセレスティアが待つ食堂へと向かった。
「おはよう、セレス」
「あっ!ルーク様、おはようございます。お身体はもうよろしいので?」
「あぁ、二人のおかげでだいぶ楽だ。礼を言う、ありがとう」
「いえ、そんな…………。当然のことをしたまでです。私達の方こそ、ルーク様に怪我を負わせるなどの愚行をしてしまい申し訳ありませんでした」
「謝るな、セレス。俺は、本当に二人には感謝しているんだ」
「勿体なきお言葉。それと、今日は学校へ?」
「あぁ、昼食を済ませたらミリアと向かうつもりだ」
「そうですか、わかりました。ミリアにはルーク様の護衛を兼ねて編入させました。勝手な事をしてしまい申し訳ございません」
「いいんだ、セレスが俺の事を考えてやってくれた事だろ?なら俺は、その行為に喜んで甘えるよ」
「ルーク様…………」
そして、ここで制服に着替えたミリアがやって来た。
「ルーク様、セレスティア姉様、どう?似合う?可愛い?」
ミリアはその場でくるりと回り、二人に制服姿を見せびらかす。
「似合っているわよ、ミリア。ねぇ、ルーク様!」
「あぁ、とても似合ってるぞ!」
「やったー!ねぇ、ルーク様!早く学校へ行きましょう!」
「落ち着きなさいミリア、まずは昼食を食べてからよ!」
「そうだった!テヘッ!」
「全く、ほんとこの子は落ち着きがないんだから。いいことミリア、学校では絶対にルーク様のご迷惑にならないように行動なさい!いいわね!」
「はい!」
【ビシッ】
ミリアは、姿勢を正しセレスティアに向かって敬礼した。
「それでは、いただきましょう」
「あぁ」
「はーい!」
「「「いただきます」」」
こうして、昼食を食べ終えたルークとミリアは、遅刻しながらも学校へと向かった。着いた時は丁度生徒達はお昼休みで、ミリアは応接室で待機して、ルークは一人教室へと向かうのであった。
教室に入ると、そこには数名の生徒が居た。皆が暗い顔をしながら昼食を食べていて、その光景を見たルークは瞬時に悟った。学校の食堂も貴族が独占し、平民は自ら昼食を持参して教室で食べているのだと。
そして、自分の席へと向かい静かに昼食を食べるリナに挨拶をした。
「おはよう」
「………………」
無視である。相変わらずルークと関わらないようにしているリナは黙って昼食を食べている。
「あ、あの…………。挨拶ぐらいしてもらっても…………」
「………………」
ルークがそう言うと、リナはチラッとルークを見るがすぐさま視線を変える。
「あははははっ…………」
こうして、リナとの何の進展もなく昼食の時間が終わり、授業が始まる。そして、ここでようやくミリアがクラスに合流し、自己紹介が始まる。
「初めまして、皆さん!私の名前は、ミリア・シルフィード。爵位は伯爵です!ルーク様…………じゃなくてルーク君とは遠縁の親戚になります!みなさん、仲良くしてください!」
(おい、今なんか『様』っていいかけたぞ)
(うん、言いかけたね…………)
【ゴニョゴニョゴニョ…………】
クラス中が微妙な空気になる。
「せ、先生私の席は何処ですか?」
(あ、逸らした)
「あぁ、アシュレイ君の後ろの席だ」
「はーい!」
そう言うと、ミリアは急ぎルークの元へと向かおうとするが、その途中でジョニーが居ることに気付く。
(げっ!こいつもルーク様と同じクラスなの…………)
(まさかこいつは昨日の…………)
お互い一瞬目が合うが、ミリアは構わずルークの元へと向かう!
「よろしくね、ルーク君!」
「おう、よろしく」
そして、ミリアは席に着くが前方から一つの視線を感じる。
【ジ―――ッ】
あきらかに不審者の視線で見るリナ。その視線に気づいたミリアは、
「あ、あの…………何か?」
「………………」
リナは、黙って前を向いてしまう。『私、何かした?』という顔で考えるミリア。まるで見当がつかない。当然だ、リナは昨日の事を自室で見ている。当然、ルークと何らかの関係があると睨んでいた。




